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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

スマホの小さな画面と空間認知とユーザー体験の狭間

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多くは8インチから9インチですから対角20センチ程度のスマホの画面で見る地図、という世界があります。例えばGoogle Mapsであったり、AppleのMapであったり。あるいは車のカーナビでもせいぜい10インチなので対角25センチ程度の画面に表示される地図を見て目的地に向かうという行動は今や別に珍しくもなんとも無い話。

それに対して、かつて新しいところに商談に行くときには巨大な地図帳から必要なページをコピーして握りしめていた時代が懐かしいと言い始めると「なにその昭和な話」と言われそうですが、リアル昭和から平成前半にかけての話なので仕方ない。

思えば遠くへ来たもんです。

物理的な地図片手に鍛えた平面での方向感覚と道順の認知

思い起こすと年代的に私が車の免許を取ったのは1981年で、まだカーナビなど未来の夢物語で、何処かに出かけるときにはA3サイズくらいの道路地図を広げて自分の場所を確認し、目的地までの道順をたどり、右へ左へ曲がる場所の目印になる建物を覚えていざ走り出して・・・ 迷って一旦道端に停めて「さて、今俺は何処にいるんだ?」からやり直したのは一度や二度では無いのをよく覚えています。

それでいうと今は本当に楽になったと思います。
スマホもカーナビもある程度先回りして道案内してくれます。
私の妻が助手席で地図を見ながら「えっとそろそろ左に曲がるんだけど、えっと、えっと、あっ!ここ!」と今通り過ぎた交差点の方向を指さしてたとか、まぁ今となっては楽しい思い出です。

でもそうやって道を覚え、初めて行く場所への道順も地図で確認した状況をある程度頭に入れて動くことができるようになったのは、その頃の苦労の結果だと今でも思っています。

スマホの中の箱庭と空間認知のギャップ

スマホのGoogle Mapsを見ながら歩き始めたのは何時頃なのかよく覚えていませんが、記憶が正しければ今から8年ほど前から昨夏までの期間担当した仕事の関係で神奈川全県と東京都の西半分の現場をひたすら移動するという仕事になってからだと記憶しています。もちろんWebサイトで固定の地図を見ることは8年前でも既に当たり前にありましたが、私の場合は車ではなく自分の足と公共交通機関での移動が殆どだったので、自分でなんとかするしかありません。乗り換えアプリは当時から複数ありましたが、最終的にバスや徒歩での移動までのサポートとなるとGoogle Mapsしか使えなかった時期でした。

更には紙の地図を殆ど保たなくなった今となってはGoogle Mapsが無いと知らないところを移動できない人になってしまったのですが、自分の位置と向いている方向、地図のズームインとズームアウトを駆使して大抵のところではなんとか目的にたどり着ける様になりました。

ただし、屋外の移動であれば、という条件があります。

屋内では手も足も出ない事が今でもあるわけで

広く「何らかの施設」と括っても良いと思います。たとえば一定の規模のショッピングモールや駅施設などでフロアごとにある程度のレイアウトが出せるケースは増えてきました。ただし、たとえば仕事の現場としてそういう施設の中にテナントとして入居している場所まで行く必要がありました。そうすると一般的な地図アプリは殆ど役に立ちません。ショッピングモールなどであればフロアマップをスマホから見ることもできたりしますが、小さな画面ではなかなか位置関係や進行方向が認識できなかったりします。かつて今世紀中は改装工事が終わらないと言われていた頃の横浜駅や1ヶ月行かないと世界が変わる渋谷駅周辺とかは論外ですが、例えばJR大阪駅/阪急梅田駅の北側のいわゆる「うめきた」界隈なんて、もうどうやっても私は1人では歩けません。

それもこれも、そもそも私がアホだからなんだとは思うんですが、実際問題として初めて行く施設だと地図を見ても構造がよくわからないので自分の居場所を特定することも結構難しかったりします。

そんな時、探すのはエスカレータやエレベータの周辺にあるフロアの案内板。単純な看板でも全然OKですが、時々見かける巨大なタッチパネルの液晶ディスプレイだと検索ができてフロアまで一発で特定できるとかあって、めちゃめちゃ助かります。

素敵すぎて涙が出そうになります。

でも何故そんな事を思い出したか

きっかけはTogetterの「年間パスポート廃止したディズニーランドのゲストは若者が減少し高齢化している話...「時代はUSJ」「寿命を縮めてそう」など 」というエントリー。ただ、実は私自身は30年くらい前の過去には年に2回から3回は行っていたのですが、色々経緯が重なった結果恐らく過去15年以上舞浜駅周辺にすら寄り付いていないので、私自身の感覚として何かを語ることはできません。ただ、このエントリのまとめの中に紙マップ廃止が何かしら影響していないか?という趣旨のポストが引用されていて、その部分に関しては上記のような経緯と経験から「あー、そういう方向の話なら理解できる部分があるかも」と思ったんです。

たとえば施設の外に向いたゲートにはたどり着ける。でも施設の中の状況を一覧できるモノが無くなっちゃってると結構途方にくれる場面が出てくる気がするんです。ショッピングモールにはたどり着けてもテナントのショップの場所が判らん。そんな感じです。全部がスマホの小さな画面でスクロールとズームでなんとか探すのは正直難度が低くはないと思うんです。特に行き慣れていない人にとっては。

何しろ私の場合、行っていたのは「ランド」側はまだスターツアーズやキャプテンEOがあった時代です。「リゾート」という名称になったのは知ってますけど「シー」なんて知人の披露宴に招かれて手前のホテルに行ったときに「あぁココなんだ」と認識したことがあるだけですから、いま行くと事実上「初めて行く人」カテゴリに属するはず。もう気分はド新規でオープンする巨大なショッピングモールに関係者入口から入ったけれど自分の行き先がわからず右往左往し、施設の中での作業中も例えば使って良いトイレがわからず右往左往した辛い経験と変わりません。この場合はオープン前なので壁に貼ってある関係者向けの図面しか道案内の手段が無いのですが、逆に言うと図面なので位置関係とか完璧に判るわけです。でもそれがスマホの小さな画面だけになると結構難易度高いんじゃないかと思うんです。

私がアホだからですかね?

ユーザーが求めるのは情報だけど、誰向けなのかが問題

その場で必要なのはユーザーの物理的ななにかの体験を助ける仕組みが必要であって、それは看板なり紙なりのアナログな目の前の大きな情報ほうがより良いユーザー体験ができるケースがあって、実はデジタルで無い方が良かったケースって無いかな、という禅問答が頭に浮かびます。

その場にいる人にとってとても大事な「ユーザー体験」をサポートするものであって、でもそれは別にデジタルだけで提供されてるよりもアナログな形で提供されている方が「ユーザー体験」としては非常に良い方向に行くこともあると思うんです。
因みにDXと括る諸々の中に「それをDXと言うか?」みたいなのはいっぱいありますが、それとは違ってある意味真正面からDXの流れですと言えるであろう紙マップ全廃って、でもそれってユーザーから見るとDXのためのDXになってない?ってちょっとだけ思ったりします。

私がアホだからなんだと思いますが。

---iwa

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