子供たちが使う「学習者用デジタル教科書」の機能とは
当「教育ICT研究室」では、教育現場でご活動なさっているみなさまに役立つ情報を提供したいという想いがあり、理科を担当されている望月陽一郎先生(中学校教諭)に「主体的・対話的で深い学び」を実現するための取り組みを取材しています。
いよいよ6月になりました。だんだん蒸し暑くなっている中、小・中・高等学校では運動会(体育大会)の準備でお忙しいのではないかと思います。今回(第22回目)は教育ICTの原点に立ち返り、
- 学習者用デジタル教科書にあるとよい機能
- 学習者用デジタル教科書に必要な機能
を中心に伺ってみたいと思います。
【望月陽一郎 先生・略歴】
大分市 中学校教諭(理科担当)。大分県教育センタ- 情報教育推進担当主事、指導主事、大分県主幹等を経て、現職。https://www.facebook.com/yoichiro.mochizuki/aboutを参照。
●英語教室(English Class)の補足について
-前回の英語教室については全国的に反響がありました。
【参考】
▼英語教室(English Classroom)の設置とICT活用
http://blogs.itmedia.co.jp/
望月先生:英語教室の掲示物(
教室既設のスクリーンに提示しやすくする(
-なるほど。英語教室の環境整備が進むと、
望月先生:また、先日のインタビュー記事「
▼CONTET 教育情報共有ポータルサイト(
https://www.contet.nier.go.jp/
-望月先生、補足とまとめをありがとうございます。CONTET(
●学習者用デジタル教科書とは
-さて、今回のメインテーマである「
望月先生:まず、
・指導者用デジタル教科書・・・提示用の「デジタル教材」。
必要なもの・・・デジタル教科書のライセンスやデータ
インストールするためのPCやタブレット
大型テレビやプロジェクター
(クラウド型であれば、有線・
・学習者用デジタル教科書・・・子供たちが「教科書」
必要なもの・・・デジタル教科書のライセンスやデータ
インストールするためのPCやタブレット
(クラウド型であれば、有線・
これまでは、学校ごと・自治体ごとに「指導者用デジタル教科書」
「学習者用デジタル教科書」を使うには、
-確かにこの違いを踏まえてから話を始めないといけませんね。
●紙の教科書の使い方からデジタル教科書を考える
望月先生:デジタル教科書について考えるには、
・
・・・子供たちは自分の紙の教科書にチェックを入れている。
・・・ところが、「どのページにチェックを入れたのか」
子供が少数見られる。
そこで今年度当初から始めてみたのが、「付箋」
・「付箋ポートフォリオ」・・・
・・・どこにチェックしているかわかるようにしたいとき付箋をつける。
最初は私が付箋を配布していましたが、最近では「付箋配ります」
「紙の教科書の使い方」で有効であれば、
-付箋はアナログ(物理的に存在する紙の付箋)だったのですね。
望月先生:リフレクションシートの感想からは、
- もう少し太いほうがよい(細めの付箋なので)。
書き込みもできるから。 - もっと別な色があるとよい。
- かわいい付箋がよい。やる気が出そう。
- 紙の付箋よりプラスチックの付箋がよい。
紙だとちぎれてわからなくなることがあるから。
などがあり、子供たちがいろいろなアイデアを出してくれました。
授業の様子を整理すると、
- 教科書画像を拡大して大切なところを示す。
(ポイント1:子供たちの手元にあるものを示すとよい) - 板書はまとめ・構造化するところだけにする。
(ポイント2:考える時間の確保ができる) - 教科書のどこにチェックしたか、付箋をつけさせる。
(ポイント3:付箋を自分でつけることで、見直しできるようになる)
提示(デジタル)、チェック(アナログ)、付箋(アナログ)というハイブリッド活用です。こうして見ていくと、単に「動画を組み込める」とか、「意見を共有できる」とか従来から言われているいかにもデジタルという機能でなく、子供たちが「自分で教科書を活用できる」機能を学習者用デジタル教科書に装備できると思います。
子供たちが使いやすい教科書の使い方から考えた「学習者用デジタル教科書」に必要な機能
・先生が提示するものと自分が持っている教科書画面が「同じ」であること。
・大切なところに「マーキング(線を引いたり、囲んだり)」できること。
・どのページに大切なことを書き込んだか、「付箋をつける」ことができること。
・・・いろいろな色、付箋に書き込み、かわいいキャラクター
これらがあると、紙の教科書と同じように使える「学習者用デジタル教科書」になるのではないかと思うのです。
-追加の解説をありがとうございます。とても助かります。以前、望月先生にお話を伺いました「教育現場における『提示の工夫』」「板書・教材提示のバランス」(リンク参照)とも関連する内容ですね。
---以下以前の記事より(抜粋と望月先生の補足修正)
-iPadを使って、どんなものを見せているのか、教えていただけますか?
望月先生:特別なデジタル教材は使っていませんし、作っていないのです。これがポイ
ントですね。ICTを活用するのに時間がかかるという誤解を受けやすいのは「デジタ
ル教材の作成は大変」というところから来ていることが多いのです。
私は、教科書・ワークシートの拡大(ハンディスキャナでなぞったりそのまま撮影
したりした画像)を主に使っています。以前紹介したEpson iProjection(現在はPanas
onic wirelessPJ) というアプリで画像さえあれば書き込みができますから。その場で
撮影してもすぐ使えます。
なぜ教科書の画像を使うかというと、子供たちは現在タブレットやデジタル教科書
を持っていないので、「特別な教材を準備」するよりも、子供たちの手元にあるものを
大きく映して教材として使う方がとてもよいようです。授業のリフレクション(振り返
り)でもよくこのことを書いてくれますね。
-なるほど。「子供たちの手元にあるものを大きく映して教材として使う」のが、子供
たちにとってよい理由がわかりました。時間をかけて細かく作られたデジタル教科書や
アプリ、動画などがよいと思っていました。
望月先生:動画は教科書にはないものですし、べつに映して見せた方がよいと思います
よ。
※以上、http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2015/01/post.html を補足修正
補足いただき、ありがとうございます。
【子供たちの感想(多い順)】
・教科書を大きく映して、大切なところを示してくれわかりやすかった。【教科書】
・教科書をズームしてくれたのでわかりやすかった。【拡大】
・ 印をつけてくれたりしたことで、後からでも振り返りやすかった。【振り返り】
・ただ言葉で聴くだけではわかりにくいので、画面があってよかった。【理解】
・理科室の後ろからでも見やすかった。【見やすさ】
・図形などで説明してくれたのがよかった。【図示】
・画面に集中できた。【集中】
・短時間で説明してくれたのがよかった。【効率化】
・実験の説明のとき、道具の写真に直接書き込んで説明してもらえるのがよかった。【
説明】
・教科書以外の資料も見やすかった。【資料】
・その場で写真を撮って見せてくれたのがわかりやすかった。【撮影】
・教科書・ノートに記録しやすかった。【記録】
・苦手なグラフが、画面だとわかりやすかった。【グラフ】
・オシロスコープの大画面がわかりやすかった。(アプリ)【表示】
・前で先生がやっていること(実験)が見やすかった。【距離】
・画面が明るく見やすかった。【見やすさ】
・いつも出してくれている大きな時計(アナログ)が便利だった。【時間】
・授業がスムーズに進んだ。【スムーズ】
※以上、http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2017/03/presenting.html より引用。
-実際に使う子供たちの活動から、「紙の教科書の使い方、
●おわりに
今回は、前回の「英語教室(English Classroom)」についての補足と「デジタル教科書にあるとよい機能」についてのお話を伺いました。
デジタル教科書が導入され始めた当初は、
5月から6月は体育大会が開催される学校が多いのではないかと思
●参考記事
・先導先生 - DiTT(デジタル教科書教材協議会)
※望月先生の45の取組みが紹介されています。
・教育情報共有ポータルサイト
※[片岡による補足] Contet(コンテット/教育情報共有ポータルサイト)では、幼稚園から高等学校・特別支援教育に加えて、キャリア教育や学校経営・教員の資質の向上まで幅広い情報が公開されています。
●まとめ記事
今までに取材した「授業でのICT活用のポイント」「学校でICT機器を活用する時のポイント」「教材作成時に気をつけたい著作権の問題」などについては、以下の記事にポイントをまとめました。ぜひご参考にされてくださいね。
- 授業に役立つICT活用術 ‐望月陽一郎先生インタビュー まとめ編‐
- 授業に役立つタブレット活用術 ‐望月陽一郎先生のインタビュー まとめ編‐
- アクティブ・ラーニングに近づくための授業術 ‐望月陽一郎先生のインタビュー まとめ編‐
※インタビューの第1回目から15回目をまとめています。
第16回~
▼アクティブ・ラーニング(子供たちが学びに向かう姿)
https://blogsmt.itmedia.co.jp/
▼アクティブ・ラーニング(子供たちが学びに向かう姿)
https://blogsmt.itmedia.co.jp/
▼アクティブ・ラーニング(子供たちが学びに向かう姿)
http://blogs.itmedia.co.jp/
▼リフレクションシートから見る「主体的・対話的で深い学び(
http://blogs.itmedia.co.jp/
▼「主体的・対話的で深い学び」を促すための「板書・
http://blogs.itmedia.co.jp/
▼英語教室(English Classroom)の設置とICT活用:教育ICT研究室
http://blogs.itmedia.co.jp/