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Show the flag! あるいは決まる訳ない議論を決める方法

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★腹の中が分からない人と議論出来る?

「あの人、結局何が言いたいんだろう?」
「賛成か反対か、最後までわからなかった」
「脇道にばっかりそれて。決める気あるのかな?」
「本当に悩ましい。でも決めないといけない。でも決まるわけない」

こんなボヤキが出る会議はよくある。というか、プロのファシリテーターになる前はよくあった。皆さんの周囲にもあると思う。
そんな時、ここぞという時に、僕が使うファシリテーション方法を紹介したい。

Show_the_flag_mark
写真はある会社の役員会議。
少しわかりにくいのだが、参加者が1枚ずつ色紙を机に貼っているのが見えると思う(赤い矢印の所)。これは、「私は今、どの案を支持していますよ」という意思表明をしている。

たいてい、色紙は4色用意する。
・A案を指示
・B案を指示
・AでもBでもない、その他の意見がある
・分かりません

Show_the_flag_mark2

意思決定をする色紙を旗に見立てて、この作戦を「Show the flag」と呼んでいる。
議論する時、発言する時は、必ず「旗幟を鮮明にせよ」という意味だ。

★Show the flagの3つのルール
この作戦が効果を上げるために守るべき、簡単なルールがある。

【ルール1】旗幟を鮮明に
結論が出るまでずっと、どれかの色を必ず自分の前に貼っておかなければならない。
何も貼らないのはダメ。その場合は「分からない」を貼る。
2色同時に貼るのもダメ。折衷案なら「その他の意見」だし、どちらか迷っているなら「分からない」になるはず。

【ルール2】「分かりません」の色紙を選んでよい
この作戦を使うのは、難しい議論の時が多い。様々な要素を考慮しながらの意思決定が求められるので、当然、「正直、よく分からん」という時だってある。他の人の意見を聞きながら考えたい時だってある。そういう場合は、虚勢を張らずに素直に「分からない」と表明してよい。
(普通の人は「分からない」を表明するのが苦手だが、優秀な人ほど、分からないと言うことにためらいがない)


【ルール3】色紙はいつでも変えてよい

難しい議論なのだから、誰かの意見を聞いたり、自分が知らなかった新事実を聞いたら、意見を変えたくなることもある。
以前に「議論の途中で意見を変えるという愉悦、あるいは議論で生み出すものとは何か?」という記事で主張したように、それは自然なことだし、むしろ全くないなら、会議を開く意味が無い。

意見を変えることにも、普通は抵抗がある。首尾一貫しない、カッコ悪いヤツだと思われたくない。
(だから、この方法で議論する前には「意見を変えるのが自然ですよ」を体感してもらうためのアイスブレカーをやる)

★Flagを見せ合うと、何が起こるか?

自分の考えを常に貼りだしておくだけで、はるかに議論がしやすくなる。どんなことが起こるのだろうか。

a)話が分かりやすくなる
「オレはB案支持」⇒なぜなら○○の懸念があるから
「ぶっちゃけ分からない」⇒なぜなら△△の調査ができていないから
など、議論をする上での立場を示した上での発言なので、話の文脈を理解しやすくなる。


b)リラックス&緊張感
常に自分の意見をハッキリと示すのは、結構緊張するものだ。
「しばらくダンマリで凌ぎ、大勢が決まったらそれに賛成しよう」という姑息な作戦は取れない。常に自分で考え続けなければならない。

一方で、分からないと言ってよい、意見を変えてよい、というルールはある種のリラックスをもたらす。「あー、難しいもんね。分からない場合もあるよね」という。


c)少数意見も汲み取れる
1人か2人だけ、みんなと違う意見の人がいたとする。当然「どういう意図で、それを選択しているのですか?」と聞くことになる。
そうやって出てきた意見が、実に重要な観点で、多数派が宗旨変えするケースは多い。議論は選挙じゃないんだから、多数派が正解である保証はないのだ。


d)自然と意見が収斂する(事が多い)
不思議ですね。この方式で議論していると、段々と意見がまとまっていく事が多いです。少なくとも「議論をし尽くした」というところまではたどり着ける。

ある部門の会議で、部長さんだけがB案で、部下が全員A案だったことがある。そうなると当然「なぜみんながA案だと思っているのか」を部長が聞くことになる。現場の意見を一つ一つ聞いた部長は、「皆の言うことは分かった。そのかわり、ちゃんと実現しろよな、君たち」と色紙をA案に変えてくれた。
もちろん、部長が「現場の気持ちも分かるが、経営の観点からは・・」と話し、逆の結論になる時もある。

なぜ収斂するのか。
この作戦で話していると「反対のための反対」「議論を成り立たせないためのグダグダ議論」をやりにくいからだと思う。反対のための反対だな、と丸わかりだから、凄くかっこ悪く見えるのだ。


もし最後まで1色にまとまらなかっとしても
「意見は出尽くしたので、結論が自分が推している案にならなかったとしても、決定には従います」
という状態になりやすい。この状態を「コンセンサス」と呼ぶ。

★決めることが滅茶苦茶多い時にも使えます
「Show the flag」の使い所は色々ある。
本当に難しいテーマを1つだけ、まる一日かけて議論する場合もある(写真の会議ではそうだった)。
業務部門、IT部門など、様々な立場の方々を集めて議論する時に使った時は、意外に「立場や利害を超え、本当にどうするのがプロジェクト全体のためなのか」を腹を割って議論する事ができた。

ちなみに、僕がこの作戦を初めて実戦投入したのは7,8年前のこと。自分の会社の人材育成方針を1時間の枠で議論しなければならなかった時だ。
変えるべき方針や新しい施策の是非など、様々な切り口の意思決定事項が20個もあった。1テーマあたり、たったの3分!
苦肉の策で編み出した方法が、今日紹介したShow the flagだ。
この方法だと、意見が揃えば10秒で終わる。意見が食い違った時だけ、議論すればよいので、結局議論のスピード化にも有効なのだ。



この方法、本当に強力だと思うのだが、あまり真似をする人がいない。
是非やってみて下さい。

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