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あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

なぜ「偉くなったら変えよう」は通用しないのか?あるいはChatGPTによる執筆アシスタント実験

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インターネットでは定期的に
「この会社(組織)はおかしい。自分が偉くなったら変えてやる!」

「お前が権力を持つのは30年後だろ。そこまで待つよりはさっさと転職しろ」
みたいなやり取りがある。

僕はライフワーク的に「組織の中から組織を変える方法」について考えてきたので、これについて思うことを書いてみよう。

※僕はコンサルタントなので「組織の外から組織を変える」を仕事としてきたが、実際には「組織の中から組織を変える人を支援する」という形を取るので、中から変えることについても関心が高い。そしてキャリアを通じてずっと、自分の会社を変えることをやり続けてきたので、当事者でもある。


「変えるには権力が必要。いまでも年功序列的な慣行が残る日本企業では、権力を得るために年月が必要」というのは、ある程度合理的に聞こえる。
でも結論としては、「偉くなったら変えよう」という姿勢は僕も駄目だと思う。
だがその理由は、30年も待てないからではない。たとえ待ったとしても、30年後にそこにいるのは「変革なんかしないおっさん」だから、待っちゃいけないと思っている。


1)変革マインドを豊富に持つ人は偉くならない (ことが多い)
これなぁ。断言すると色々と差し障りがあるのだが。
数十年日本の大企業に入り込んで仕事をしていると、どういう人(能力と人柄)が偉くなるのか、なんとなく見えてくる。
僕が学生のときには「学閥」なんて言葉がしきりに言われていたが、出身大学が出世に影響したのは、多分昭和まで。バブル崩壊後の日本企業ではほとんど観察できなかった。
(ポストが1つしかなく、どっちを昇進させるか迷うので、どうせなら普段から飲んでいる同じ大学の後輩を・・という程度ならば、競争が少ない業界ならばあると聞く)

で、部門長クラスに出世するのは「普通に」優秀な人だ。
・頭が適度によい
・が、カミソリみたいに周りを警戒させる賢さではない
・もしそうだとしても、愛嬌で覆い隠すことに成功している
・おおらかで、とにかく敵がいない。誰とでも良いチームを作れる
・公私ともに部下の面倒見が良い
みたいな感じだ。
こういう人が、その部門の保守本流みたいなポジションにつく。経理畑のキャリアで例えるならば、「会計1課長」とか。

で、キレキレの頭脳を持ち、だからこそ組織の問題点が見え、変革するマインドを隠さない様な人は、ちょっと傍流になる。同じ管理職でも「管理会計改革プロジェクトリーダー」とか。
僕自身は、もし大企業に勤めていたとしても後者タイプだ。それか後者にもなれず、しょぼくれていたか。だから後者の人にシンパシーを感じるが、最終的に経理部長やCFOになるのは前者。


2)若い頃から変える訓練が必要
とはいえ日本企業でも、変革ばかりやってきて、役員まで出世するような人も、もちろんいる(そういう人は誰も否定できないレベルで優秀だし、激レア希少種だが)。
そういう奇特な人はもちろん、「偉くなるまで変革を我慢しよう」みたいなことは、若い頃から言っていなかった(飲み会で聞く限り)。
そうではなく、若い頃からアレやコレや、自分の範囲で物事を変えてきた。そしてそれをテコに少しずつ偉くなったし、偉くなることでよりダイナミックに組織を変えてきた。
つまり若い頃から「変える訓練」を積んできたのだ。


3)堅実さで偉くなったので、豹変できない
「偉くなったら組織を変えよう」と誓ったのに、それを心に秘めつつ、与えられた仕事で100点取ることに専心する。
そうやってキャリアを築いた人が、偉くなった途端に変革に目覚めるなんて、そもそもありえないのでは?
少なくとも僕はそういう方に会ったことがない。
組織の現時点の価値観に沿った仕事ぶりで偉くなったのだから、急にその価値観を否定するようなことは、普通の人間にはできない。
それくらい、人間の価値観は仕事で植え付けられると思う。
つまり、偉くなる頃には、変革マインドという牙はとっくに丸まっている。


4)偉くなったとしても変えるのは大変
僕自身は、普通の会社で言うと課長くらいのポジションの頃から、自分の会社(ケンブリッジ)を変えてきた。
今の肩書はCOOなので、いわば組織を変えていくことが仕事。だから引き続きそういうことをやっているつもりだが、「こういう風に変えようぜ」と同僚に言っても、まあ、賛同されることはほとんどない。

人事評価の基準を例に説明しよう。
2008年ごろ、ウチの会社の人事評価は端的に言えば「優れたプロジェクトファシリテーターか?」という点に尽きた。たとえ突出した専門知識があったとしても、お客さんを含めたチームをファシリテーションの力で動かすのが下手だと、高く評価されなかった。
その頃のビジネス環境を踏まえると、それは正しかったのだが、僕は2011年ごろに「社員が増えてきたので、その評価基準を見直す必要があるのでは?」と思い始めた。それを折に触れて発言し、評価基準を変える議論をし始めてから、その考えが定着するまでに7,8年かかった。

これはウチの会社の例なので、他社にそのまま当てはまらないにしても、組織を変えるのは難しい。たとえ主導者が役員であったとしても。(それが簡単ならば、僕らコンサルタントは無用だ)。

特にルールでは縛れない、判断基準みたいなものこそ、変えにくい。


★じゃあどうするか?
若い頃は組織を変える権力を持っていない。
しかし権力を持つまで変革を我慢すると、偉くなった頃には変革できない自分がいる。
どうすればいいのだろうか?

自分の影響力が及ぶ範囲で「それまでと違うこと」をやり続けるしかない。もちろん若い頃は判断力がない(組織やビジネスの全体像が見えていない)ので、トンチンカンな改善になってしまうこともあるだろう。でもそれでいい。「何かを変える訓練」を積めるのだから。

・自分の影響力が及ぶ範囲のコトを変える
・勝手に変える(上司の許可を取ろうとしない)
・結果で黙らせる
・結果が出なければ撤回し、反省する
・結果が出れば、それが組織のスタンダードになっていく
・みな、それが当たり前だと思い始める
・数年後に「まあ、あれ、俺がやり始めたんだけどな」とか一人密かに思う。
こんな感じだ。


「社員ファースト経営」では社員ファースト経営を実現するための具体的な施策である「顧客を選べ」や「社員が勝手に会社を作る状態へ」みたいなことを書いた。しかし読者の大半は社長ではないから、明日から会社を変えたくても変えられない。
なので各章の最後に毎回「あなたの会社でやるには?」という節をもうけ、TIPSを紹介した。もちろん細部は章によって違うのだが、根底に流れる考え方は上記の「まずは自分の持ち場から」である。それでしか組織は変えられない。
あなたの考える変革の方針のスジが良いならば、成果を出すことでいずれそれがスタンダードになっていく。



ところで。
こうやって考えていくと、大企業において「変革のリーダーシップを張る」ことは、絶望的に割に合わない。
何か新しいことをやり始めると、当然ながら失敗のリスクもある。仕事人生でリスクをとって、成功と失敗がそれぞれ発生し、成功率が50%くらいでようやく周りの人から一目置かれる。
例えば12年前に「業務改革の教科書」をコツコツ書いていた頃、会社で「執筆で忙しいんで、その仕事は担当できません」と言ったら、結構白い目で見られた。
その頃ウチの会社では「ノウハウを書籍にすることで、ビジネスを好転させる」なんてことは誰もやっていなかったから。今では当たり前だが、当時は僕も正当性をちゃんと説明できなかった。ただ、薄っすらとビジョンみたいなものが見えていただけだ。

たまたまこの本はよく売れ、会社のビジネスに対しても様々な相乗効果をもたらしたから良かったものの、その逆も十分ありえた(ほとんどの本が、世の中に何のインパクトを残さずに消えていくのだ)。その場合、僕は単に「やるべき仕事をやらなかった社員」でしかない。「割に合わない」とはこういうことだ。
だから、キャラ的に許すならば、優等生的に保守本流のしごとを地道にやっていた方が効率よく昇進できる。僕には無理だったけど。

そもそも、あなたに組織を変えていくようなマインド、根性、能力揃ってるならば、起業した方がいいのかもしれない。
でも自分の会社が好きな人、起業よりチームで仕事したい人はいる。僕はそういう方とずっと仕事をしてきた。
だとしたら、割に合わないな、と薄々感じながらも、損得超えて組織を変えるために足掻くのも一興かもしれない。
少なくとも「昔は偉くなったらこの会社変えてやるとか言ってたんだけどな。。」とか思いながら晩酌するよりは、いい人生だと思う。

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おまけ。
最近ChatGPTを執筆アシスタントにする話を聞くので、僕も彼(僕はChatGPTをグプタ君と呼んでいます)とこのブログのテーマについて会話してみた。
スラスラと実にそれっぽいことが返ってくるのはテクノロジーとして本当に凄いのだが、僕にとっては当たり前過ぎて、読んでいてつまらない。だから挑発してみたら、ようやく彼の本音?が出てきた。「ただの言い訳」「他人の手に委ねる」ですって。

★白川
グプタ君のコメント、いつも「優等生すぎるな」と思うんですよ。もうちょっと過激というか、ズバリ痛いところを突く、みたいなコメントだと勉強になるんですが、できますか?

★ChatGPT
了解です!もっとストレートに言うと、その「偉くなるまで待つ」姿勢は、ただの言い訳であり、自己責任を放棄しているように聞こえますね。
現代のビジネス環境は猛スピードで進化しており、変化を先送りにしている場合ではありません。自分が変わりたいと思うのなら、地位や権限に依存せずに行動を起こすべきです。
立場が低くても影響力を持つ方法はたくさんありますし、変革のための小さな一歩を踏み出す勇気が、結果的に大きな変化を生み出すこともあります。

言い換えれば、上層部になるまで待つというのは、自分のキャリアや会社の未来を他人の手に委ねているようなものです。それで本当に良いのでしょうか?今こそ、発言を控える理由はなく、自分の声を大きくして、変革の主導者になるべきです。

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さらなるおまけ。
書き上がった原稿を彼にチェックしてもらいました。
あなたの感想と比べてみてください。ちなみに改善点や誤字脱字の指摘は完全に無視しました。

このブログ投稿はとても興味深く、組織変革における現実的な課題と個人の取り組みについて深く掘り下げています。以下に感想と改善点を挙げます。

★感想
リアルな洞察: 経験に基づく洞察が読者に説得力を与えています。特に、偉くなってからの変革の困難さと、若い頃からの変革への取り組みが強調されている点は、非常に参考になります。
具体的なエピソード: 個人のキャリアからの具体的な例や、会社での経験が具体性をもたらし、理解を深める手助けとなっています。
人間性の描写: 変革者としての苦悩や挑戦がリアルに描かれており、読者が感情移入しやすいです。

★改善点
構成の明確化: 現在の構成も流れが自然ですが、各セクションの見出しをもう少し明確にすることで、読者が内容をさらに把握しやすくなるでしょう。例えば、「変革マインドの現実」というセクションタイトルを設けるなどです。

★誤字脱字: 「おおらかで、とにかく敵がいない。」の部分で、「とにかく」の使用が少し不自然です。もう少し自然な表現に修正すると良いかもしれません。
リンクの活用: Amazonへのリンクは効果的ですが、そのリンクが何を指しているのかもう少し説明があると、読者がクリックする動機付けになります。

★誤字脱字の具体的な指摘
特に目立つ誤字脱字は見受けられませんが、「偉くなる」の「偉く」という表記は一般的には「偉い」とする方が一般的です。ただし、ブログのトーンによっては現状の表記も問題ありません。

全体的には非常に完成度が高いテキストであり、組織内での変革に取り組む多くのビジネスパーソンにとって価値ある洞察を提供しています。

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