オルタナティブ・ブログ > 『ビジネス2.0』の視点 >

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

ガーディアンエージェントが2030年までにエージェンティックAI市場の10〜15%を占める

»

2025年6月11日、米Gartnerはメリーランド州ナショナルハーバーで開催したイベントで、「ガーディアンエージェント」と呼ばれるAI安全管理技術が2030年までにエージェンティックAI市場の10〜15%を占めると発表しました。生成AIやマルチエージェントシステムが急速に業務へ浸透する一方で、AIが誤った判断を下したり攻撃者に悪用されたりするリスクが拡大しています。こうした状況下で、AIを"使う"側だけでなく"守る"側の技術革新が求められています。

Gartner Predicts that Guardian Agents will Capture 10-15% of the Agentic AI Market by 2030

ガーディアンエージェントとは何か

ガーディアンエージェントは、AIが示す出力や行動を監視・制御し、信頼性と安全性を担保するAIベースの仕組みです。利用者を支援するアシスタントとしてコンテンツのレビューや分析を行うと同時に、自律的に行動計画を立案・実行し、必要に応じてAIの処理を停止または修正する能力を備えています。いわば「AIの番人」として、人とAIの間に立ち、システム全体を守る役割を果たします。

導入が加速する背景――リスクの質と量が拡大

Gartnerが2025年5月19日に実施したウェビナーポールによると、CIOやIT部門リーダーの24%がすでに複数のAIエージェントを導入しており、50%が研究・実験段階にあると回答しました。今後、本格展開を予定する企業も含めると、AIエージェントは企業活動の中枢に位置づけられることが明白です。しかし導入が進むほど、入力データの改ざんやポイズニング、クレデンシャルの乗っ取り、偽サイトとの通信による不正行為など、リスクの範囲も広がります。エージェントの行動が複雑化・高速化するため、人間による後追い監視だけでは限界が生じています。

3つの利用タイプ――レビュワー、モニター、プロテクター
Gartnerはガーディアンエージェントの用途を「レビュワー」「モニター」「プロテクター」の三つに大別しています。レビュワーはAIが生成したテキストやコードを検証し、不適切表現や誤りを検出します。モニターはエージェントが実行する一連のアクションを観察し、異常を記録して人や別のAIに通知します。プロテクターは実行時に権限を動的に調整し、危険と判断した手続きを自動で停止または修正します。これらが連携することで、AI活用のスピードを損なわずにリスクを最小化できます。

企業に求められる対応――AIガバナンスの再設計
マルチエージェントシステムが主流になるとされる2028年には、アプリケーションの70%が複数のAIを組み合わせるとGartnerは見込んでいます。企業は従来のシステム監査やセキュリティ運用を見直し、AIガバナンスを再設計する必要があります。まずはAIエージェントの権限範囲と責任分界を明確にし、ガーディアンエージェントによる自動監視を組み込む体制を整えることが重要です。また、AIが扱うデータの品質確保や、ログの長期保存ポリシーを整備することで、不測の事態が発生した際の検証や説明責任を果たしやすくなります。

今後の展望――「守り」の標準化が競争力を左右する
2030年までにガーディアンエージェントが市場の一角を担うという予測は、AI導入企業にとってリスク管理が競争力の鍵になることを示唆しています。AIの性能強化が続く限り、攻撃手法も進化し、人的対応だけでは追いつけなくなります。逆に言えば、ガーディアンエージェントを含む安全設計が標準化されれば、企業は安心してAIを拡張し、イノベーションにリソースを集中できるようになります。AIの「攻め」と「守り」を両輪で回す企業が、次世代のデジタル競争をリードすると期待されます。

スクリーンショット 2025-06-12 20.42.24.png

Comment(0)