日本のAI利用率は相変わらず低い ~鍵を握るのは従業員教育
ボストンコンサルティンググループ(BCG)が、職場におけるAI活用に関する意識調査に基づくレポートを発表しました。これに類する調査はいろいろあって、調査時期や対象、切り口によってわりとバラバラな結果が出がちなのですが、いろいろ見ていると大きな傾向のようなものはあります。また、その調査独自の切り口というのもあって、その辺を見ているのは面白いですね。
リリースには、「日本における日常的な利用率、AIエージェントの導入率はともに世界平均を下回る」とありますが、これはだいたいどこの調査でも同じで、日本は導入率において海外に後れをとっているというのは間違いなさそうです。
ただ、この調査では「日常的にAIを使う人の割合」で、世界平均72%に対して日本の平均が51%なのですが、アメリカが64%だったり英国、イタリア、ドイツ、フランスが64-68%と平均を下回っており、これが意外でした。インドや中東諸国などのグローバルさ椅子の割合が87-92%と突出して高くなっています。
「AI利用率の高い国は失職への恐れも強い傾向がある」という結果も面白いですね。不安の裏返しとして利用率が高まるのでしょうか。この中では、日本は利用率が低いくせに恐れは強い、という結果になっています。
BCGはAIの活用を促進する方法として、以下の3つを挙げています。
- 十分なトレーニングの提供
- 適切なAIツールの選定
- 経営リーダーの明確な支援
この調査の独自性としては、この「トレーニング」についてだと思います。日本語のリリースは含まれていないのですが、リリースの元ネタになったと思われる
という資料にはもう少し細かい結果が載っており、その25ページに
When employees are more familiar with AI agents, they see them as a valuable tool rather than a threat(従業員がAIエージェントのことをよりよく知れば、AIエージェントを脅威ではなく価値あるツールとして考える)
という結果が載っています。AIエージェントについて限定的な知識しか持たない従業員がAIエージェントを価値あるツーツールと考えるのは25%ですが、AIエージェントについて詳しく知った後は71%に跳ね上がるということです。同様に、AIエージェントを脅威と感が得る割合は、16%から2%に激減します。
つまり、AIの活用を阻んでいるのは「無知」であり「未知のものへの恐れ」なのではないでしょうか。生成AIは非常に有用なツールですが、聴き方(プロンプト)や使い方によって出てくる結果が大きく違うことも事実で、そこにはある程度のノウハウが必要です。劇的な進化を続けており、キャッチアップが難しいという側面もあるでしょう。しかし、乗り越えてしまえば、それは驚くほど低いハードルだった、ということもあるのではないでしょうか。
英文資料の最後のページには、リーダーへの提言として4つ挙げられていますが、そのうちの2つが
- Stop underestimating the importance of training.(トレーニングの重要性を過小評価しない)
- Invest in your people to reshape workflows and unlock AI's value. (AIの価値を引き出すために人材に投資する)
と、教育に関連するものです。日本語のリリースではあまり強調されていませんが、これは日本においても今後AI活用を考えて行く上で重要なポイントではないでしょうか。