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コミュニケーション・ギャップは必然 

 ミュニケーション・ギャップはなぜ起こるのでしょうか。単純かつ乱暴に言えば、情報を持っている人はそれを必要としている他人の事情に無頓着だということです。一方、情報を必要とする人は誰がその情報を持っているのか、そもそもその情報の有無と過不足を含め十分には知らない。これが、ことの本質です。伝える立場には情報が豊富にありよく理解しているのだけれども、情報の受け手は情報量も少なく理解も浅いという状態を、「情報の非対称性」といいます。これは容易に解消することはできないのです。教室における教授と学生しかり、金融商品の売り手と買い手しかりです。 

また、次のように言うこともできます。情報伝達もニュートン力学に規定されているかのように、「慣性の法則」が当てはまり、誰かが握っている情報やデータファイルに埋没した情報は、なにもしなければじっとそのまま動きません。情報を必要としている方が、その情報の存在と保持者を知っていなければ、情報の発信を要求することはできない「パラドックス」がそこにはあるということです。これは、情報が握りつぶされているといった状況です。一方、悪い情報は動き出したら止まらない。広まって欲しくない話に限って、「悪事千里を走る」なんていう言葉が昔からあります。 

 人間は特別に訓練養成されなければ、個別最適のままであって全体最適の視点を持ちにくいという問題を抱えています。さらには、必ずしも全体最適が常に善かというと、そうとも言えないということです。二刀流出なくちゃいけないんです。 

 

またそもそも、発信者から受け手に余すところなく正確に情報を手渡せるかという問題もあります。発信者がその意図を持っていたとしてもです。さらには、たとえ情報を正確無比に手渡せても、同じ「認識」になるかというとそれを安易に期待するには無理があります。同じ価値観、同様の経験、同じ問題意識でありながら、それぞれの与えられた立場によって、同じ情報から異なった意味づけがなされることはよく目にすることです。 

組織の中で、情報共有が声高に叫ばれても、なかなか実現できないということはご存じのとおりです。 

 

つまり、なにもしなければコミュニケーション・ギャップは必ずある、一見無いと見えてもあると断定判断すべきだということです。いやむしろ、原理的に無くすことはできないし、だからこそ必死になって潰していかなければいけないのです。しかし、潰しきれなければ別のアプローチが必要となります。 

したがって、情報発信のプロである広報は、上手く情報を伝えようと思ったら、深い人間理解をベースに、コミュニケーションの工夫や心理学の勉強、情報共有の仕組みインフラ作りなどに相当の努力が必要なのです。 

あたかも、安易に情報ギャップや認識ギャップが埋まるかのごとき指示やオーダーを発するマネージャーや管理者は、人間理解力が低いと言わざるを得ないのです。 

 

日本人特有のコミュニケーション・ギャップ 

 日本人社会は世界一の「ハイコンテキスト社会」です。それゆえに、コミュニケーション・ギャップが生まれやすいと言えます。日本、中国、アラブ諸国、ギリシャ、イギリス、フランス、アメリカ、北欧諸国、ドイツ、ドイツ系スイスという順番でハイコンテキスト社会からローコンテキスト社会なのそうです。

Photo

参照文献:「Beyond CultureEdward T. Hallより 

それは、飛鳥時代からの「短歌」や「あうんの呼吸」、「すり合わせエンジニアリング」などの日本人の長所の裏返しとも言えるものです。 

 日本人同士が会話する際は話の背景を同じように理解しているつもりで話しますから、言葉で事細かに言いません。「みなまで言うな!オレは勘がいい方なんだぞ!」みたいな会話はよく聞かれます。ここに齟齬ができると「空気が読めない(KY)」という宣言がなされたりもします。 

 こんな例があります。ある三人の男性の会話です。「Aさんの少し(お金)持ってる?」という問いに、「ほぼ同時に、Bさんは千円と応え、Cさんは3万円と言った」といいます。これは何か違うのでしょうか? これは、「少し」という言葉を、つまりAさんが財布を忘れてランチ代を貸して欲しいのか、はたまたよんどころない要件でまとまったお金を貸して欲しいのかと、BさんCさん両人が回収リスクも勘案しながら忖度することで、コミュニケーションを成立させたのです。 

常に相手の置かれた状況を考えながら会話をする習慣が、日本人にはあるのです。日本人以外ではなかなかこうはいきません。 

加えて、昨今日本人の価値観の多様性や海外とのビジネスが当たり前になってきて、相手の立場や背景を忖度しながらのコミュニケーションにほころびがしばしば見られるようになりました。こうなると、日本人のコミュニケーションの長所が、一転して勘違いや思い違いの多いコミュニケーションになりかねないのです。 

 また、こんな話があります。 

日本人の内輪では、ある局面で話が実に素早くまとまるかと思えば、時としていつまでたっても話がまとまらないことが我々の行動様式としてあります。この時、日本人は背景情報のすり合わせを延々とやっているのですから、時間がかかるのは当然です。それを日本人は無自覚にやっているので、他人に理由を説明することができません。日本人以外には文化人類学者の日本研究者でもない限り、理解されることもありません。 

 はたまた、こんな話もあるそうです。 

私は膝を打って自分も含めて全くその通りだと感じました。それは、中国の留学生の話として、「日本人の友人できて仲良くなるにつれて、だんだんと会話が少なくなっていくのは不可解だ」というものです。日本人にとっては、お互い理解を深めていき、いちいち言わなくても分かっている状態というものは心地良いもので、決して悪いものではないのです。ところが、その中国の留学生が他の外国人とはこうした事を感じはしないそうです。外国人の人にとっては、友人とは仲良くなればなるほど言葉を交わす機会も量も増えるのが自然だということだと考えられます。私は外国人の友人とこうした経験はありませんが、思い当たるところが大いにあります。やはり日本人だけがちょっと違うということを理解しておくべきだと考えます。

では次回は、広報のミッションについてです。
 

Patina

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