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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

誰が国民総背番号制に反対してきたのか?

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現在明らかになっている社会保険庁の問題の源泉は、IT業界の人なら誰でも、受益者に対するアドレッシングの問題だということがすぐにわかると思います。すべての受益者にユニークな番号を割り振る厳格なルールが早期に確立されていれば、現在のようなことは起こらなかったはずです。社会保障番号が割り振られている米国で、この種の問題が起こっているでしょうか?

国民総背番号制が議論されるようになって久しいです。自分の記憶では80年代半ばから、議論が始まっているように思います。当時私はITが多少関係する世界で仕事をしていたため、国民総背番号制に反対する人たちに対して、「なんで反対するのか?」と素朴に思っていました。1億人以上の膨大な個人に関する業務処理を効率的に行うために、ユニークな番号を割り振らないでどうするの?と。

反対していたのは、自らをリベラルなポジションに置く新聞およびその他のメディア、政党、知識人と言われる人たち、市民団体、等々。端的にはITがわからない人たちです。イノベーション忌避層と呼べるかもしれない。

1億人以上の国民に対する社会保障を、最良の形で、効率よく(それは言い換えれば、税金を無駄にしない形で)提供するにはどんな仕組みが有効か?考えれば誰にでもわかる話です。コンピュータの力を借りないで、1億人以上の国民にひもづけられるお金の出入りを管理できるわけがない。それは突き詰めれば、対象にユニークな番号を振るということに帰着します。(わからない方はバーコードの仕組み、IPアドレスの仕組みを少し調べてみてください)

このような「あるべき姿」を見定めて、素直にその体制を整えるという発想が、国民総背番号制に反対していた人たちにはまったく欠落していました。また、現在の社会保険庁のような問題が生じるであろうということを思い描く想像力も欠如していました。

そうした人たちが世論を作り(言ってしまえば盲目的な「空気」です)、国民総背番号制は悪しきものだという観念を広げ、税金の使い方の効率性ということを本気で考えて推進しようとしていた人たちの鼻をへし折って、話を流してきた。

こうした非効率を是とする側につくマインドセット。そうしたものがはびこる土壌。そうしたものに反対することを価値だと認めてきた常識や考え方。現在問われているのは、そういうところだと思っています。財務的にそれらのネガティブインパクトを計量したら、天文学的な金額になるでしょう。また、現在ある日本のITの後進性も、淵源はそうしたところに帰着できると思っています。

とはいえ、それはあたかも空気のようなものなので、どこに当事者がいるかと言えばいるはずもなく、ある意味で「それに反対するのが是だとする価値観」に無数の優先的選択がなされて巨大なハブになってしまった、とでもいうような現象だったのでしょうけれども。

日本の典型的な「空気」による運動だったのではないかと考えています。

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