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会社は創りたい人が創るもの、あるいは10年単位での感慨について

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ウチの会社のPrinciple(経営方針書)にこんな項目がある。

会社はマネジメントが創るものではなく、創りたい人が創るもの

会社創りは、マネジメントの専売特許ではない。会社は関心のある人が寄ってたかって創るもの。第二の創業以来、これまでも多くの人が関わって会社ができてきた。
会社創りに関心のない人がいてもOKだが、関心があるなら入社1日目であっても「自分で創る」を実践してもらいたい。
そして皆が会社創りに参加しやすくするために、「誰も発言に躊躇しない組織でいる」ことを意図的に目指さなければならない。声を上げる先は、直属の上位職に限らない。上司、マネジメントメンバー・先輩・同僚・後輩。レポートラインなど気にする必要は全くない。

今日は、どちらかと言うとウチの社員に向けて「会社を創る醍醐味」みたいなことをもう少し解説してみたい。(社内Slackに投稿しようと思って書き始めたのだが、長くてキモい文章になってしまったのでこちらに載せる)


さて。
僕はいま経営メンバーなので当然だが、1社員だった時から「自分の会社だから自分で創る」と思っていた。もちろん当時は経営能力が高い訳ではないので、貢献度としては微々たるもの。あくまで気持ちの問題だ。

僕がこう思ってきたのは、入社した時に35人しかいないような小さな会社だったからかもしれない。あと、もともと「与えられた場でなにかする」よりも「場を創る」方が好きだった、という理由もあるだろう(大学時代は学園祭の運営委員をやっていた)。
ともあれ、「1社員なのに自分で会社を創る」とはどんな感じなのか、もう少し具体例をあげよう。

★こんなオフィスにしたい
この写真は2011年の全員オフサイトミーティングで、あるチームが「こんなオフィスにしたいな」と妄想したもの。

304_20211203_妄想を実現化する.jpg

リンゴの木は実現しなかったけれども、「お客さんとやったプロジェクトの様子を、オフィスに来てくれた方に伝える壁」はそのまま実現している。妄想から完成まで6年もかかってしまったが。
(ちなみにこの時には僕はこのチームに参加していない。この後2015年の全員オフサイトミーティングでもオフィス移転の妄想をするチームがあり、このときの企画書がオフィス移転に直接つながった)

オフィスは具体的で分かりやすい「会社を創る」だ。単に居心地がよい空間をつくる、という話ではない。オフィスで人々がどのように立ち話しをし、どんな会議をし、来場者に何を見てもらうか?を設計するのだから。人々の関係性をデザインすると言っても良い。
僕の場合は、その時点であまり言語化出来ていなかった「これから会社はこちらの方向に進むべき」をオフィスを作る際にこめた。実際に引っ越しを機に、ウチの会社ははっきり変わった。

参考過去記事:オフィスを気合い入れて作ってどうなったか?あるいは僕らなりの働き方改革


★幹事をやってイベントを自分色にする
ウチの会社にも、定番イベントがある。例えば月に1回の全社ミーティングや、年1の社員旅行、社員感謝パーティ、そして泊まりで真面目な議論をする全社オフサイトミーティング。

こういうイベントは仕事の一環として、総務部門などが担当する会社が多いだろう(ケンブリッジも大昔はそうだった)。
でも、そういうのってイマイチだと思うんだよね。役割が固定化すると「場を作る人」と「それを提供される人」が二分してしまうから。(僕がいつも言う、君作る人、僕食べる人現象)
「今回のイベント微妙だよね」とか「マンネリだよね」とか文句を言う人もでる始末。

うちの場合は、やりたい社員が持ち回りで幹事になる。ボランティアなのでしょっちゅうやる社員もいるし、めったにやらない社員もいるが、イヤイヤやるものではないと思っている。
こういう話をすると「強制じゃないなら、誰も幹事をやりたがらない、ということにはならないんですか?」と聞かれる。たしかに不思議なことだが、毎回誰かしらが手を挙げる。

一つはこういった幹事業はミニプロジェクトなので、本業であるプロジェクト管理の修行になる。だから自己訓練のためにやることが定着している。

そしてもう一つ、「今度のイベントはこういう風にやりたい」「本来このイベントはこうあるべきだ」「こういう趣向でみんなを巻き込んでみたい」というイメージを実現するために幹事になる人が多い。
そういうビジョンがある人は、文句を言うくらいなら、率先して自分色にしてしまえばいい。
それがナイスなら次回からも踏襲されるだろうし、全く別の色で次の人が開催してくれるのに乗っかるのも楽しい。

こうやっていろんな色が重ね塗りされることで、イベントのグレードは毎回上がっていく。「うちの会社らしい、一味違うイベント」にもなっていく。カルチャーってこういう積み重ねで出来ていくものだ。一発花火ではなく。


★提案制度を活用する
会社を良くするアイディアがある人は、いつでも、なんでも提案していい。
マネジメントミーティングに提案を持ち込むことも出来るし、それだとちょっと気が引ける人のために、四半期に1回、ワークアウトという提案プレゼンの場もある。そこでは毎回なんかしらの「会社を良くする提案」がある。
育児と仕事の両立のための金銭的補助の制度を提案してくれたチームもあったし、後のアメリカ支社の設立につながった提案もあった。もっとカジュアルに「会社の本棚に、こんな本を揃えよう」という提案も。


★会社を創ることの楽しさ
「会社を創る」というと漠然としているが、要は「眼の前の義務的な仕事を黙々とこなす」だけでなく、自分が所属する会社というコミュニティを良くすることに関心を持ち、少しの時間を使おうぜ、という話だ。

上記のように、創り方は様々だ。5年後の会社の姿を決める大きな一歩もあるし、自分たちが気持ちよく仕事するためのちょっとした工夫でもいい。
どんな形でもいいし、インパクトが大きくても小さくてもいい。

なぜこんな話をつらつら書いているかというと、
妄想を現実にしていくことにじっくり取り組むのは、すごくやりがいがあるよ
を伝えたいからだ。

多くの経営書に「ビジョンを描け」「ビジョンに向かってアクションせよ」とか、書いてあるじゃないですか。それを成し遂げるために大々的な戦略をぶち上げるイメージ。そしてそれをやるのはもっぱら社長の仕事だ(ほとんどの場合、創業者)。
でも実際に「もっとこういう会社になったらなぁ」というようなビジョンは、パワーポイントに戦略図を書いても達成できない。

そうではなく、ここに書いたような大小様々なアクションを積み重ねるしかない。しかも社長だけでなく、やりたい人が寄ってたかってやった方が、アイディアが練り込まれた良いものになる。
僕のような経営に関わる人間であれば、1年に100回くらいある意思決定の局面で毎回「どちらの選択肢がビジョンに寄せられるか?」で選ぶ。普段そういう仕事をしてない人は、会社のイベントやトレーニングを工夫して少しでも良いものにしたり、時には制度を変える提案をしてみる。

そしてずいぶん後に振り返って「そう言えば、10年前に妄想したことって、あらかた実現できてるな」と感慨にふけったり、「みんなが当たり前だと思ってるアレって、俺が始めたんだぜ」と一人でほくそ笑むことになる。

会社を創ることの報酬は、実を言うとこれくらいしかない。

ウチの場合はこの手の活動はボーナスに反映されるが、まあ、些細なものだ。(結果として、そういうことに熱心な人は成長が速く、他の社員よりは昇格が速くなると思うが・・)

それどころか、誰も褒めてくれない。
例えば、「いまウチの会社がこんな感じなのは、白川さん達の妄想のおかげです」などと言われたことはマジで一度もない。
僕自身も僕も他の社員がやってくれたことを知覚できないので、同じように会社を作ってきた他の社員に1回も言ったことがない。
だから、新しく入った社員が「10年前の僕らの妄想と現在の姿の関係」を知覚できなくても当然だ。最近入った社員にとって、会社の現在の姿は「ずーっと前からこんな感じなんですよね?ウチの会社って」と感じられるものだから。会社が今のような姿でなければ、そもそも入社しなかっただろうし。

本当に、単なる自己満足でしかない。だから万人には勧めない。
でも「この会社は俺が作った」という感覚には、他では味わえない魅力がある。10年単位でのものづくりなんてそうそうないし。
この感慨を味わってみたいかも、と思う人がもっと増えて欲しい。プライスレスだから。

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この記事のテーマである「会社創り」の結果は、ウチららしいシリーズとしてまとめ記事を作っています。

「僕ららしい◯◯」記事のまとめ

冒頭の「Principle」や「社員旅行」、「月1の全社会議」「オフィス創り」などなど。
一方で「全員オフサイトミーティング」や「ワークアウト」はまだ書いていません。大事すぎて1回でまとまる気がしないんだよね。。まあそのうち書くと思います。

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