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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

インドネシアのインフラ整備(PPP)の全体像が明らかになってきました

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インドネシアのインフラPPPの動きを継続的に調べていますが、先日、インドネシア政府系の関連資料の膨大な山に行き当たり、中身を少しずつ咀嚼しているところです。

■100件に上るインフラプロジェクト

インドネシアのインフラ整備計画を報じている記事ではよく「100件のプロジェクト」というフレーズを目にしますが、それがまったくの誇張ではないということもよくわかりました。

2010年4月時点の集計では、優先プロジェクト、潜在プロジェクトの双方で以下のように計100件がリストアップされています。事業費総額は約473億ドルに上ります。

Indonesia_projects

分野別件数では、有料道路がもっとも多く35件、上水道が24件、港湾が11件となっています。事業費では件数の多い有料道路を別格とすれば、鉄道の95億4,700万ドル、発電の40億4,500万ドルが目立ちます。
これらのほとんどは、これからPPP案件として切り出され、外国企業も入札可能な競争入札にかけられるものです。

■企業が独自に提案書を作成して持ち込むことも可能

この膨大な案件をハンドリングするために、受注する民間企業にフレンドリーな法制度への改正が急ピッチで行われているほか、PPPの一方の当事者である省や自治体をサポートする組織の設置、民間企業の資金調達をサポートする金融制度の整備が進められています。

法制度の改正で特に目立つ点では、用地買収関連があります。受注企業に用地買収の負担をかけないため、数年前から、PPP案件を実施する省や自治体は、案件を競争入札にかける前に用地買収を済ませておく決まりになっています。
しかし現実的には、土地所有者との交渉が泥沼化したり、計画が発表になったとたんに地上げが発生する問題があるため、土地所有者との間で合意が得られない場合には、一定期間を置いて、第三者が決める妥当性のある価格で土地を収容できるという法改正が進行中です。これが可決されると用地買収が伴うプロジェクトの進行が早まるはずです。

また、いわゆるUnsolicited Proposalの取扱も注目されます。インフラPPP案件の実施は、省や自治体など案件のオーナーの発意によってなされる場合と、企業側の働きかけによってなされる場合とに分かれます。前者は"Solicited"(官側が要請)と呼ばれ、所定の手続きに従って競争入札が始まり、複数企業がルールに則って提案書を作成します。
これに対し後者は"Unsolicited"(官側が要請していないのに企業からアクションを行う)と呼ばれ、具体的には、企業側がプレフィージビリティスタディ、ないしフィージビリティスタディ(FS)を行った上で、提案書に落とし込み、それを省や自治体など当該インフラの主体に提案します。そのようなルートが確立しました。

これにより、次のような形の案件の進行も可能になります。すなわち、省や自治体が作成したマスタープランにまだ載っていない案件について、自らの予算でFSを行い、提案書を作成し、省や自治体に持ち込むことができます。
ただこうしたケースでも、調達の公平を期すため、必ず競争入札は行なわれます。これは国際的なインフラPPPのスタンダードに則っているためです。
しかし、FSを行い提案書を作成した企業は、競争入札においても、1)特別な評価得点が得られる、2)最上位入札者と同等の評価条件が与えられる(最低価格提示者の価格をこちらでも提示できる等)、3)落札しない場合でもFSの費用等を補償してもらえる、といった待遇が受けられます。

■日本企業がダイレクトに個別案件にアクセスできる

現在、インドネシアのインフラ事業では、日本政府のパッケージ型インフラ輸出政策の枠組みのなかで「首都圏投資促進特別地域」(Metropolitan Priority Area)などのマスタープラン作成が進んでいます。報道などによると、日本企業がアクセスできる案件にはこの枠内のものしかないかのような印象がありますが、今回入手できた様々な資料を見ると、上記の100件のプロジェクトは、日本企業にも他国の企業にも等しく開かれたものとなっており、意欲のある企業は個別案件にアプローチして、現実的な準備が進められるのではないかと思われます。

資料をもう少し精査した上で、何かうまい形で、必要とする企業の方に、セクター別の案件情報や同国で案件を進める手順など情報をデリバリーさせていただきたいと思っております。

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