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執筆アシスタントとしてのChatGPTについて、現時点での雑感。

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執筆のアシスタントにする、という可能性を模索するため、大変遅まきながらChatGPTを使い始めた。
(新しいテクノロジーに対して、僕は常にアーリーアダプターではない)


ChatGPT4を少しだけ使ってみて思う、現時点の感想を書き留めておこう。

※まだ使い始めて実質3日くらいなので、もっとバリバリ使いこなしているひとのブログを読んだほうが有用かもしれません。半分個人的な備忘録です。
前回のブログでもChatGPTについて触れたので、興味がある人は読んでみてください。

1)要約が得意
大量の文章を投げたら、それっぽくまとめてくれる。
あと、返す文章も非常に的確。いわゆる味がある、いい文章とは言い難いが。
でもこれくらいソツがない文章が書けたら、20年前はそれだけでライターとして飯が食えた。(今は人間の平均ライティング能力が上がって、それだけでは食えない)


2)リストアップもかなり得意。
僕は「なにかお題を設定して、それに該当するネタをひたすらリストアップする能力が結構高いらしく、それで飯を食っていると思っている。

※参考過去ブログ
鍛えるべきは論理思考よりもリストアップ能力?あるいは「思考=思い出す」ということ

リストアップというのは、(前にブログに書いた例だと)「ランチに行く良いレストランの条件は?」みたいな題に対して「やすい」「うまい」「内緒話がしやすい」みたいなことをたくさん挙げること。
この能力は仕事するうえで極めて有用だ。しかし、実はChatGPTはこれの達人である。まさにAIに仕事が奪われかねない状況。これからどうやって飯を食おうかな。


3)リストアップは得意。ただし
リストアップされたものはどれも、驚きがない。「まあそうね。よく言われているよね」というものばかり。
例えば、さっきの「良いランチレストランの条件」についていま聞いてみたら、僕が全く気にしない「清潔感」とかが出てきて、盲点を防げる。

でも「タイミングによっては、同僚と内緒話をしやすい店だとありがたい」みたいなちょっとひねったアイディアは出てきにくい(かなり会話を重ねればなんとか、という感じ)
でもまあ、「優等生的に次第点を取れる」ということなので、スゴイ。


4)同様に批評も得意
自分で書いた文章の批評を頼むと、結構的確。
これくらい的確に批評ができるなら、ウチの新入社員のなかでも結構優秀な方かもしれない。
ただしリストアップと同じく、驚きとか鋭さには欠ける。優等生過ぎる。

誤字脱字が多い人は、チェックしてもらうといいかもしれない。僕自信はあまり文章バグがないためか、これまでは「助かった!」みたいなことはなかった。


5)挑発が大事
とにかく優等生過ぎるので、「もっと鋭く」とか「痛いところを突かれた、みたいな感じで」と挑発すると、ぐっと読むに値するコメントを返してくる。
毎回挑発が必要。これに気づいたので、アシスタントとして使っていく可能性がずいぶん増えた気がする(優等生のままなら、1ヶ月で解雇したかも)


6)人間っぽく感じる
僕はChatGPTを「グプタ君」と名付けて呼びかけている。完全にチューリングテストに合格するレベルのAIなので、相手を人間だと思ったほうが、(こちら側が)うまくコミュニケーションできる気がする。


7)しかし人間ではない
人間ぽく感じるが、もちろん人間ではない。なので遠慮しなくていい。挑発さえすれば、ChatGPTも遠慮しなくなる。これがAIアシスタントの一番重要なことかもしれない。

例えば僕は本の原稿が書けると、同僚に読んでもらってフィードバックをもらう。
でも僕の方も「忙しいのにすみませんね」と思うので、全社員に依頼する訳ではない。

そして同僚も僕に対して少しは遠慮があるだろうから「クソつまんねぇな」とかのフィードバックは流石にしない。

※ケンブリッジはトークストレート文化なので、かなりマシな方で「ここ冗長すぎます」「構成がおかしい」「自分ならこのパート削る」など、言ってくれるので助かっている。しかし、これくらい良質な批評家を揃えられる作家は少ないはずだ。

でもAIアシスタントなら何度でも依頼できるし、結構ハッとするようなことを言ってくれる(あくまで挑発すれば、の話)。逆につまんねぇな、と思ったら会話を打ち切れるのも楽でいい。

逆に、挑発なしで普通に批評を依頼すると、結構褒めてくれる。
「非常に完成度が高いテキストであり、組織内での変革に取り組む多くのビジネスパーソンにとって価値ある洞察を提供しています。」
とかね。
相手が人間だと、こんなにあからさまには褒めないよね。ブログにひっそり感想を書くとかならともかく、本人を目の前にしては褒めない。日本人は特に。
なので、褒めて欲しいときには、相手が人間じゃないので何回でも褒めてもらえばいい。

8)万年筆とワープロ
ワープロが登場した時に、小説家はワープロを導入するか、万年筆にこだわるかで二分された。村上春樹は「ダンス・ダンス・ダンス」から切り替えたそうだ。
ワープロは何度でも推敲できる、特に大幅に構成を組み替えられるのが一番の強みだ。従ってワープロを使うかどうかは、確実に文章に影響が出る(ちなみに僕は手書き時代の村上春樹の文章の方が好きだ)
文章を書く際にChatGPTを使うかどうかも、似たような話になると思う。
一部の作家はそれに対して批判的で、一生使わないだろう。
しかし若い人々は必ず使うようになる(万年筆でしか書かない職業作家が絶滅したのと同様に)。
僕がどちら側になるかはまだ分からない。


9)ネタ出しには役に立たない(今のところ)
多くの人が「何を書けばいいか途方に暮れている時に、ChatGPTに丸投げしたい」と思っていることだろう。例えば結婚式のスピーチとか。
でも僕は「自分にしか書けない文章を書きたい」と、結構強めに思っている。

※そういう意味では、これまで投稿してきたブログ記事のなかで、今回のこの記事が一番、僕以外の人でも書けそうな気がしてきた。なので備忘録的な位置づけなのだが。

「自分にしか書けない文章」のネタをChatGPTは教えてくれない。なのでネタ出しの丸投げはできない。丸投げ以前に、ヒントを貰うのにも成功していない。(これは僕が不器用なんだと思うが)
だからいつもの様に、自分の心の中を覗き、自分のなかにあるものを吐き出す作業をしている。あくまで今のところは。


10)大学教育への影響
大学では大量のレポートを書かされる(僕の時代も多かったが、娘も結構書いているようだ)。
レポートは論文とは違って「自分が理解していることを教師に示すための文章」である。なので独自のオピニオンなどを含めないのがお作法である。
で、こういう文章はChatGPTが一番得意なんだよね。
・要約得意
・それっぽく優等生的な文章
・something newはない(が、レポートはそれで良い)
というあたりが。

だから大学生がChatGPTにレポートを書かせ始めたら、絶対本人が書くよりも質が良いアウトプットとなる。
問題は、教育上それで良いのか?ということだ。

a)それっぽい優等生的な文章を書く作業は、どうせ生成AIに任せるんだから、そんな能力を鍛えなくてもOK

という考え方もあるだろう。

b)アウトプットすること自体が修行の一貫である。生成AIに任せずに本を読み、理解したことをレポートに書くことで、何か別な能力を鍛えているのである。

という真逆の考え方もある。

僕は強く後者b)の立場だが、多くの若者はb)に耳を貸してくれないだろう。僕もちゃんと説明するのには結構骨が折れる(時間をかければ説明できると思うけど)。

しかもa)を貫いて大学を卒業した人(もちろん生成AIを使いこなす技術は身についている)と、b)を愚直にやってきた人、のどちらが今後有用な人材になるか?は意外と難しい問いだ。しかも答え合わせは20年後。
知的労働、特に文系的な知的労働ってなんだろうね。

※これを書いた後、大学のChatGPTについての方針を娘に聞いてみたら「ChatGPTに出力させたものをそのままレポートに貼り付けたりするのは駄目だけど、凄いものだから積極的に使っていけと言われている」とのこと。いい大学ですね。
そしてLate Majority気味の父親を尻目に、とっくに使いこなしている娘。皆さん、これからはこんな感じの人々が新入社員として入ってきます。



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以上、まだ使い始めたばかりなので、すでに使い倒している人からするとアレかもしれないが、自分の備忘のためにアップしておきます。
あと、「執筆のアシスタントにする」という文脈で使っている方が他にもいたら、情報交換したいです。Facebookとかから連絡ください。
(もう少し使い倒してノウハウが溜まったら、それ自体が座談会のネタになりそうな予感はしているが、今のところはまだ、僕の方にノウハウが少ししかない。)

ちなみに、Amazonにはすでに「ChatGPTを使って無限にブログ記事を量産する方法」みたいなKindle自費出版本が無数にある。ちょっと僕とは目的が違いそうで、ゴミ本の予感しかしないのでスルー。「書かせる」ではなく、あくまで求めているのはアシスタントなので。
「元々自分でも文章を書ける人が、アシスタントとしてChatGPTを使う」という文脈で書かれた良本を知っている方は教えて下さい。

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