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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

新規契約したスマホの電話番号が「汚れている」という話について

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冷静に考えるとスマホの電話番号と言っても既にスマホはスマホであって携帯電話のような電話ではないみたいな理解が既に生まれているような話もある昨今。電波法的にはスマホは「アンテナを伸ばして通信する昔の携帯電話」と同じ移動体通信の端末なんですが、まぁそれはどうでも良いです。今回のお題は新規契約した筈の電話番号に知らない人から電話がかかってきてしまうことがある問題。

そんなことを思い出したのはITmediaのこの記事。
電話番号が"汚れている"とは 契約したばかりのスマホに不審な電話がかかってくる理由

単なる間違い電話ならまだ良いのですが、実は過去にその番号を使っていた人にコンタクトしたい人からの着信だと、その目的と内容によっては非常に面倒くさいことになる場合があります。

新規契約なのになぜ?
それは新規なのは契約だけであって、番号は別に「ド新規」に発番されたものではないケースがあるからなんです。

電話番号は総務省から事業者ごとに割り当てられています

電話番号自体は、それが固定通信だろうが無線通信(スマホだと思ってよいです)だろうが、そもそもはサービスを提供する通信事業者ごとに割り当てられています。勝手に生成されるようなものではありません。
電気通信番号指定状況 (電気通信番号計画(令和元年総務省告示第6号)第1第4項による公表)
利用者が契約するときには、その時点で契約しようとしている通信事業者が持ってる番号から利用者が居ない「空き番号」から選ぶことになります。ただし、その番号はその時点での空き番号であって、全く新規に総務省から割り当てられて過去に誰も使ったことが無い番号かどうかは事実上わかりません。

実際のところ、誰かが使っていたけれど解約などで使われなくなった電話番号が一定の保留期間を経て新しい契約者が使うようになるケースは別に稀ではなく、むしろ普通です。

普通にある番号のリサイクルです。

固定電話の場合には電話局の設備と紐づいている部分があるので再利用されるにしても一定の同じ地域でしか再利用される可能性は低いのですが、全国どこでも使えるスマホ(携帯)の番号だと、前の利用者がどこの誰なのか追いかける術はありません。

なお、ナンバーポータビリティで転出すると利用者の契約先は移転先の通信事業者になりますが、電話番号の「本籍」は変わらないので、先々解約されると元の通信事業者の未契約電話番号の在庫になるはずです。なお固定電話の場合にはNTTが発行した番号をNTT以外の電話会社の光電話にナンバーポータビリティで転出できるのですが、光電話事業者が発行する050番号は他の事業者に転出できません。これは既得権益とかではなく電話番号体系とナンバーポータビリティの仕組みが理由なんですけれど、ちょっと複雑なのでとりあえずNTTの市外局番を持った電話番号だったら光電話の事業者を替えても持ち回れるケースが多いとだけ理解しておくと良いとは思います。

いずれにせよ、総務省から割り当てられたどの番号をどう払い出すのか、再利用される番号がどれくらいあるのか、保留期間がどれくらいなのかというのはすべて通信事業者側が決めています。

保留期間については公表されていません

誰か使っていた番号が解約されて使われなくなった場合、解約された契約者本人以外がその番号が使われなくなったことを知る方法はありません。解約には契約者が解約の手続きを取った場合のほかに料金未納などで強制解約になるケース等があるのですが、共通しているのは当該の電話番号に契約者が紐づかない番号となることです。「おかけになった電話番号は現在使われておりません」系のアナウンスが出る奴です。

ただ、番号自体は有限な資源なので、一定の保留期間を経て次の契約者に使わることが普通にあります。ただし解約状況によって違いがあるとか噂される保留期間の長さ自体は一般的に公表されていませんし、前のユーザーが誰だったかも調べる方法は無いと思ってよいです。

しかしながら、例えば5年間未契約で保留されていた電話番号をそうと知らずに新規契約で取った方のところに10年ぶりに元の契約者に連絡を取ろうとした人からかかってくるとかが起きるんです、これが「汚れた電話番号」の正体ですね。

実際のところ「ド新規」の番号でない限り、誰か前の利用者が居ると思ってよいですし、そもそも通常は「ド新規」かどうかを知る術がありません。番号は有限な資源なのでリサイクルされています。エコとかそういう次元の話ではないですが。

電話番号は個人認証番号ではないという基本的理解が大事

当たり前なのですが、電話番号はマイナンバーではありませんし、紐づいてもいません。単に通信事業者と契約した時に割り当てられる加入者番号です。解約すれば次の方が使うことになります。

え?でも個人認証として使われていない?

それはスマホの契約が継続している間については契約時点で個人認証が取れているという前提での話です。機種変更してもMNPしても契約が継続している限り契約者に紐づいていますが、それは通信事業者が裏書きしてるだけで、番号自体は誰かを証明する番号ではありません。

ここ、大事です。

なので、実は根本的には電話をかけた先が本当に話をしたい本人なのかが誰もわからないという話はあるんですが、電話の仕組みとして一応自分が知ってるスマホの番号は自分が知っている人という前提で成り立っています。

ただし当然ですが同じ番号にかけても解約されて利用者が居なければ「現在云々」のアナウンスになりますし、電話番号が他人に渡ってだれかが使い始めたら知らない人が出てくる。そんなもんです。

久しぶりにスマホに電話するなら、きちんと名乗って相手が誰なのかを確かめた方が良いです。ほかに方法はありません。

いきなり怒鳴られるケースとか現実にあるのは知ってますが

元の契約者が解約に至る理由と方法にはいくつか考えられますが、何年も経ってその人にコンタクトしようとした人が全て「ご無沙汰!元気してる?」と明るく声をかけてくる訳ではないのも知っていますし、冒頭にリンクを張った記事でもそんな状況がお題になっています。

でも、例えば先月新規契約したばかりなのに、5年前とか10年前の案件で電話がかかってきていきなり怒鳴られるとか何なんだよと言う気持ちになるのは当然だと思います。そもそも相手がどこの誰だかわからないとかだと、恐怖以外何物でもないと思います。

そんな状況になってしまうと契約した通信事業者のショップなどで相談して番号を変更するしかないのですが、そのための事務手続き手数料が必要かどうか等は確認する必要がありますし、例えば法人利用などで一度取った番号を変えるのがかなり面倒くさいとか色々起きるケースもあるとは思います。そもそも次の番号が「汚れていない番号」かどうかを確認できません。でも、ほかに逃げようがありません。

なお、極稀に新しい完全に新しい番号が束になって出てくるケースが過去にはありました。たとえば大昔に030や020で始まるケータイの電話番号を無くして090-3xxx-xxxxとか090-2xxx-xxxxの体系に再編成したときとか、PHSが停波してサービス終了となったので070の番号を移管したとか。実は色々理由があって手がついてなかった060で始まる番号を開放するかという議論はあるのですが、いずれにせよ今後は番号の桁数を増やさなくてはいけなくなるほどの逼迫した状況にならない限り、多分そんなことは起きないです。

社会通念上、例えばスマホの電話番号は個人情報と位置付けられるものではあります。
それを前提としたSNSのサービスもあります。
でも、それを利用者個人(あるいは法人)と紐づけられるのは契約を持っている=番号を払い出した通信事業者だけであって、社会一般として通用する個人を特定する情報ではないんですけれどね。

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