栗原潔のテクノロジー時評Ver2:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 栗原潔のテクノロジー時評Ver2

知財、ユビキタス、企業コンピューティング関連ニュースに言いたい放題

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2005年9月9日の投稿

2005年9月12日 »

このブログ、サブタイトルに「知財」と書いてるわりにはほとんど知財の話書いてなかったですね^_^; いまや自分は弁理士としても活動を開始しているのでいい加減なことは書けないなと心にブレーキがかかってるのかもしれません。

とは言え、ちょっと見逃せないのが「のまネコ」問題(ことの顛末ご存じない方はこの記事を参照してください)。

今回は商標は関係ないので、2ちゃんねる側として法律的にできることは、著作権法または不正競争防止法に基づく訴えですね(「真似をされて精神的苦痛を受けた」というのもありかもしれませんが、弁理士的にはちょっと守備範囲外)。いずれにせよ、モナーと「のまネコ」が類似していることを裁判官に認めてもらうことが必要になります(著作権侵害や不正競争行為が成立するためには、マネをしたという行為だけではだめで、当該物件が客観的に見て似てることが必要となります)。

そういう意味で言うと、両者が類似してると認めてもらうのはちょっと厳しい気がします。商標の実務で言うと、キャラクターというのはわりと類似の判定が甘く、ちょっとでも違ってると非類似とされるようです(まあそうしないと線画で描いたネコなんてみんな類似になってしまいますからね)。商標の審査と裁判所の認定は異なるプロセスですが、基本的考え方は同じだと思います。

もちろん、法律的に問題ないからといって、AVEXの行為がCSR的に問題ないかというとそんなことはないわけであって、少なくとも著作権をビジネスの種にしている企業としては明らかにまずいと思います。

別に煽るわけではないですが、AVEXの姿勢に反対する人ははどんどん抗議するなり、不買運動するなりやるべきだと思います(虚偽の情報を流布したり、DoS攻撃したりするのは問題ですが、正当な理由に基づいて不買運動をするのは資本主義社会における消費者の正当な権利だと思っています)。

ところで、2ちゃんねるのキャラについては、今までも何回か商標関係でもめごとがありましたよね。本来、コミュニティの中の共有財産とすべきもの(一種のコモンズ)と現代の知財関連法規は明らかに相性がよくないので、この問題は必然的に生じたものだと言えます。

個人的意見ですが、2ちゃんねるキャラも、それを使った商品売ったりしてるのですから、商標登録しておいた方がよいと思います。商標権や特許権などの権利を取得するのは、権利を独占するためだけにするわけではありません。商標権とっても他者に自由に使わせることは可能です。そして、ルール違反をした者に対しては抑止力を行使できるわけです。

ちょっと刺激的なたとえをしてしまうと、平和を維持するためにはそれなりの自衛力が必要ということです。みんなで武器を捨てれば平和が訪れるという思想は理想論者の脳内では成立しても現実的にはあり得ないと思うわけです。

たとえば、オープン・ソースの世界でも基本的理念は共有することにあるわけですが、著作権という独占権は放棄したわけではありません。こうすることで、たとえば、GPL違反をした企業に著作権法に基づいた圧力をかけることができるわけです。

そういえば、GPL3では、ソフトウェア特許問題への対策としてGPLソフトに対してソフトウェア特許を行使した企業にはライセンスを停止するという条項を入れる検討がされているようですが、これも、著作権を保持していることで初めてできることなわけです(この話は長くなるので、また後日)。

栗原 潔

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栗原 潔

栗原 潔

株式会社テックバイザージェイピー(TVJP) 代表取締役 弁理士
IT、知財、翻訳サービスを中心とした新しいタイプのリサーチ会社を目指しています。

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