オルタナティブ・ブログ > THE SHOW MUST GO ON >

通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

TESLAのトレーラーのトラクタが事故で燃えて消火に25メートルプール半分の水を要した件が気になってる

»

先週あたりから報道が流れているのに気がついたのですが、8月19日にカリフォルニアのインターステーツ80号線でネバダ州のTESLAの施設に向かって走行していたTESLAのトレーラートラック "Semi" が単独事故を起こし、その消火に5万ガロン≒19万リットルの水を要としたとのこと。

事故がおきた直後にも多分報道が流れていたのには気が付かなかったのですが、National Transportation Safety Board (NTSB:国家運輸安全委員会)から事故に関する報告書 "Electric Truck-Tractor Roadway Departure and Postcrash Fire" が出て改めて報道が流れ始めているのに気が付きました。

フルサイズのEighteen Wheeler BEV

サイズ的にいわゆるフルサイズの18輪トラックであるこのTESLAの "Semi" 、試作車を発表したのは2017年で当初は2020年には市場に投入すると発表していました。しかしながら2024年9月の今時点で米国内のいくつかの企業でテストドライブが始まってはいますが、商品として市場に出せていません。

これには技術的な話もあるようですが、走行する地域や経路に沿ってこのサイズのトレーラートラックが使用できる充電ステーションを整備する必要があるといった話が複雑に巻き付いていて、なかなか先に進まないようではあります。

ただ、それと並行して巨大なバッテリセルを持つ車両が事故を起こしたときに何が起きるのかという話は当初からあったのですが、今回少なくとも公道上での初めての火災事故にあたって規制当局も非常に大きな関心を持ったようで、実際首記の報告書が出される流れになったようです。

自動車を含めた輸送機器業界に直接関係ない自分ではありますが、正直言うとそもそも個人的にはBEVに大きくシフトしようとする流れについてはどうなんでしょうねと思ってる人ではあります。ましてや長距離輸送のBEVトラックってどうなんでしょうねと常々思っている部分がある人ではあります。
とは言え「ほら見たことか」とは言いたくないのですが、やっぱり大変なことになったようです。

消火に19万キロリットルの水を要した事実

現時点で多く使われているリチウムイオン電池を使用したBEVが発火した場合、とにかく冷やすしか無いのは余り知られていないような風潮もありますが、酸素を絶ったら消えるような火災ではなく、とにかく冷やすしか無い。ただし水を掛けてもバッテリとしての給電能力が生きているセルがあれば、車両から流れてくる水に触れると感電する恐れがあったりします。もちろん今の市販車はいろんな形でそれを防ぐ仕組みや機能が付いているようですが、車両自体が大規模な火災を起こして手を付けられなくなるような状況だと、下手すると鎮火するまで待つしか無くなったりします。

実際、今回のTESLA Semiの火災の場合には搭載しているバッテリの量が乗用車の比ではないこともあり消火に非常に手間取り、また周囲の森林への延焼を防ぐために航空機からの散水も行われたとのこと。

しかし5万ガロン≒19万キロリットルもの水を要したっていうのはもうなんだか...

ちなみに5万ガロン≒19万キロリットルとはどれくらいなのか

アホなので19万キロリットルというのが全く想像できません。ちなみによく聞く「東京ドーム何杯分」みたいな換算をされてもさっぱりわからない人なのですが、もう少し小さい量なので、自分で判るレベルで換算するとですね

  • そもそも19万キロリットル = 190トン
  • 25メートルプール 25m x 15m x 1.2m ≒ 45万キロリットル の半分弱
  • タンクローリー1台あたり最大25キロリットル x 7.6台分
  • 家庭の風呂 200リットル x 950杯分

なんかどうでも良くなってきました。

それはともかく、今回はインターステーツの途中区間だったということで消火のための水の供給自体が大変だったんじゃないかと思ってはいます。ちなみに小型の車両であっても一度発火すると非常に厄介なのは大小にかかわらずリチウムイオン電池の持つ宿命なのですが、やはり大量に積載する大型車両だと本当に大変なんだなと言うのが判る事例ではないかと思います。

実は自分自身の意見として性急かつ極端なEVシフトはおかしいし無理だと思ってる人なんですが

もちろんキチンと製造されたものがキチンと管理されている状態で使用されている状況においては別に何も心配することは無い話ですが、小さいところだと硬い地面に落としたモバイルバッテリが発火するのと基本的に同じ原理で事故を起こした車両が発火するのは有るわけで、あ、もちろんそういうときに発火するのはガソリンや軽油を使った車両でも同じですが、冷やして鎮火するのを待つ以外に方法がないというのはやはり大変で、でもリチウムイオン電池自体は既に世の中ありとあらゆるところで使われていて、さらに例えば広くEVという形で非常に大容量のバッテリがそこら中を走り回っていて...

あたかも空が落ちてくると恐れる如く杞憂の念に囚われる必要は無いとは思いますが、世の中としての電力の安定受給やエネルギーの確保の問題と平行して色々どうなんでしょうねと考えたりはしています。

いや、本当に日本の電力事情って世界的に見てありえないくらい安定してるんですよ。
で、何故安定してるかというところは冷静に理解するべきだと思うんですよ。
そのうえで、そのバランスをどうするかっていう議論がなされるべきで、誰かを最初から悪者にするのはどうかなって思うんです。

ただし誰かにそれを強要したり自分と違う意見をお持ちの方を批判する気はありません。
今のこの時点でこれらについて議論する気もありません。
あくまでも個人的にはそう思ってる、という、お気持ちの表明程度の話です。

---iwa

Comment(0)