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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

英語のプレゼンで負った脛の傷跡

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永井さんの思い出 すだけで辛くなる、最悪のプレゼン、そして大里さんの英語のプ レゼンの準備は周到に、でも度胸も大事に触発されて。断続的ではあっても都合20年以上もプレゼンが仕事の軸な私、このネタには反応せざるを得ません。Native Speakerではないという立場にとって、英語のプレゼンというのは大きな負荷なのは事実。私自身はそれを何度もやる立場にありました&ありますが、それなりに脛に負った傷跡が時々痛みます。

そのなか、ふと思い出したのは、生まれてはじめての英語でのプレゼンとデモをやったときの事。

 

最初の英語のプレゼンは高々15分間のデモとその説明

思い起こせば1988年。当時勤務していた日本アイ・ビー・エムの通信サービス専門のデモセンターでやったデモンストレーション。相手は記憶が正しければ1ダースほどのアメリカ人、そしてたった3人の日本人という集団でした。そして、アメリカ人の集団は当時の日本アイ・ビー・エムの上部組織であったAsia Pacific Group (APG) のPresident以下の、上から数えて12人くらいが勢ぞろい。方や日本人と言うと、当時の社長の椎名さん、後の社長の北城さん、そして当時の専務の方が一人という構成だったと思います。

たまたま色んな理由があってそれらの人が参加する会議が所属していたデモセンターの一室で開催されたのですが、そこで私が通常担当していたVANサービス(既に死語です(笑))のデモをせよとのお達し。当然英語です。最悪な事に当然ですが画面は全て日本語です。まだPowerPointなんて便利なものはありませんから、資料はOHP(これも既に見なくなりましたね)。

「あのさ、今度あの部屋でAPGのミーティングあるんだけど、そこで30分位でデモできるよね?」
「はぁ。まぁ出来ますけど、APGの・・・ってことは英語ですか?」
「当たり前でしょ~」

さぁ大変です。その話を聞いてから本番まで確か3週間ほど。普段30分ほど掛けてデモをやっていたのですが、そこで喋ってる内容をまず全部ワープロ(DOS文書プログラムです(笑))に打ち込み、それを自分なりに英訳し、英語としての言い回しを一生懸命覚えようと頑張って、頑張って・・・ 元々学校の英語の授業で先生にあてられて教科書を読むくらいのことしか人前で英語で喋ったことが無い私のことです。

「日本語で出来るでしょ?それをそのまま英語でやればいいんだよ」

そんな先輩や上司の温かい言葉の温かさは何も私には伝わってきません。そうこうしているうちに本番の日が来てしまいました。会議の内容については全く関与する立場にありませんが、APGの秘書の方から逐一部屋の中の進行状況についての連絡が入ります。なんだか時間が延びているらしい。そして、最悪の一言が来ました。

「遅れてるんで、30分って言ってたけど15分でできるよね?」

が~ん。俺が考えたストーリはどうするんだよ~と一瞬だけ考えました。でもどうしようもありません。さぁどうする?と、ここで頭の中は関西人に切り替わります。

「どうせ見せるものはいつもの新聞記事情報とか株価情報とかの3つのサービス。ならば5分でざっと説明しよう。どうせなら・・・そこでウチの会社のネタを探して・・・幸いな事に会社にとって微妙なニュースが出てきてるし、ならばそれで、トップに向かって「まずいですねぇ。どうします?」とか聞いちゃって笑いを取っちゃえば、プレゼンの場としての目的(紹介すること)に加えて和めるぜ」

若いということはすばらしいものです。

 

その部屋に入れたのは私、そしてPCの操作をやってもらった1年上の先輩の女性の2人だけ

「じゃ、お願いします~」

部屋の外でずっとスタンバイしてましたが、遂にドアが開きました。さ、行くぞと部屋に入ると、もうそこは事実上アメリカです。もうココまで来ると引き返す事は出来ません。後ろで不安そうに部屋を覗いている上司や先輩諸氏の顔が、バタンとしまったドアの向こうに消えます。

「えっとですね、このデモセンターのスタッフの岩永です。じゃ、時間が無いんでとっととやりますね」と英語で適当に切り出して、そのままプレゼン&デモに突入です。

で、

結果的に15分で3回ほど笑いを取れました。一つ目は軽く「ふんふん」。二つ目はもう少し「ニヤニヤ」系で、そして最後は爆笑と拍手で終わりました。自分的には大成功。説明自体は時間枠が変わったので直前で構成を全く変えたこともあり、しどろもどろであったのは事実。でもパッツンパッツンに緊張しているので、背中にベットリと大汗をかいていたのに気が付いたのは終わって部屋を出てから随分たってからでした。

因みに部屋の外で(実は20人くらいいたのですが)待っていた日本側のほかのスタッフは、部屋の中から笑いが聞こえるのが不安で仕方が無い。何が起きてるんだろう?でも楽しそうに笑ってる声だよね。岩永のアホは一体何をやってるんだ?

まぁそれでも爆笑と拍手で終わって「ありがと~」とか声をかけてもらいながら会釈して部屋を出て、後ろ手にドアを一旦閉めて、で、その場でへたり込んでしまいました。完全に脱力。

「何したんだよ?」
「笑いを取れました~」

意味不明の返事ですが、上手く行った状況はその後一緒に出てきたPC操作をやってくれた先輩が説明してくれて、とりあえず一件落着。

 

因みに、もちろん毎回上手く行くわけではないのですが

これは実は日本語のプレゼンテーションでも同じ事。逆に言うと、少なくとも日本語のネイティブスピーカーである以上、まず慣れ親しんだ日本語でキチンと説明できるくらい内容を理解していないと絶対に駄目ですね。あくまでも私の個人的な思い込みですが、これは確信しています。

で、日本語で喋る事ができる内容であれば、ある程度の量の単語と言い回しだけ考えれば絶対に英語でも喋る事って出来るはずだと、更に思い込んで居たりします。実際に普段から理解している資料を急遽英訳して喋った事は何度もありますし、状況によっては日本語の資料のまましゃべりだけ英語なんて辛い状況も経験してます。この場合には結構逐一画面に書いてある文字を説明しなきゃいけないとか大変な目には遭いましたが。

 

そもそも日本語で生まれ育ったんだからぁって言い訳する必要は無いという事実

その人が英語をNativeに使える人かどうかなんて、聞いてるほうは多分10秒で判っちゃいます。だからそこはもう気にする必要は無い。「ワタシ英語が下手なんですけど」なんて言い訳も必要ない。途中で言い回しとかがわかんなくなったら日本語で「えっと、なんだっけ?」とか思わず口から出ちゃっても気にしない。

だって、相手はワタシの英語を聞きに来てるんじゃなくて、中身を知りたいからそこに居るわけです。伝えるべき事が理解できていれば、何とかなる、何とかしてきた、何とかなるもんだ・・・と思い込んで場に望む。

と突っ張ってみても「お前、何を言ってんだかさっぱりわからんなぁ」と笑われて、「でも言いたいことはわかったよ」とオチが付けば、ま、いいかな?

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