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Web2.0時代の企業広報・コミュニケーションと情報活用を再考する

普遍的規範の整備という新しいマネジメント機能

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 日本人は、勝ち戦は行け行けドンドンで上手いが、一転して勝負がわからなくなると弱い、負けてもいないのに総崩れで一夜にして会社清算に追い込まれるという事態は何故に起こるのだろうか?

経営者が適切なマネジメントをせずに、社員一人ひとりは会社から与えられた目標に向かって一生懸命仕事をしているハズにも拘らず、個人は疲弊していくばかり、かつ組織のパフォーマンスは改善しないというのは悲劇的である。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              

 今、日本企業に求められるのは、マーケットや経営状況の悪いときも踏ん張りの効く強い組織集団作りなのではないか?そして、この課題は極めて企業経営の問題だといえる。

これからの日本企業は、自覚的に会社と社員それぞれ自身が拠り所とする価値観とべからず集などではない価値観の体系である規範を自らに提供し続けることが必要ではないか。ここでいう「自覚的に」というのは経営トップが価値観と行動規範を社内外に公開し、そのように行動すると宣言するということまで含む。

この効果は、社長や営業部長が社外に分身をたくさん作るに等しいほど大きい。また、アドバイザリースタッフを社外に何百何千と設置するようなコストメリットがあると言っても過言でないだろう。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             

組織の普遍的規範の構築・維持・再構築という新しいマネジメント機能を企業運営に組み込んでみてはどうだろうか。

基本的なポイントは2つあるのではないか。

(1)企業の存在価値の普遍性追求

その企業や事業の置かれた状況下で考えられる、自分たちに相応しい常に最高の貢献目標を経営陣以下社員全員で掲げたい。そしてそれが普遍的であることはとても魅力的に僕の目には映る。狭い地域や業界の中だけでなく、日本社会、そして世界中に通用する。そして、現在だけでなく将来も見据えて通用するものが普遍性と言えるのではないか。

経営陣の一部にとって「超」最高でも、法律の抜け穴を逆手にとってというやつもある。世の中の風向き解釈が変われば、塀の向こう側というやつだ。社内への価値観と社外への価値観を、使い分けなければならないような企業や組織は、そもそも胡散臭いし潜在リスクをいっぱい背負い込んでいる。社内外に対する価値観は共通、つまり社員とお客が共有できる価値観を持つことが企業としての自然体だ、つまり普遍的でなければ長きにわたって人々の信用を引きつけておくことは危うく、事業の生産性は低くならざるを得ない。

 このような普遍性の高い一貫性ある自社や組織の存在理由を継続的に提供し、社内関係者から始まって社外の多くの人々に周知し続けることが、企業とその構成員の規範・原理原則の根幹となって基礎体力を育み涵養してくれる。普遍性、一貫性、継続的にと言葉が続いたが、一度決めたら変えない硬直性と言うことではない。それどころか、世の中の変化に合わせて常に修正改編していくことが重要で、それでこそ変化への対応力という観点で、社内外の人々に説得力を持つ。

(2)個々人における原理原則に基づく行動様式の飽くことなき追求

そして、社員個人は会社の普遍的な存在理由やそのメッセージを原理原則として、事業目標追求や日々の活動を行っていく。ここで言う個人とは社長であり役員であり中間管理職であり担当者のことであって、つまり企業や組織の構成員全員のことを意味している。また、企業の存在理由とは平たく言うと企業理念とかビジョンと言われるものにまとめられることが多い。

  社長と現場の係長が対話したとしても、自社の顧客へのスタンス、人材教育に対する認識や、会社全体を考えての優先順位付けの価値観が、大きく違わない組織文化を作ることがポイントだ。社長も新人もそれぞれの立場から、組織や企業の求める普遍的な原理原則に対しては、対等な立場で仕事をしていく。こんな具合に会社の状況の変化に合わせて、何百何千という構成員が仕事をすることができたら、どんなに生産性の高い企業が出現することだろう。

  ここで重要なのは、よりどころとする原理原則を守るということがひとつ。もう一つは、原理原則は完全無欠にすることはできないが故に、必要があればいつでも直していくことが原理原則を守ることにつながる。現場に近い業務標準であれば、修正改編される頻度も高いだろう、原理原則はリアルタイムに全構成員にフィードバックされ周知徹底されることが必要だ。改編されたことを知らなければ、守ることは不可能であって原理原則は即刻破綻の憂き目に会うことになる。

  これらをPDCAサイクルで回すことで組織の老化やチョットした病から救うことができる。会社全体としては理念やビジョン、経営方針に、個々の部門組織は事業方針や職務分掌、業務(作業)標準へと、それぞれがPDCA無限サイクルで組織運営の新陳代謝を図っていくことで軌道修正、つまり学習のできる組織へ脱皮できるのではないだろうか。

 ※PDCAサイクル:典型的なマネジメントサイクルの1つで、計画(plan)、実行(do)、評価    (check)、改善(act)のプロセスを順に実行する。最後のact checkの結果に基づき、plan を継続・修正・破棄のいずれかを決定し、次のplanにフィードバック(反映)する。このスパイラル状の無限サイクルによって、経営品質の改善・維持・向上をマネジメントする手法。元来は製品品質管理及び改善手法として広く普及したが、現在では経営全般に活用されている。

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