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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2012年9月3日

2012年9月4日の投稿

2012年9月5日 »

クラウドの普及、そしてサーバ台数の増加に伴い運用が複雑なっています。そのため、複数の(マルチ)クラウドの統合的な運用管理、モニタリングによるオートスケールなどの効率的な運用、システム変更に伴う構成管理、複数のクラウドの従量課金の効率的な管理といったように、運用自動化を支援するツールや仕組みへのニーズが高まっています。

2012年8月31日にCBA(クラウドビジネスアライアンス)が主催した「「最新の基盤技術で創造するクラウドコンピューティングの未来」セミナー資料公開も参考にしつつ、オープンソースを中心としたクラウドの運用管理について解説をしていきたいと思います。

クラウドの基盤を構成するのは、IaaSレイヤにおいては、OpenStackやCloudStackに代表されるオープンソースベースのクラウド基盤ソフトウェアなどがあげられます。これらのクラウド基盤とAWSのAmazon EC2などをはじめとした複数のIaaSレイヤのクラウドによる運用管理について整理をします。

運用監視

サーバやネットワーク等の運用監視においては、オープンソースのZabbix、Nagios 、Xymonなどがあげられます。たとえば、Zabbixの場合、CloudStackの運用監視においてトラフィック量の閾値を設定し、トラフィック増にあわせてオートスケールを実行するといった使い方が増えています。

パフォーマンスモニター

パフォーマンスモニターには、オープンソースのCacti、muninなどがあります。サーバの様々なパフォーマンス状況をグラフ化するソフトで、アクセス状況にあわせて、CPUやメモリなどのスペックを見積もるのに有効です。

クラウド間連携(クラウドフェデレーション)

クラウド間連携では、オープンソースでは、Scalrがあげられます。複数の異なるクラウド環境の一元管理が可能です。また、オープンソースのApache Deltacloudは、REST APIを通じてドライバ経由でクラウドを操作するといったAPIライブラリの連携による複数の異なるクラウド環境の一元管理が可能です。有償版ではクラウド管理プラットフォームとして広く使われているRightScaleやプロビジョニングやセキュリティ管理、ファイナンス管理など、クラウドの運用管理やセキュリティガバナンス機能を提供するenStratusなどがあります。

構築自動化、運用支援ツール

Chefは、サーバの構築やシステムの運用自動化の支援ツールで、Ruby実装のオープンソースソフトウェアです。ほぼ同様の機能を持つソフトウェアとしてpuppetがあげられます。

CBAの資料「「最新の基盤技術で創造するクラウドコンピューティングの未来」には、スマートフォン向けの写真の共有アプリのInstagramの事例が紹介されています。創業時は、わずか二人と1台のサーバでサービスを開始し、2年もたたずに3000万以上のユーザを獲得、そして、フェイスブックが総額7億5000万ドルで買収計画が明らかになっています。少人数で大規模なサービスを運用するには、クラウドサービスの導入だけでなく、オープンソースの運用ツールを導入することによって、運用の自動化を実現しているためです。

Instagramは以下のような構成で構築されています。

•Ubuntu Linux 11.04 on Amazon EC2
• 3台のNginxをAmazon Elastic Load Balancerでロードバランス
• PythonのDjangoをAmazon High-CPU Extra-Largeインスタンスで稼働、25台以上
• WSGI(Web Server Gateway Interface)サーバとしてGunicornを利用
• データのほとんどはPostgreSQL
• 12台のQuadruple Extra-Large memoryインスタンスでクラスタを構成
• 別のアベイラビリティゾーンでレプリケーション
• メインフィードにはRedis。Quadruple Extra-Large Memoryインスタンスで稼働
• 100台以上のインスタンスの監視にMunin
• サービスのモニタリングにPingdom
• インシデントと通知にPagerDuty

以上のように、オープンソース系で安価に構築できる運用管理ツールが提供されており、少人数でも大規模なサービスが運用できるようになっています。しかしながら、個々のツールはそれぞれ別々に機能しているために統合的に管理するアプローチが必要となっています。今後、さらに、クラウドの普及が予想される中で、個々の技術やサービスのみらならず、全体の最適化を図るクラウドに特化した統合して運用管理を実現するソフトウェアやサービス、これらを実現するためのフローや人的な体制等が益々重要になっていくでしょう。

 

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MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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