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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

創立記念日:会社設立以来12年間で学べたこと

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おはようございます。

冷え込みが少ない朝です。早朝は雨がぱらついています。
MさんのDRで朝気が付きました。今日は創立記念日だったのです!!

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■会社創立までのエネルギーにも凄いものがある

12年前の2000年3月6日に会社の登記書類が受けつけられました。故に「e-Janネットワークス」は3月6日が創立記念日です。

創ろうとしていたビジネスは「mailpointer」という名前の、メール保管サービスでした。無料でメールを大量保管できるウェブサイト、それを当初普及が急速に進んでいたi-modeなどのブラウザフォンで閲覧検索できるというものでした。メールデータ返還の際や広告などを収益源にしようという大胆なビジネスモデルだったのです。

東レには、2000年の2月の役員会でビジネスプランを承認してもらいました。

まさに「魂を込めて気合いが入った」というか、「気合い」だけのプランだったと思います。そこで自分は円満退社でき、お金をかき集めて資本金を用意し、東レからは融資枠などを準備してもらい無事にスタートできたのです。

考えてみると、会社創立までのエネルギーにも凄いものがありますね。

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■スタートダッシュ

当初の商号は「株式会社いい・ジャンネット」でした。「e-Jan」というローマ字表記が受け付けられなかったのでこのような社名になったのです。ところが展示会などで「ジャンネットさん」と呼ばれることに辟易して、1年後に「株式会社いいじゃんネット」へと変更しました。

会社設立のときには、お金をかき集めて資本金を準備して。それを銀行に預けて残高証明書を添付して登記します。実際に銀行口座が使えるようになったのは3月25日頃でしたから、その間の数週間はお金が全く無い状態なのです。

一方、事務所を借りれば敷金は必要だわ、パソコンなどの設備は必要だわと、お金がどんどんと出ていきました。クレジットカード頼みの日々だったことを記憶しています。

ただ、総じて、軍資金もあるし、陣容もいいし、すぐに大成功するだろうと信じ切っていました。

ところが、何も無いところから事業を興すことは想像より遥かに難しかったです。また、お金は時間とともにすぐに無くなっていくという現実もありました。当初の大きな軍資金はすぐに底をつきます。創ろうとしてたのは、今でいうところの「Gmail+スマートフォン」でしょう。世に出るには5年ほど早すぎるサービスでした。

浅はかな経営者は軍資金が底をつくまでは気がつかずに突っ走るものです。だからある程度小さい軍資金でスタートしたほうが怪我は少ないでしょうね。自分の場合、気がついた2年後には、大きな負債と焼け野原が残りました。

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■不死鳥のCACHATTO

止めたら負け。負けたくはない。不思議と、お金も信用もすっかり無くなっているのに再起の情熱だけは残っていました。焼けぼっくいを集めて、炎を再び起こしたのがCACHATTOでした。

CACHATTOはビジネス用途に焦点を絞り、法人向けのサービスとしてお金をいただきながら細々と始めたのです。やっている内容は創業当初から目指していたことと同じです。自分のメールをブラウザフォンで閲覧検索できるものでした。

受託などの業務はやめ、CACHATTOに事業を集中し、役員賞与は手取りゼロ近くにして、会社の残った皆で採算ラインに乗るためのユーザー数2万人をひたすら目指します。

ようやく2005年に採算ラインに乗り黒字化しました。ただし営業利益は確か20万円程度。プラスマイナスゼロのぎりぎりプラス側だったのです。

「一年間皆で頑張って20万円の黒字ですかぁ!うちの実家の稼ぎより少ないです。」

当時の社員からは、がっかりしたような嬉しいような言葉が出ていました。が、自分は嬉しかったです。ようやく「続けてもいいのだよ」という神様からの許可が下ったように思えました。

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■コマをより安定して回せる幸運

その後は、ひたすら製品の機能改善とサービスの安定提供とを自分たちの責務として追及しています。メンバーもどんどん強化しています。コマを回すまでは信じて同じ方向に回すしかない。コマが回り始めたら、その回転速度を高めることでより安定します。

環境も味方してくれました。ケータイは進化しきってスマートフォンへとシフトしていきます。元々目指していたことにブレはありませんでした。

今、年率40%で伸びています。二年間で二倍のペース。無理をしすぎずに文化を変化させずに伸びる上限でしょう。このような状態で満12歳を迎えることができたのは、ふり返ると、とても細い道筋が途絶えなかった結果だと実感します。そして、きっと次の12年後から今をふり返ると、「これまた細かったなぁ」と同じことを言っていることが見えます。

企業が元気でいられるというのはとても幸運です。

魂を込めて気合で切り抜け続けても、幸運という要素が無ければ今の状態にはなっていないです。正しい人が正しいタイミングで引き寄せられている。見えない力のようなものへの畏敬と感謝の念を忘れずに、目の前のことに「魂と気合」で乗り越える。

それしかない、というのが12年の経験から得たものでした。

===post script===

昨日の魂と気合についてある先輩からコメントいただきました。

以下引用==>

坂本さん
私も考えました。

「魂」は「何か(例:物)」に「生命を吹き込む」ものだと思います。
*自分が発信する情報・文章・言葉・パンフレットに...
*自分たちで開発する製品・作品  などに...
そして、「魂」が入った「もの」は発信者の手を離れても何かの力を発揮し続け、
受け手を魅了し続けるのです。命が宿ったのですから...
自分たちの(生きた)分身を作るのです。
その分身を生かすために「魂」を入れます。(入魂)

「気合」は自分を含めた「人間」に「活」を入れて「鼓舞」し、最大限の実力を発揮
させるものだと思います。
*気合を入れてよい仕事をする
*彼には気合が入っている。
作り手、もしくは発信者の、主に「人間」に入れるのが気合だと思います。

「気合を入れて新製品展示に魂を入れる」という使い方が良いかと思います。
もちろん「魂」も「気合」も、どちらも大変大切なものです。
ビジネスでもプライベートでも、です。

<==以上引用終わり

なるほど!対象がモノなのか人なのか。言われてみれば納得しました。
面白い切り口ですね。コメントをありがとうございます。
こういうやり取りで考えを深めることができるって恵まれたことだと思います。

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