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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

« 2009年8月17日

2009年8月18日の投稿

2009年8月19日 »

<このエントリーは私自身の持つtumblrのスペースに書いたものを加筆修正したものです>

不肖岩永、7月にも例えばこんなエントリー無線は有線とは違うということを理解しないと最後の1マイルがちょっと大変を書いていたりするのですが、最近の諸々の記事等を見るに付け、ある意味後ろ向きに見えるかもしれないけれど、とても大きな危機感を持ってしまうことがあります。通信手段は無限のリソースである論。いや、そもそも議論にすらならない論の話。

 

この話は多分死ぬまで言い続ける必要があるのだろうな。

嘗ての自分もそうだったのだけれど、とにかくIT屋の皆さんはサーバーやクライアント、プロ グラミングやOSなど入り口と出口の話ばかりして、途中で「繋ぐ何か」のことを本当に空気のように考えているフシがあります。まったく、いい加減にして欲しいと、正直思うことがあります。

 

ワタシ自身がそもそもIT屋の中では特異なネットワーク屋だったから、当時から体で判っていたのだけれど

クラウドコンピューティング?止めて欲しい、いい加減にして欲しい、と結構本気で思っている部分があります。そもそも”雲”が浮かぶのは空じゃなくて、針金と光ファイバーで出来た網の上なんですよ。でもって、雲の中にある情報処理リソースは空気を通じて使えるのではなくて、あくまでも誰かが何かの手段で繋いでいる訳です。それくらいちゃんと理解し手欲しいと本気で思います。いくらブロードバンドの 世界だからと言って、めちゃくちゃにネットワークのリソースを使うような方法を推進しないで欲しいと本気で思います。自分の敷地の中で出来ることは、無理やり外に出さずにそこで終わらせて欲しいものだと思ちゃいます。

 

クライアントサーバーコンピューティングから何から、過去の全ての素晴らしいコンセプトにとってのボトルネックは今も同じ

そう。全ては相互に繋ぐためのリソースが要求レベルよりもまったく低いパフォーマンスしか出せないこと。そりゃそうです。プロセッサーやマザーボードのバス、あるいは高速のLANと同じものをパブリックなネットワークに求めるんだから。それはお門違い。そもそもそういうシステムデザインやアプリケーションデザインをすること自体にセンスの無さをすら感じる事があります。

 

テクノロジーはそれをいずれ凌駕する?

そうでしょうね。多分そうだと思います。いろんな意味でパブリックなサービスも進化してきている訳ですから。でも、たとえばパブリックなサービスのために現在動いているネットワークインフラをIPv6に全部つくり変えるなんて、どれほどの暴挙であるか、どれほど大変なことかについて理解しなくちゃいけない。それが必要なんだから、という議論と並行して。

たとえば現在動いているネットワークのシステムやシステム資源を抱えたあなたのお客さまが、なぜ新しい技術の導入のために簡単に動けないのか?なぜ最新の技術をホイホイと導入できないのか?そういう例えなら判ると思います。それですら問題山積なはずです。でもですね、通信事業者がサービスしているネットワークを自分の責任において止めるというのは基本的に許されないんですよ。24時間動き続ける金融機関や工場の生産管理システム、あるいは警備会社などのネットワークなど、簡単に止めることの出来ないネットワークの構成をいじることってどれほど恐ろしいか、と話を置き換えると判るでしょうか?そこについてキチンと考えた提案や、今後の動向についての洞察があれば別だけれど、一般的なユーザーがそんな堅牢なネットワークを求めてもコストやら手間暇の観点から非常に難しいはずだし、現実を踏まえないまま、通信部分はどうにかなるんでしょと考えるのを止めたまま色んな夢を持たせる IT関連企業のシステム提案自体に問題がある、とすら感じることがあります。

まず、ちゃんと通信屋の話を聞きましょうよ。ちゃんと話が出来る関係を作りましょうよ。「そんなの簡単じゃないの?」なんていわずに。素直に。

 

ITとCの間に横たわる溝

でも、もちろん、そこには強烈な溝(流行で言うとキャズム?)が存在します。一言で言うと、ITと通信の両方の事がそれなりにわかっている人が余りにも少ないこと。ICTなんて表現は詭弁で、IT (Information Technology) と C (Communication) はやっぱり根本的に別の世界であり、別の人種であると認識されている気がします。事実、両方の用語でそれぞれの立場を使い分けて話を出来る人というのは非常に少ないと思います。
あ、これはワタシ自身のつたない経験に基づいた個人的な実感ですけれど。

 

ちなみに議論の立ち位置について

通信資源有限論は純粋に電気工学や無線工学に基づく話であって、ISPを含む通信事業者としての事業理論的な話ではありません。たとえば通信のために使われる色んな媒体において、どのような圧縮方式を使おうが、光は光として持った特性に基づいての挙動しかしませんし、電気は電気としての特性に基づいてしか動けませんし、無線ももちろんその特性に基づいた動きしか出来ません。これは厳然たる事実です。

とりあえず現在のワタシの仕事領域である無線の世界に話を持ってくると、電波は全ての人やモノに対して基本的に公平に振舞います。全てのシステムに対して公平に振舞います。もちろんそれを制御することはある程度は可能なのだけれど、電波が電波として持つ特性自体を変えることは出来ません。しかも、パブリックな無線のサービスにおいては、それぞれが持つ一定のサービスエリア内において、その周波数なりの特性を反映した挙動をするわけです。

これは固定系と呼ばれる光やメタル線を使ったサービスでも基本的には同様です。サービスを提供する側やサービスのためのネットワークを作る、あるいは運用する側からすると、それをいかに制御して意図したとおりに、あるいは規格として動くであろう姿の通りに動かすかが勝負。もちろんそこで事業者なりの制約や制限は出るのですけれど、それとて元々存在する電波なり電気なり光なりの特性に縛られていることに代わりはありません。

通信資源有限論、あるいはもっと広い意味でインターネット資源有限論に対して、それは事業者の理論だと反論する前に、きちんとこの部分を勉強してください、と思う。
あるいは、キチンと理解している人の話を素直に聞いてください、と思う。
そんなの、簡単に出来るんじゃないの?と切り捨てる前に。

 

ある意味暴論だけれど、とりあえずこんなもんです

そもそも・・・非常に乱暴な話なのだけれど、圧縮方式と使える帯域幅で土管と称している通信回線のベースの部分の最高速が事実上計算できることを理解したほうが良い、と思います。例えば無線の場合、多重化のための技術は実験レベルで幾つもありますが、サービスとして提供するために必要な運用技術レベルであるかどうかという話になると、実はマトモに動くものは今の技術レベルではそれほど多くはありません。

また、実験レベルでとてつもない高い周波数での帯域幅を使った最高速度競争には、技術検証という意味以外にそれほど意味はあまりありません。大抵の場合、そんな超高速を出せる帯域幅を商用には使えません。日本でも、もちろん他の国でも。これは制度上の問題以前に技術的な問題のほうがとても大きいんです。周波数割当に絡んだオークションの問題や、単一国家としての電波行政の問題以前に。

 

知らないことを知ることの大事さ

暴論に近いかもしれませんが、話はプロセッサーやチップセットの設計や動作クロック、あるいは同じ基板上のバスの動作周波数の話じゃないんです。構内に張り巡らされたプライベートなLANの話でもないんです。もっと広い範囲を飛び交う電波の話であり、キロ単位で張り巡らされている通信回線の上の話なんです。

ココが肝心。
じゃ、それに対してワタシは何が出来るのか?

いや、だから色んなところで七転八倒してるわけなのですけれど・・・ね。

bibendum_iwa

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岩永慎一

岩永慎一

外資IT、日本のIT系を経由して現在通信事業者に勤務。営業やSE、更にはコミュニケーション系を中心にありとあらゆるマーケティング関連の仕事を経験してきたが、現在は通信業界の特殊部隊として常に完全装備で課題に取り組む。

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