議論の途中で意見を変えるという愉悦、あるいは議論で生み出すものとは何か?
★「あ、そうかもしれませんね」
プロジェクトでの検討会議が終わった後、お客さんや最近入社した同僚からよく言われることがある。
「白川さんは議論の途中で意見を変えるんですね?こだわりってものはないんですか?」
単純に驚かれる場合もあるし、「落とし所の許容範囲が広い」と褒めて?頂くこともある。
持論を変えるのって、そんなに変ですかね?
他のコンサルティング会社から転職してきた同僚には「あり得ない」と言われた。彼が元いた会社では、
・お客さんと話す前に、コンサルタントが落とし所をガッチリ決めている
・会議はお客さんとのバトルの場
・自分が予定していた落とし所に落とせなかったら、コンサルタントの「負け」
・落とし所に落とせたら「勝ち」
という考えが根強かったという。
別の会社から転職してきた同僚もほぼ同じ事を言っていたので、よくある考え方なのだろう。
さらに、これはコンサルタントに限ったことではないと思う。
お客さん同士が議論している時だって、元々の主張から乗り換える姿はあまり見かけない。もちろん社内の力関係(上司部下とか、組織間の力学など)で「しぶしぶ」持論を引っ込めるケースはあるが、「そっちの方がいいネ!」となることはまれなのではないだろうか。
TVの討論番組はさらにそれが顕著だ。持論を言い合ってはいるが、相手と自分の考えを混ぜたり、相手の意見を聞いて自分の考えを転換する様子は見たことがない。
(正確には、演出というか露骨なヤラセとしてやっているのを一度、見たことがある)
うーんその辺、僕とは180度違いますねぇ。
僕らのチームだってもちろん、会議の前にはそのテーマについてどうあるべきかを調査をしたり、何パターンもシミュレーションする。そして自分たちなりの結論を持って臨む。そして議論中に、なぜその案が良いと思うかについて、キチンと説明をする。
でもお客さんの主張に説得力があったり、議論している間にもっと良さそうな案がでてきたら、臆面もなく飛びつくことにしている。自分の元々の意見が通らなかったからといって、特に敗北感もないし、コンサルタントとして価値を出していないとも思わない。むしろ、自分の意見に固執するのは格好悪い。
★議論は何のために?
議論から生まれるものって何だろうか?
「議論」と言いつつ実は単なる一方的な説得で、相手が承諾してくれればそれでよし、というケースもある。
「議論」と言いつつ実は単なる「既成事実作り」がねらいで、とりあえず形だけ伝達しときますよ、というケースもある。
ディベートの様に、自分とは違う意見の人に対して「勝利」することが目的のケースもある。
しかし議論から生み出される一番大事なものは、
「そこで議論を交わさなければ生まれることのなかった新しいアイディア」
だと思う。
僕が議論の途中でしばしば意見を変えるのは、議論の前には知らなかった情報が、議論の中でお客さんからもたらされるからだ。
お客さんの方が業務の細部に詳しいのだから、そういうことはもちろん良くある。
議論の前に考えていた時には考慮しなかった新情報によって、最適だと思っていた「解」が変わることはあっていいはずだ。
AさんとBさんが話すことで、議論の前にAさんとBさんがそれぞれ考えていた案とは別の、第3の案がでてきたら、それこそが「知的生産」という感じがする。そういう議論を毎回したい。残念ながら、いつもできるとは限らないから、できた時はとても嬉しい。
それに、そもそも当初の自分の意見に固執する理由が全く見あたらない。
お客さんだって自分の意見に固執するコンサルタントよりは、そのときに得られる全ての情報を考慮に入れた上で、最善な施策をとことん考えるコンサルタントと一緒に働きたいと思ってくださるものだ。
なにもコンサルタントという職業だけの話はしていないつもりだ。
あなたは部下と議論をしている中で、意見を変えたことがあるだろうか?
本やWeb記事を読む前と読んだ後で、あるテーマについての考えを変えたことがあるだろうか。例えばTPP参加や原発の是非について。例えばかけ算で式を書く順番が逆だと×をつけるべきかについて。
もしほとんど意見を変えた経験を思い出せないならば、それは「そこで議論しなかったら決して出てこなかったような、新しいアイディアを生み出す」という愉悦を逃してしまっているのかもしれない。まさにそれこそが議論をする意味であり、楽しさなのにも関わらず。
まとめ
議論でアイディアを生み出そう。それができているかは「議論の途中で意見を変えることがあるか?」である程度チェックできる。
今日はここまで。
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