無線は有線とは違うということを理解しないと最後の1マイルがちょっと大変
今担当している仕事の関係で、固定系、いわゆる有線の通信回線につないで使うことを前提とした機器を無線のネットワークにつなぐテストっていうのに何度か立ち会う機会がありました。そもそもワタシ自身無線のスペシャリストであるなんて話以前に純粋に通信事業者で働いている年数なんて大したことないのですが、まあそれでもいろんな理由があってそれなりに理解できている部分があります。さらにここ数年の経験で技術的な裏付けも含めて判ってきたこともあります。それらを踏まえつつ、いろんなテストに立ち会うチャンスが頻繁にあるのですが・・・
とにかく無線って原理的に安定させることは非常に難しいんですよ
メタルでも光でも、物理的に線を通す通信はある意味楽です。もちろん外部要因は色々と作用しますが、それでも無線に比べればよほど安定しているものです。それに対して無線は・・・ 周波数にもよりますが、乱暴に話をすると、ある程度の通信容量をもったサービスに使おうとすると、外部要因に非常に弱い周波数帯使う必要があったりするので、まぁありとあらゆる事が起きます。通信速度がメガbps単位からゼロ近くまで変動することも例外ではなく、結構起きるものです。パラボラ対向で占有しているならともかく、普通のサービスであれば携帯でもなんでも変動するものです。それをまず理解する必要があります。
で、次に、そういった中でどうやってアプリケーションとして利用し続けることができるのか、といったことなどをきちんと考えてアプリケーションのデザインをしなくちゃいけないと思うんです。
なんでこんなこと言ってるかって?
いや、モバイルでもワイヤレスブロードバンドでもいいんですけど、実は今までの大抵のアプリケーションは実はセッションがつながり続けていて、かつデータが流れ続けているものというのは意外と少なかったんですよ。メールなんか基本はダウンロードしちゃえば次に送るときまでは切れててOKだし、音楽だって何だって基本は落とす瞬間とかだけつながっていればOKで、極端な話、つながり続けている必要もない。
それを考えると、メールのクライアントがWebベースですよなんてのはそもそも地下鉄でだめでしょ、という話になるので論外ですが、そこに何らかのアプリケーションを乗せていろんな業務でThin Client状態で使いましょうなんて話が出てくると、実はこのWebベースのメールクライアントと同じことになります。いや、下手するともっと凄いことになりそうで、怖いです。
クラウド云々の時に、社内外に分散したデータやトランザクションの整合性や同期の問題、だれがどこまで何のサービスレベルを保障できるのかといった問題、何かしら瑕疵が発生した場合の訴訟などの対応の問題など、現実の問題として簡単に解決できない問題が出てきつつあるわけですが、実は最後の最後、アクセスする最後の1マイル(これは慣用的にラスト・ワン・マイルとよく言うからなのですが)で別の問題が発生する、ということをまったく意識していないことによく遭遇するんです。
で、たいていの場合、この部分の話をするとやっぱり誤解されているんですね。通信は空気みたいなもんだと思っている方がやっぱり多い。もちろん、それはそれで正しいひとつの位置づけかもしれません。日本の社会において、電気、ガス、水道、通信などは本当に空気のようにそこにあって当然みたいな意識を持たれることが多いですから。
ちなみに余談ですが
スマートグリッドについて日本でも騒がれていますが、もともとこの話が出てきた米国の電力事情やら発電・送電環境のことを抜きにして日本でも同じようなことを、みたいな議論になると、まさに無線通信環境を取り巻く状況と同じ、あるいはもっと酷い事になっちゃいそうで怖いです。ま、これは門外漢ですが。