敵は社内にあり!第4回:表に出た抵抗に対処する~2つのズレを解消せよ~
抵抗勢力との向き合い方シリーズ。第4回目は「表に出た抵抗に対処する」について解説したい。
「表に出た抵抗」は批判がハッキリ見えているだけに対応を誤ると致命傷になる。対応を間違えると人間関係までこじれてしまう・・・。さてどう対応すべきか?
表に出た抵抗は"2段階"で対応する
あからさまに抵抗されているので、人間心理としてはとにかく早く対応してしまいたくなる。だが、焦ってはいけない。2段階で土台を固めながら解消していく必要がある。
1段階目:「指摘・不満を"明らかに"する」
まっさきにやるべきは、指摘不満を"明らかに"することだ。
明らかにする?ハッキリ批判されているのだから、既に明らかになっているのでは?と思われた方もいるかもしれない。
でも、"ハッキリ批判"されているからと言って、"指摘が明らか"になっているとは限らない。
・・・どういうことなのか?
1つの事例を紹介したい。
~~怒涛の指摘~~~~~~~~~~
3年ほど前に支援したあるプロジェクトで、システム導入を検討していた時のことだ。
システム導入後の新しい業務プロセスを設計し、現場のキーマンに見てもらった。業務が良くなるか、詰めが甘い部分、無理がある部分や、逆に負荷が高くなる部分はないかをチェックしてもらうのが目的だった。
その時の会話がこんな感じだ。
私:「こんな風に将来業務を設計しました。まだ粗い状態なのですが、懸念点などフィードバックをいただけないでしょうか。」
と説明すると、私が言い終わるか終わらないうちにキーマンが畳み掛けてきた。
キーマン「いやー。○○も駄目だし、△△も考慮してないでしょ?××はどうなっているの?そもそも□□のリスクを見込んでいるのかな?そこまで考えてくれないと現場としてもちょっとねぇ。そんな状況だと、このプロジェクトは厳しいと言わざるを得ないな。」
私:「うっ・・・」
何かを変えようというプロジェクトではこういうことが日常的に起こる。こうなると、ついこう答えたくなる。
「いやいや、考慮してますよ!リスクについてはですね・・・・」
これはNGなのだ。指摘不満を明らかにせず、逐次反論して押し通そうとする動きと言っていい。
まずやるべきは「洗いざらい指摘不満を書き出す」ことだ。この時はこんな風に対応した。
~~きちんと書き出す~~~~~~~~~~~~
私「なるほど、沢山ご意見ありがとうございます!ちゃんと整理したいんですが、書き出していいですか?」
そんな風に切り替えして、◯◯も、△△も、××もアレもコレもダメだ!と言われたものを一つずつ書き出していく。
【書き出した指摘・不満】私「これで今の懸念は全部洗い出されていますかね?」
キーマン「そうだね。だいたい出ているよ。」
私「多少重複もありそうですね」
キーマン「色々言ったけど、1番目と3番目は同じ内容だね。まとめていいよ。5番目は言ってみたものの大した問題じゃないから消してもらっていいや。」
私「わかりました。1番目と2番目、4番目がちゃんとクリアになればスッキリしますか?」
キーマン「そうだと思うよ」
私「では1番からなのですが、・・・・」
こんな風に書き出してみると、実は同じことを違う言葉で話していたり、批判ではなく単に質問だったものが整理される。特に、感情的になっていると話している本人も整理がついていないことが多い。
さらに、書き出すことで批判を受け止めたことをアピールできるのもメリットだ。「あなたの意見、しっかり受け止めましたよ」と示さないと、ちゃんと対応してくれるのか不安になるものだ。だから、受け止めた事を示さないと何度も何度も批判されることになる。
しっかり書き出しておけば、「あ、こないだのご指摘ですよね。ここに書き留めてありますよ」と言える。
これが"明らかにする"と言うことだ。ここまでやってるケースはほとんど見かけないが、是非やって欲しい。
2段階目:「指摘・不満に"対応"する」
指摘や不満が明らかになったら次は対応だ。だが、闇雲に対応する前に批判の根っこを見極めておくといい。
そもそも、なぜ批判が起こるのか?批判は大きく分けて2つの不一致によってもたらされる。
それは「目指す姿の不一致」と「進め方の不一致」だ。どちらの不一致が根っこにあるのかによって対応方法が異なる。1つずつ見ていこう。
【目指す姿の不一致を解消する】
例えばこんなコメントを見つけたら目指す姿が合っていないと考えていい。
【目指す姿が一致していない時に現れる言動】
「そんなことよりも、現業を回す方が大事なんだけどなぁ」
「そんなに時間をかけてやるべきことかな?」
「俺の部署の負荷が上がるんじゃない?」
「この取り組みは総務部の所管でしょ?俺たち関係ないよ」
こうした発言の裏には、「変革よりも現状の業務を回す方が大事、なんでワザワザ大変な事をやらなければならないのか理解できない」という心理が見え隠れする。なぜこうなるのかと言うと、実はそもそも課題認識がズレているとこうなる。
問題だと思っていることがズレていたら、当然目指す姿もズレる。
例えば、「見積書を作るのに1週間掛かる」という事実を「他社とのスピード競争に負けてしまい失注につながっているから問題だ」と考える人Aさんもいれば、「1週間程度掛かるのは問題にならない、むしろ精度の高い情報を出すほうが信頼を得られるので良い」と捉えるBさんもいる。
こうなると、Aさんが「作成期間を3日に縮めよう!」と言っても、問題視してないBさんからすると言っていることが全然理解できない。
だから課題認識を合わせることが目指す姿を一致させる近道になるのだ。ここが合わなければやりたい事は絶対に合わない。ではどうして課題認識がズレてしまうのだろうか?
それは以下の3つの前提がズレる事で起こる。
① 見ているFACTがズレる
② 見ている範囲がズレる
③ 見ている時間軸がズレる
3つの前提が合わせられれば、課題認識は揃ってくる。・・・1つずつ前提を一致させる方法を解説したいが、長くなってしまうので、続きは書籍で・・・。
【進め方の不一致を解消する】
課題意識が一致して、目指す姿も一致したとするなら、残る問題は「進め方が気に入らない」というケースである。これは案外多い。以下のような話が出てくるなら進め方が合っていないと思っていい。
【進め方が一致していない時に現れる言動】
「現状調査なんて不要じゃないの?」
「人事部に話を聞かないのはなんでだ?」
「目指す姿から議論すべきだろう?」
「話の筋が違う」
進め方が一致していない時の対応策は割とシンプルだ。基本は極力相手の意見に乗っかる、乗っかるのが難しければ、一緒に進め方を練り直すこと。
例えば「人事部に話を聞いておくべきだ」といわれたら、相手の意見に乗っかって人事部へのヒアリングを組み込んでしまうのが理想だ。否定したり説得したりしても、意見が採用されなかったら相手はきっと根に持つことになる。後から「やっぱり人事に聞いておいた方が良かったじゃないか!」と言われてはかなわない。
とは言え、到底乗っかれない意見もあるだろう。その場合は、「それも一理ありますね。でもxxの事情があって・・・難しいかもしれません。どうしたらいいか、一緒に進め方を考えてもらえませんか?」と巻き込んでしまえばいい。
こんな風に、「表に出た抵抗」には慎重に対応しないといけない。対応の仕方を間違えると取り返しのつかないことになるだろう。