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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

セブン&アイがアクセンチュアにIT子会社を作らせる【DXモデル】。事例はこれだけあった

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セブン&アイ・ホールディングスがIT部門の刷新を図り、アクセンチュアにIT子会社を作らせる方向で進んでいるとの報道がありました。

日経:セブン&アイ、アクセンチュアとデジタル戦略で提携 IT部門再編も(2025/10/14)

IT業界に長くいる人なら、このパターン見覚えがありますね?日本IBMが昔よくやっていたIT業務受託手法です。これをある時からアクセンチュアが行うようになりました。

アクセンチュアの営業手法はアグレッシブであり、アップセルまたはクロスセルをひたすら追求して売上増大を図ります。日本のアクセンチュアは世界的に見ても優秀な営業成績を残しており、特にその複数年の売上増大ペースが評価されているとどこかで聞いたことがあります。

さて。事業会社のIT部門に在籍している中間管理職の方が、このセブン&アイとアクセンチュアの業務提携手法に興味を持ったとします。もしかしたら自社にとっても可能性があるのではないか?と考え、過去の事例を探ることにしました。

現在多くの方が手に取ることができるLLMとしては、世界最高水準にあるChatGPT 5(有料版)を活用し、上司(CIO)に提出するための資料作成をすることにします。

なお、ほとんどの企業では社内でセキュリティ方策が施されたChatGPT 5が使えないと思います。Microsoft Azure上で使うか、OpenAIが提供しているエンタープライズ版を契約している企業は別ですが、そうでない場合はどうすればいいか?社内のWiFi経由で会社のPCでChatGPT 5にアクセスすると情シスにセキュリティ面でお叱りを受けます。そういう場合には、自前PCで自前インターネット回線でアクセスするしかないです。セキュリティ上問題のある事項をChatGPT 5にインプットしなければOKです。使わない場合の機会損失を考えれば、自前PC&自前回線でも使うべきだと私は考えます。

中間管理職のChatGPT 5活用法。原理原則とは?

ChatGPT 5は、上司向け資料作成のために何かを行う際に、細かなプロンプトを覚えておく必要はありません。次の原理原則を守って使えば、IT業界の最も優秀な専門家レベルのレポートが出てきます。あなたの欲しいものを知的に理解する知的な懐の深さがあることが特徴です。これはGemini Proにも見られないものです。

【IT系の調査レポートをChatGPT 5有料版にやらせる際の原理原則】

  1. 自分の立場がどういうものであるかをChatGPT 5に明確に理解させる。
  2. 自分が所属する会社がどういう業種であり、どういうITシステムのニーズを抱えているか、ChatGPT 5が明確に理解するまでインプットを行う。固有名詞は書かなくても良い。(それが可能であるなら、自社のウェブサイトのIRセクション全部を読ませることが理想)
  3. 何を知りたいかをできるだけ詳細に明確に伝える。このケースの場合、アクセンチュアがセブン&アイからIT業務を受託する動きがあることを、日経新聞のURLを入れて読ませ、このような案件が他にあるかどうか事例を調べて欲しいと伝える。
  4. 誰に提出するレポートであるか明確に伝える。レポート提出上司は予算を持っているか、意思決定権があるかどうかをしっかり伝えると、相手に相応しいレポートが出てくる。

以上を行って得られたレポートは以下です。アクセンチュアがクライアントとの間でIT子会社を作ったケースはこれだけあります。

IT子会社を作ることで日本アクセンチュアとしては安定的な収益源が増えることになります。人材を多く雇うこともできるようになり、日本のIT業界でのシェアが増大します。


主な事例(日本・過去)

  • 住友化学 × アクセンチュア:SUMIKA DX ACCENT(2021年4月)
    住友化学80%/アクセンチュア20%。AI・データ分析等で業務改革と新規事業創出を担うDX中核会社として設立。住友化学の連結子会社。 アクセンチュアニュースルーム

  • 資生堂 × アクセンチュア:Shiseido Interactive Beauty(2021年7月)
    デジタルマーケ/IT機能を集約するJV。約250名体制でグループ各社にサービス提供。資生堂がマジョリティ。 資生堂

  • 関西電力 × アクセンチュア:K4 Digital(2018年8月・参考として先行事例)
    関電80%/アクセンチュア20%。電力設備運用や顧客データのDXを推進するJV。関電グループの業務・新規事業の変革支援が役割。 ニュースルーム

  • クボタ × アクセンチュア:クボタデータグラウンド(2022年9月)
    クボタ85%/アクセンチュア15%。全社DX、情報システム企画・開発・運用、人材育成、クラウド基盤整備までを担う。 クボタ

  • 塩野義製薬 × アクセンチュア:シオノギビジネスパートナー(SBP)合弁化(2023年7月)
    既存子会社の株式80%をアクセンチュアへ譲渡し合弁化。人事・総務・財務・調達・安全管理等の間接部門/ITを含むバックオフィス機能を広く移管。 塩野義製薬株式会社

  • コカ・コーラ ボトラーズジャパン × アクセンチュア:NeoArc(2024年1月)
    CCBJ 81%/アクセンチュア19%。人事・総務、財務、調達、IT、営業支援、コンタクトセンター等を移管し、データ駆動で業務統合・高度化。 ニュースルーム

  • MUJIN × アクセンチュア:Accenture Alpha Automation(2024年1月)
    製造・物流向けのロボティクス/データ統合プラットフォームを提供するJV。ITとOTの統合基盤づくりを担う(持分:アクセンチュア70%、MUJIN30%)。 アクセンチュアニュースルーム

  • (最新の参考)セブン&アイ × アクセンチュア(2025年10月)
    グループIT/DXの組織再編とアクセンチュアとの戦略パートナーシップを公式発表。詳細はIRリリース参照。 7andi

傾向メモ

  • 持分は顧客側が多数派(住友化学、資生堂、クボタ、CCBJ)か、機能会社をアクセンチュア多数持分で再編(塩野義)という二極。

  • スコープは「IT部門の機能集約+業務(BPO/BPS)統合」型が主流(バックオフィスやコンタクトセンター、データ基盤まで含める)。

  • 目的は"日々の運用を握る子会社(or JV)に変革人材と再投資を集中"させ、スピードと人材確保を両立。

  • 電力・素材・消費財・製薬・飲料まで横展開可能なモデルで、データ駆動の意思決定を共通KPIに置く傾向。


自社のIT部門は間接業務であり、付加価値を産まないと経営者が決断するなら、このようなやり方もありでしょう。

しかし、ユニクロのように、ITこそが自社の戦略的な武器であり、他社(世界レベルの競合他社)との差別化を図るための最重要要素であると経営者が判断するのであれば、自社のIT部門を戦略的に強化するのが順当です。IT部門への投資は惜しまない。世界最高の人材をどんどん登用する。それは経営者の判断があればできることです。

一方で、自社だけではDXを完遂できないという企業も少なくないと思います。DXは経営者の意思決定が不可欠であるとしても、経営者自身DXが何なのか、何を優先事項として意思決定すればいいのかわからない。かといって情シスが決断できる事柄でもない。そういう場合にアクセンチュアと組むスキームは合理性があります。自社で意思決定できない部分をアクセンチュアが意思決定してくれるからです。

上の過去事例はそうした選択をした企業が少なくなかったことを物語っています。

アクセンチュアに子会社を作らせるやり方でも、自社のIT要員が骨抜きにならないように、アクセンチュアからスキルを移譲するスキームを持っておき、数年後に子会社解消となった場合に、戦略要員が自社に残る...。そんな工夫は必要でしょう。

【手描き×漫画動画】「さっつーのよい知らせ」
喜ぶと口からポイントが出てくる「さっつー」
2分で楽しめるソラガスキのYouTube動画。朗読の声もユニーク。
楽しい音が出ますのでオフィスでは再生にご注意。

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