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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

AIサイバー攻撃が生み出す巨大市場「AI駆動型セキュリティ」。NTTデータ、野村総研、SCSKはインド4大SIerと協業を

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9月末以降、日本企業の顧客情報漏洩が相次いでいます。その攻撃手口に共通性が見られることから、X上では複数の専門家が、いわゆる「Abliterated AIモデル」を活用した攻撃の可能性を指摘しています。

Abliterated AIモデルとは、DeepSeekなどのオープンウェイトAIモデルから、安全上の拒否機構(ガードレール)を意図的に除去したモデルのことです。「無検閲モデル」とも呼ばれます。こうしたモデルを悪用すれば、従来は高度な専門技術者が時間をかけて行っていた脆弱性の探索や侵入経路の分析などを、AIエージェントによって高速かつ大量に実行できるようになります。複数の日本企業を、極めて短期間に、ほぼ同時並行で攻撃することも技術的には可能です。ただし、今回の個々の漏洩事案でAbliterated AIモデルが使用されたことが、確認されているわけではありません。

AIを悪用したランサムウェア、あるいはそれに準じるサイバー攻撃の危険性は、小職がランサムウェア対策セミナーを連続して開催していた昨年末から今年初めにかけても、すでに指摘されていました。私自身、米国のサイバーセキュリティ動向を調査するなかで、この新しい脅威を把握していました。それが今、日本企業にとって差し迫った経営課題となっているのです。

こうしたAIを悪用したサイバー攻撃に対しては、従来のように既知の脆弱性を発見し、既知の対策を適用するというアプローチだけでは、十分に対応できなくなります。AIエージェントは、標的システムを調査し、侵入可能な経路を探索し、発見した弱点を悪用する一連の作業を、極めて短時間で連続実行できるからです。AIは未知の脆弱性を自律的に高速で発見することができます。ゼロトラストですら無意味化する攻撃ルートも瞬時に見つける可能性すらあります(それが相次いでいる顧客データ漏洩です。注:ゼロトラストは社内に侵入しようとする敵から守る。今回の顧客データ漏洩は"社外に出ている部分"がやられている)。

企業の貴重なデータ資産が、気づいたときには大量に窃取され、あるいは破壊されている。攻撃の速度が人間による検知・分析・判断・対処の速度を上回れば、文字どおり「人間が対処するヒマがない」という事態になります。

どれほど優秀なサイバーセキュリティの専門家であっても、人間の能力と時間には限界があります。AIエージェントが高速かつ同時並行で実行する攻撃に、人間の手作業だけで対抗し続けることは困難です。

そう考えると、結論はおのずと導かれます。

「AIによる攻撃には、AIを活用した防御で対処するしかない」ということです。

これは、従来のセキュリティ製品に生成AIの機能を付け加えれば済むという話ではありません。攻撃の検知、分析、優先順位付け、封じ込め、復旧までを含むサイバー防衛のアーキテクチャと運用モデルそのものを、AIを前提として再設計する必要があります。

NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが「サイバーセキュリティはAIの次の巨大市場になる」との見通しを示している背景には、こうした産業構造の根本的な変化があります。

そして、この新しい防衛アーキテクチャを日本企業に大規模に実装する仕事は、NTTデータ、野村総研、SCSKなど、日本の大手SIerにとって極めて大きな新規事業機会になると考えます。


オルタナAI駆動型セキュリティ.jpg

2026年9月10日、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが、ゴールドマン・サックスの技術カンファレンスで、サイバーセキュリティがAIの次の主要な用途になるとの見通しを示しました。

Bloomberg:Nvidia's Huang Touts Cybersecurity as Next Big Market for AI

私は、この発言を日本の大手SIerの経営者が非常に重く受け止める必要があると思っています。

なぜなら、AIを活用したサイバーセキュリティは、従来のSOCやSIEMに生成AIを追加する程度の話ではないからです。

サイバー攻撃そのものがAIエージェントによって自律化され始めており、防御側のITアーキテクチャと運用モデルを根本から作り替える必要が生じているからです。

ここには、NTTデータ、野村総合研究所、SCSKをはじめとする日本の大手SIerにとって、巨大な新規事業機会があります。

同時に、極めて大きな問題があります。

日本には、この新しい防御システムを短期間で大量に開発・実装できるAIエンジニアリング人材が足りません。

そこで私は、インドのTata Consultancy Services(TCS)、Infosys、Wipro、HCLTechという大手4社の技術者資源を、日本の大手SIerが戦略的に活用する必要があると考えています。

単なるオフショア開発の発注ではありません。

日本市場におけるAIサイバー防衛サービスを、日印共同で開発・実装・運用するという意味です。

1.Anthropicが確認した「サイバー攻撃の80〜90%をAIが実行」

2025年11月13日、Anthropicは、同社のClaude Codeが悪用された大規模なサイバー諜報活動について調査結果を公表しました。

Anthropic公式:Disrupting the first reported AI-orchestrated cyber espionage campaign

攻撃者はClaude Codeを利用し、標的システムの偵察、脆弱性の調査、攻撃コードの生成、認証情報の収集、権限の拡大、データの抽出などを実行しました。

Anthropicの分析では、この攻撃キャンペーンの80〜90%をAIが担い、人間による重要な判断が必要だったのはキャンペーン当たり4〜6回程度でした。

これは特定の攻撃キャンペーンについて報告された数字であり、すべてのサイバー攻撃が現在この水準まで自律化されているという意味ではありません。

しかし、IT業界の人間にとって重要なのは、AIがコード生成ツールから、複数のツールを操作する攻撃オペレーターへと進化したことです。

従来のサイバー攻撃でも、Nmapや各種脆弱性スキャナーなどを利用した自動化は可能でした。

しかし、それらは基本的に人間が設計したワークフローに従って動きます。

AIエージェントは異なります。

途中で取得した情報を解釈し、次に必要な作業を判断し、ツールを呼び出し、実行結果を評価して次の作業を選択できます。

複数の工程を連続して実行する能力を持ち始めているわけです。

これは、攻撃者側の労働生産性が飛躍的に上昇することを意味します。

2.Googleが確認した「6時間未満」。防御側の対応時間が消えていく

さらに2026年9月8日、Google Threat Intelligence Groupが、AIエージェントを悪用した攻撃活動について重要な報告を行いました。

Google公式:GTIG AI Threat Tracker: From Prompting to Autonomy - The Evolution of Adversarial AI

2026年第2四半期に確認された事例では、攻撃者がクラウド資源を侵害した後、AIエージェントを利用した大規模な認証情報収集攻撃を計画・構築・実行するまでに、6時間もかかりませんでした。

6時間とは最初の侵入からすべての攻撃活動を終えるまでの時間ではありません。侵害したクラウド資源を起点として、その後の攻撃を準備・実行するまでの時間です。

それでも、既存のSOC運用モデルを考えると極めて重要な事実です。

従来のSOCでは、SIEMが大量のセキュリティイベントを収集し、検知ルールによってアラートを生成し、SOCアナリストがトリアージを行います。

必要に応じてEDR、NDR、IAM、クラウド監査ログなどを照合し、インシデントを特定した後、SOARなどを利用して対処します。

しかし、このプロセスの多くが人手に依存している場合、攻撃者側のAIが数時間で攻撃を展開すると、防御側の調査・判断が間に合わない可能性があります。

ここで重要になるのが、MTTD(Mean Time to Detect:平均検知時間)とMTTR(Mean Time to Respond/Remediate:平均対応・修復時間)です。

攻撃者側がAIによって攻撃工程間の待ち時間を短縮するなら、防御側もAIを利用してMTTDとMTTRを短縮する必要があります。

攻撃者がAIを使うようになった以上、防御側のSOCもAIを前提としたオペレーションに作り替えなければなりません。

3.従来のSIEM・SOAR・EDRを統合するAIエージェントが必要になる

では、日本の大手SIerには、具体的にどのような仕事が新しく発生するのでしょうか。

私は、少なくとも四つの技術領域で大規模な需要が生まれると考えています。

第一は、EASM(External Attack Surface Management)とCTEM(Continuous Threat Exposure Management)です。

企業がインターネットに公開しているWebアプリケーション、API、クラウド資産などを継続的に把握し、侵入可能性を評価して優先順位を付ける仕組みです。

従来の定期的な脆弱性診断だけでなく、攻撃面を継続して調査する必要があります。

第二は、アプリケーションとAPIのセキュリティです。

AIがアプリケーション固有の認可不備や業務ロジックの欠陥を探索する能力を高めている以上、既知のCVEに対するパッチ管理だけでは不十分になります。

API認可、IAM、PAM、データアクセス制御などを、アプリケーション全体のアーキテクチャとして再設計する必要があります。

第三は、AIを活用したSOCの再構築です。

SIEM、EDR、XDR、NDR、クラウドセキュリティなどから得られるテレメトリーを統合し、AIエージェントがアラートの関連付け、トリアージ、原因分析、対応案の生成などを支援する仕組みです。

SOARと組み合わせれば、事前に承認された低リスクの対処を自動化できます。業務停止など重大な影響を伴う操作には、人間の承認を残す設計が必要です。

SOAR(Security Orchestration, Automation and Response) とは、セキュリティ・オーケストレーション、自動化、対応の略。

第四は、AIを利用した継続的なセキュリティエンジニアリングです。

DevSecOpsのパイプラインにAIによるコード解析、脆弱性評価、修正案生成、テスト支援などを組み込みます。

これらは、既存のセキュリティ製品を数本購入すれば完成するものではありません。

既存の顧客システムと大量の製品を接続し、アクセス権限や監査要件を設定し、業務への影響を評価しながら運用するシステムインテグレーションが必要です。

まさにSIerの仕事です。

4.しかし日本には、AIエンジニアリング人材が圧倒的に足りない

ここに、日本のSI業界が直面する最大の制約があります。

2026年7月30日にIPAが公表した「DX動向2026」には、非常に重要な数字が掲載されています。

IPA公式:DX動向2026

DXに取り組んでいる企業のうち、DX推進人材の量が不足していると回答した企業は85.5%です。

また、AIの導入・運用上の課題として「専門人材が不足している」を挙げた企業は50.1%に達しています。

この数字はAIサイバーセキュリティ専任技術者の不足率を直接測ったものではありません。

しかし、日本企業全体でDX人材とAI専門人材の確保が難しいことは明らかです。

ここで必要とされるのは、従来型のシステム開発技術者だけではありません。

LLM、AIエージェント、APIオーケストレーション、クラウドネイティブ開発、セキュリティアーキテクチャ、SIEM・SOAR統合、脅威分析、モデル評価などを組み合わせて、実運用可能なシステムに仕上げる技術者です。

しかも、一つのPoCを成功させる技術力と、何百社もの顧客環境にシステムを実装し、24時間365日の運用を継続する能力は異なります。

NTTデータ、野村総研、SCSKなどの国内大手には、当然ながら高度なAI技術者やセキュリティ専門家が存在します。

問題は、個々の企業に技術がないことではありません。

日本市場全体で今後大量に発生するAIサイバー防衛の実装需要に対して、十分な技術者を、必要な速度で、必要な人数だけ確保できるのかという問題です。

国内採用と人材育成だけでは、短期的な需要増加に対応することは極めて難しいと考えます。

5.インド4大SIerは、すでにAIサイバー防衛を事業化している

そこで注目したいのが、インドの大手4社です。

単にエンジニアの人件費が安いという話ではありません。

これらの企業は世界各国の大企業に対して、大規模なシステム開発・運用サービスを提供し、AIを活用したサイバー防衛の開発と商品化にも取り組んでいます。

Tata Consultancy Services(TCS)

TCSは、2026年10月8日に発表した決算で、従業員数59万8,056人、AI関連事業の年換算売上高31億ドルを公表しました。

TCS公式:2026年10月8日決算発表

同社は「Security Transformation with AI」を展開し、AI・生成AI・Agentic AIを活用したセキュリティ運用の高度化をサービス化しています。

TCS公式:Security Transformation with AI

しかも日本TCSは、インド国内に日本企業向け専用のデリバリーセンターを9拠点設け、約1万人のIT専門家が日本企業向けプロジェクトを支援する体制を公表しています。

TCS公式:日本TCSについて

Infosys

Infosysの2026年3月末時点の従業員数は32万8,594人です。

同社はInfosys Topazを基盤としたCyber AI、Cyber Nextなどを展開しています。

AIによる脅威分析、セキュリティオペレーションの高度化、既存のセキュリティツールの統合などが対象です。

Infosys公式:Infosys Cyber AI

Wipro

Wiproは2026年6月23日、Palo Alto Networksとの協業を拡大し、AIを活用したMDR(Managed Detection and Response)の提供を発表しました。

Palo Alto NetworksのCortex XSIAMとWiproのCyberShieldを組み合わせたサービスです。

同社は8カ所のCyber Defense Centerを通じたサービス提供体制を説明しています。

Wipro公式:Wipro Partners with Palo Alto Networks to Deliver AI-Powered Cyber Defense

HCLTech

HCLTechは2026年6月末時点で約22万3,000人の従業員を擁しています。

同社の2025〜26年度年次報告によれば、14万4,223人がAI関連のトレーニングを受けています。

また、AIを活用したSOCやMDRについて、XDR、SIEM、SOARとAIによる自動化を統合するサービスアプローチを示しています。

HCLTech公式:MDR and the AI-powered SOC

これらの人数は各社の全従業員、あるいはAI研修を受けた人員の数であり、その全員がAIセキュリティエンジニアという意味ではありません。

ただし、これだけ大きな人材基盤を持つ企業が、AIサイバー防衛のサービスをすでに展開していることには大きな意味があります。

日本のSIerが今から国内採用だけで同規模のAIエンジニアリング基盤を構築することは容易ではありません。

6.NTTデータ、野村総研、SCSKはすでに動き始めている

実際、日本の大手SIerもAIサイバー防衛に対して手をこまねいているわけではありません。

NTTデータは2025年12月、インドのベンガルール、ハイデラバード、ノイダ、ムンバイで、AIを活用した次世代Cyber Defense Centerの開設を発表しました。

Agentic AIをセキュリティ運用に適用する構想で、800人以上のセキュリティアナリストを支える能力を追加すると説明しています。

NTT DATA公式:Six New AI-Powered Cyber Defense Centers

つまり、NTTデータはすでにインドの技術者資源を自社のグローバル体制に組み込み、AIサイバー防衛を事業化しています。

野村総合研究所グループのNRIセキュアも、2026年8月6日、自社SOC「NeoSOC」にAI統制基盤「AgenticBlue」を導入したと発表しています。

NRI公式:NRIセキュア、自社のSOC運用知見を組み込んだAIで、セキュリティ監視サービスを強化

SCSKも2026年9月17日、AIを活用した「顧客伴走型統合セキュリティサービス」の提供を発表しました。

SCSK公式発表:顧客伴走型統合セキュリティサービス

これらの動きは、日本のSIerが技術的な方向性を理解し、すでに事業化を進めていることを示しています。

しかし、私が問題にしたいのは、個別のサービス開発に成功することと、日本の大企業全体に対してAIサイバー防衛を大規模展開することの間にあるギャップです。

そのギャップを埋めるには、さらに大きなエンジニアリング能力が必要です。

7.日本のSIerが持つべきもの、インドSIerに任せるべきもの

私は、日本のSIerがインド4社を単純な外注先として使うモデルには限界があると思います。

目指すべきなのは、共同でAIサイバー防衛のサービスプラットフォームを開発するモデルです。

役割分担は、次のようになると考えます。

技術・事業領域 日本の大手SIer インド大手SIer
顧客との契約・要件定義 主導 技術支援
セキュリティアーキテクチャ 主導・最終責任 共同設計
AIエージェント開発 仕様・評価・統制 実装能力を提供
SIEM・SOAR・XDR統合 顧客環境への統合責任 コネクター・自動化開発
EASM・CTEM 顧客資産・リスクの判断 継続監視・分析基盤開発
API・クラウドセキュリティ 既存業務システムとの整合 技術検証・修正支援
AI SOC・MDR運用 顧客へのSLA・運用責任 合意範囲内でグローバル運用
規制・監査・データ管理 日本側が統括 契約・技術統制に従う

重要なのは、顧客の基幹システム、業務プロセス、業界固有の規制、監査要件などを把握している日本のSIerが、システム全体の設計責任を持つことです。

一方、AIエージェント、セキュリティ運用の自動化、大量のAPI連携、クラウド環境への実装などについては、インドの大規模な技術者資源を使います。

顧客データやセキュリティログの国外移転が許されない場合には、国内にデータを保持したまま、海外の技術者がアクセスできる情報や作業内容を厳密に制限する必要があります。

技術者の人数だけでパートナーを選んではいけません。実際にAIセキュリティを本番実装した経験、専任人材の供給能力、セキュリティ資格、成果物の品質、インシデント時の責任分界などを確認する必要があります。

しかし、このような協業体制を構築できれば、国内大手SIerは自社のAI専門人材だけに依存せず、新しいサービスを大規模展開できるようになります。(今泉注:従来のSIビジネスが2倍以上になるポテンシャルがあると考えています。またクラウド化/モダナイゼーションも同時並行で進展します。各企業におけるソブリンAIの地盤づくりにも有用です。)

8.AIサイバー防衛は、SIerの収益構造そのものを変える

この新市場には、日本のSIerの経営戦略から見て、もう一つ重要な側面があります。

従来の大規模システムインテグレーションは、システムの設計・開発・構築というプロジェクト単位の売上が中心でした。

一方、AIサイバー防衛は、継続的な監視、脆弱性の発見、AIモデルや検知ルールの更新、インシデント対応などを必要とします。

そのため、初期構築だけでなく、継続運用によるリカーリング収益を確保できる事業領域です。

ここで日本のSIerが取り組むべきなのは、顧客ごとに一からシステムを開発する従来型のモデルから、共通のAIセキュリティ基盤を複数の企業に展開するモデルへの移行です。

AIエージェント、運用ワークフロー、各製品とのコネクター、レポート生成、監査証跡管理などを共通化すれば、顧客ごとの実装コストを抑えることができます。

さらに、運用データから検知・対応の改善を進めることで、サービス品質を高めることも可能です。

もちろん、ログの取り扱い、機密データの隔離、顧客間の情報分離などは厳格に設計する必要があります。

しかし、これらを実現できれば、AIサイバー防衛は、国内SIerにとって従来の受託開発とは異なる収益基盤になり得ます。

9.SIerの経営者が今決めるべきことは、AIエンジニアを何人採用するかではない

最後に、NTTデータ、野村総研、SCSKをはじめとする日本の大手SIerの経営者に申し上げたいことがあります。

今後のAIサイバー防衛市場で重要になるのは、AIエンジニアを何人採用するかという問題だけではありません。

顧客企業が求めるAIサイバー防衛を、何社に、どの速度で、どの品質で提供できるかという、エンジニアリングの供給能力そのものです。

国内の専門人材だけで市場の急拡大に対応することは難しいと思います。

私は、その制約を突破する現実的な方法として、TCS、Infosys、Wipro、HCLTechというインド大手4社との戦略的協業を重視します。

NTTデータのように、すでにインドに大規模な技術者基盤とAI Cyber Defense Centerを持つ企業は、その既存能力をさらに高度化・拡張できます。

野村総研やSCSKなども、自社のセキュリティ技術、顧客基盤、日本市場固有の知見を中核に据えながら、海外のAIエンジニアリング能力を組み込むことができます。

インド4社と競合する局面も当然あります。しかし、競合関係があることと、必要な技術資源を戦略的に調達・共同開発することは矛盾しません。

日本のSIerがすべてのAIエンジニアリングを国内で完結させようとすれば、実装速度と供給能力がボトルネックになる可能性があります。

その意味で、インド大手SIerの技術者資源を、単なるオフショア開発ではなく、自社のAIサイバー防衛事業の拡張能力として取り込むしかない、というのが私の結論です。

2025年11月にAnthropicが確認した、攻撃工程の80〜90%をAIが担うサイバー攻撃。

2026年9月にGoogleが確認した、6時間未満で構築・実行されたAIエージェントによる大規模攻撃。

そして、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが指摘した、AIの次の主要市場としてのサイバーセキュリティ。

これらは一つの方向を示しています。

AIによる攻撃能力が高まるほど、AIによる防御能力の需要も高まります。

その需要を満たすためには、セキュリティ製品だけでなく、AIエージェントを使いこなすエンジニアリング能力が必要です。

日本の大手SIerにとって、AIサイバー防衛は今後の大型成長事業になり得ます。その市場を獲得できるかどうかは、世界の技術者資源をどれだけ迅速に自社の事業へ組み込めるかにかかっていると考えます。

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