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敵は社内にあり!第6回: 誰を巻き込みむべきか~チーム編成の極意~

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抵抗勢力との向き合い方シリーズ。第6回目は「チーム編成の極意」について解説したい。

1.「抵抗勢力との向き合い方」 ~予告編~

2.抵抗とは何か? ~抵抗は悪ではない。むしろ歓迎せよ~

3.隠れた抵抗を見逃すな ~隠れた抵抗こそすべてのカギ~

4.表に出た抵抗に対処する ~2つのズレを解消せよ~

5.頑固な抵抗に対処する ~7つの常套手段を総動員~

6.誰を巻き込みむべきか ~チーム編成の極意~

7.強い変革チームを立ち上げる ~対処療法ではなく、根治治療で抵抗と戦う~

「変革プロジェクトを立ち上げたいが、チームメンバーをどうやって選んだらいいのか?」こんな質問をよくいただく。私達コンサルタントが変革プロジェクトを支援する時、最初にするお手伝いすることの1つだ。

難しいプロジェクトをやりきれるチーム、抵抗に強いチームを作るにはどんなことに気をつけてメンバーを集めたらいいのだろうか?

今回は、チームの作り方を解説する。まずは「チームの構成」について。どんなメンバーでプロジェクトチームを構成するのがいいのだろうか?

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チームにどんな人を加えるか?

①抵抗勢力候補など、自分と違うタイプを集める

変革を成し遂げるまでには色々なことが起きる。関係者にも色々な人がいる。だからコアメンバーのスタイルが一本槍だと、難所を突破できなくなる。

真にチームワークにすぐれた組織では

・同じ穴のムジナではなく、自分にないモノを持った人を集める
・他のメンバーの色に応じて、自分が演じる役割を微調整する(バランス感覚)

という力学が必ず働いている。

例えばリーダーがアクセル役で、サブリーダーがブレーキ/ハンドル役。
例えばリーダーが強行突破型で、サブリーダーが根回し調整型。
例えばリーダーがアイディアマンタイプで、それを支えるプロジェクトオーナーが現実的に考えぬくタイプ。

要するにバランスが重要なのだ。

変革の方向性によっては、反対しそうな人や組織をある程度予想できる。そういった場合に取りうる選択肢は二つ。「プロジェクトチーム vs 抵抗勢力」という構図をあえて作り、正面から戦う方法と、プロジェクトチームの内部に抵抗勢力になりそうな方々を取り込んでしまう方法だ。

通常は、「プロジェクト計画ができあがり、いざ実装する段になってから反対されるよりは、計画立案に参加してもらった方が建設的」という理由から、後者の取り込み作戦をとる。

だれでも、計画が一旦でき上がってから「これでやりますので従ってください」と言われても、なかなかYesとは言えない。逆に、自分が参加して一緒に練り上げた計画には愛着もあるし、一生懸命実現しようとする。それに、こちらで勝手に「抵抗勢力」などとレッテルを貼らずに、フラットに議論してみると、変革をより良くするためのアイディアの宝庫である事も少なくないのだ。

過去のプロジェクトで私達のクライアントのリーダーがチーム作りについてこんな話をしてくれたことがある。リーダーの話をそのまま記載しよう。

「ウマが合わないからこそ、彼をチームに引き入れたんです。彼の上司をどう口説くか、はずいぶん悩ましかったのですが。

 ・そもそも、業務改革をやってみたいと思っている人
 ・ポストを問わず、言うべきことを言える人
 ・それが「良く変えたい」という前向きさから出ている人

こういう人が、プロジェクトには絶対必要だと思います。彼みたいな人が、自分の立場から「正しい反論」を言ってくれないと、変革の計画が脆弱になるんですよ。計画を練っている途中ではなく、手遅れのタイミングで「正しい反論」を出されると、プロジェクトにとって致命傷になってしまう。そうならないために、あえて彼みたいなストレートな物言いをする人をコアメンバーに入れ、きちんと議論を戦わせる必要があった。実際にそうだったでしょう?彼みたいな人をどうやって探してくるか。私は昔から「廊下トンビ」と言われているんですよ。いつも自分の席にいない。会社中を飛び歩いているから。
用事があるとき、内線電話やメールは基本的に使いません。必ずその人のところに出かける。そして用事がすんだ後も、「こないだの方針説明会、どう思った?」「○○の業務は変えたいと思っているんだよね」と、本題と違う話をしばらくしてくる。そういう話をしていると、「こちらを向いて、議論に乗ってくれる人はだれか」「やりたいことを腹に持っている人はだれか」が分かってくる。
そうやって目星がついてから動くのです。自分の上司に動いてもらう場合もあるし、相手の上司を動かす場合もある。変革を成功させるために、当たり前のことをやっているだけだと思いますよ。」

この話を聞いた時に、身震いした。自分とウマが合わないメンバーをワザワザ骨を折って探し出し、チームに引き入れていた。しかもそれを"当たり前のこと"だと言うのだから。

②ベテランと若手のバランス

業務を大幅に効率化する。新しいシステムを組み立てる。そのために「ゼロベースで考えよう」というスローガンを掲げることはよくある。だが、現在の業務について何も知らなくてもいい訳ではない。現状を否定し、乗り越えるためには、現状を知らなければ話にならないのだ。だから、改革の対象業務についての細部や過去の経緯に至るまでよく知っている社員(=生き字引)は変革プロジェクトにとって、貴重な存在だ。
でも、こうしたベテランばかりだと辛い局面も多い。ベテランは往々にして「現状の仕事のやり方がベスト」「こういうやり方をやっているのには、君たちには分からない深い事情があるのだよ、若いの」となりがちだ。それまで自分がやってきたことなのだから、ある程度は当然である。

こうした方とは「なぜ変わらなければならないか?」をじっくり話し合い、なんでも現状踏襲ではなく、変えるべきことは変える、というスタンスに立ってもらう必要がある。この方が変革にとって力強い味方になってくれるのか、変化を嫌う抵抗勢力になってしまうのかは、紙一重だ。

一方、業務をよく知らない若手社員は業務改革プロジェクトからは遠ざけられがちだが、実はプロジェクトには欠かせない存在だ。
一般的な会社では人材は常に不足している。だから変革に必要な人材は、プロジェクトを進めながら人を育てることになる。人材の地産地消である。人選についてアドバイスを求められた時には「今現在はあまり知識を持っていなくても構いません。ガッツがあって前向きな若手を、ぜひ何人か参加させてください。僕らも鍛えますから、プロジェクトが終わる頃にはエースに仕立てますよ」ということを強調する。
実際に、あるプロジェクトでは若手メンバーが大きく活躍した。それまで業務改革をすすめていたメンバーを外し、何も知らない若手メンバーを入れたのだ。「プロジェクトのコアメンバーは白紙の方が良い。業務知識は他の社員に聞けば補えるが、ゼロベースで新しいことを考えるには、前提や制約で頭がいっぱいでない方が、むしろいい。それに彼女は伸びる!」というクライアントリーダーの判断だった。
結果的には、周りも本人もビックリするくらい大化けした。彼女なりの不思議なリーダーシップがあって、他のメンバーも彼女に引きづられてどんどんプロジェクトに参加するようにもなった。彼女がいなければ成功はありえなかったと思う。

どうやって人を集めるか?

次は、チームの集め方を見てみよう。上記で解説したようなメンバーをどう選んでくるのがいいのだろうか?これには大きく3つの方法がある。

①組織図から選ぶ

「経理部門から一人は出してもらう必要があるので......」などと、既存の組織図をにらみながら人集めをするのは、よくあるパターンなのだが、実は良い方法とは言えない。

部署にこだわり過ぎると、その部署の利益代表的な位置づけになってしまうことが多いからだ。「経理としては、この案だけには賛成できません!」みたいな感じだ。立ち上げ期に参加してもらう同志として必要なのは、経理部としての意見じゃなくて、全社最適の立場で一緒に考えてくれるような人だ。

そしてプロジェクトワークにはかなり、向き不向きがある。「適切な部署から来た、プロジェクトワークに不向きな人」と「プロジェクトに直接関係がない部署出身だが、プロジェクトワークに向いた人」とでは、半年、一年単位で考えると、圧倒的に後者に参加してもらった方が良い。とは言え、経理のプロジェクトで経理部を外すわけにはいかない。

そう考えていくと、プロジェクトメンバーを集める一番いい方法は、もともと問題意識を持って語り合っていた同志を必要な部門から集めることだろう。これができれば主体性のないメンバーが集ってくることを避けられる。

(イラストの「オズの魔法使い型」)。

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②一本釣りで選ぶ

次の方法は、一本釣りである。変革について一緒に語り合いたい人、これから伸びそうな人、プロジェクトワークに向いた人、一癖ある人など、見どころのある人材を会社全体から探し出し、一人ずつ口説いていく方法だ(イラストの「桃太郎型」)。

もちろんそういった優秀な人材は忙しい。どんな部署にいたとしても、大事な仕事を任されているだろう。最初は兼任で意見だけもらうことにしたり、役員を通じて相手の上司に話をつける必要がある。

先にも紹介した通り、成功するプロジェクトのリーダーは「これは」と思った人をプロジェクトに引きこむために、妥協せずあらゆる手段を使っている。

③公募で選ぶ

だったら、こちらから一本釣りするのではなく、やる気がありそうな人を公募すればいいではないか、という考え方もある。確かにそうだ。ところが、これには大きな落とし穴がある。

「20人のメンバーを公募して業務革新活動を始めたのですが、成果を出す前にダレてきてしまいました。」クライアントからこんな相談をもらったことがある。公募すると、たいてい途中脱落者が出てチームがダレてしまう。

これを防ぐためには、脱落者が出ることを覚悟し、それでも前に進むことをあらかじめ宣言するのがいい。

確かにプロジェクトではやる気が大事なのだが、やる気の持続性というのは人によってかなり差があるものだ。熱しやすく冷めやすい人もいれば、逆の人もいる。公募制で熱しやすく冷めやすい人を排除するのは難しいし、そういう人は最初に盛り上げてくれる、貴重なメンバーでもある。ただ、冷めてしまった人が早々に脱落していくと、残った人たちがつられてやる気を下げてしまう。かと言って無理やり引き止めるのは不毛だ。

やる気や仕事の優先順位はごく個人的なものなのだから、他人からはコントロールしにくいものだからだ。たとえ脱落者が出ても、それは現在歩んでいる道の困難さを確認し合うだけのことで、残った人たちのモチベーションは下がらない。



チームの作り方について解説してきたが、実際は何かと制約が多い。「このメンバーでやれ」と所与の条件として与えられるケースもある。この場合チームビルディングを入念にしないと先行き成り立たないのだが、これについては次回解説することにする。

少しでもチームメンバーを選ぶ余地があるなら、今日お伝えした事に注意して、チーム作りを進めて欲しい。

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