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信じたくない人が多いと思いますが、日本が他国に10年も遅れをとっているWeb技術が存在します。私はこの現象を「逆ガラパゴス現象」と呼んでいます。

私が言っているWeb技術は、欧米ではLive Chatと呼んでいます。Live ChatはWebに特化したWeb技術なので、メッセンジャーやアダルトチャットと区別するために、Webチャットと呼んだりします。Live Chatサービスを提供している代表的な企業はNASDAQ上場のLivePerson社でしょう。このLivePerson社のLive Chatについて、1999年9月3日に、下記の記事で日本に紹介されています。

第21回:顧客サポート用チャットシステム提供企業
――オンラインショッパーの強い味方:LivePerson

上記のLivePerson紹介記事が掲載された日からほぼ10年後の2009年1月26日に、日本IBMがLivePerssonを利用し始めたとニュースリリースを行いました。


2001年8月10日出版のコールセンター構築運用の専門書があります。

続『コールセンター』のすべて―コールセンターの悩みとその解決法 eCRMへの挑戦‐実践編

この本にわずかながら、下記の短文でWebチャットを紹介しています。

Webチャットとは、・・・、いわゆるテキストチャット機能を使って文字で会話するものだ。インターネットを使っても顧客とオペレータ間でリアルタイムコミュニケーションできることが特徴だ。

ホームページ上の「チャットボタン」を押すと、新たな画面が表示され、名前などの入力が要請される。続いて、質問事項などをタイプインすると、オペレータから回答が示される。こうしておしゃべりを繰り返し、顧客の要望を満足させるものだ。なれたオペレータだと、一度に5つも6つも画面を開いて同時にチャットするという。

筆者注:運用により名前などの入力を要請せず、「チャットボタン」を押すだけですぐオペレータに繋ぐように設定することができます。複数顧客とチャットする場合は、複数の画面が開かれるのではなく、1つの画面内のサブ画面で速やかにチャット相手を切り換えられるのが一般的である。

この10年間で、Live Chatは海外でどこまで普及しているか、下記のLive Chatサービスのランキングサイトを見れば想像がつくでしょう。

アメリカSony Electornicsは、今月10日にメールとチャットスペシャリストの求人広告を出しています。スペシャリストの求人ですから、新しい職種が生まれていると考えてもよいです。

中国の場合、10数社がLive Chat市場で熾烈な競争を繰り広げています。Webに特化した顧客対応チャンネルとして、Webサイトの標準機能になりつつあります。

日本に進出しているLive800は、中国で5億戸もユーザーを有するチャイナモバイルが導入しています。このチャイナモバイルですが、Live Chatを企業標準として傘下のコールセンターへの導入を義務化しています。

何故日本でLive Chatの導入が進んでいないか、とよく聞かれますが、私も答えられません。これをテーマにしたら、修士論文でも書けるかもしれません。

実際、Live Chatの導入は日本で進み始めています。それに、中小企業より、大手企業の導入が目立っています。例えば、住生活グループのトステムオンラインショップでのチャット導入が、ダイヤモンドオンラインで紹介されています。

日本のITメディアもLive Chatを注目し始めています。ITメディアの今年1月26日の記事です。

コールセンター業界専門誌のコンピューターテレフォニーは、直近の5月号の「トレンド」のコラムで企業のチャット対応のポイントを紹介しています。記事の冒頭に「最近、”再注目”といえそうな存在がWebチャットだ。米国ではすでに10年ほど前から対応する企業が多かったが、日本ではなかなか普及に至らなかった」と書いてあります。


そしてついに、ウェブ担当者や制作者、ウェブマーケター向けのウェブサイト関連の総合情報Webサイトの「Web担当者Forum」で編集長により長い文面で最近のLive Chatの導入事例が紹介されています。

「Web担当者Forum」で紹介されている企業は、このように有名な企業ばかりです。

・弥生(会計ソフト)
・SBI損保
・リクルートSUUMOのスーモカウンター
・旅行のHIS(エイチ・アイ・エス)
・ぱど(フリーペーパー、広告主向け)
・エステティックのミスパリ
・トステムビバのオンラインショップ(DIYやリフォーム)

しかし、Webサイト総数から見ると、これはほんの一握りに過ぎません。アメリカや中国に比べると、日本でのLive Chatの導入が大分遅れています。ですから、私は逆ガラパゴス現象と呼んでいます。

ガラパゴス現象は広く認識されていて、超ガラパゴス研究会も発足され、有識者が対策を講じています。しかし、逆ガラパゴス現象の存在には、まだだれも気が付いていません。

ガラパゴス現象は、事態が深刻になってから注目されるようになりましたね。事態が深刻になる前に、逆ガラパゴス現象に注目すべきです。

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chris ding

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ソフトウェアのオフショア開発ビジネスに携わりながら、インタラクティブデザイン、水平思考、ネット直販などを研究

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