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つまるところ、現代のような情報時代においては、重要なのは、どの国の軍事力が勝つかではなく、どの国の物語が勝つかである。外交問題が多国にまたがった際に、軍事力があっても他国との協力関係がないと自国民を守れないのは、同時多発テロの例を引くまでもなく火を見るより明らかだ。そのことをブッシュ政権は軽んじている。(太字は引用者による)
― ジョセフ・ナイ、『ソフトパワー低下に喘ぐブッシュ外交の失敗を繰り返すな』、週刊ダイヤモンド 2006/7/8 p23
米国(ブッシュ政権)の外交批評を読んでハッとしました。
他国に語るべき自国の「物語」があるか。
それには、聞き手が耳を傾けてくれる魅力があるか。
自分に引き寄せて考えてみると、このような自問になります。
顧客に語るべき自社の「物語」があるか。
その物語には、聞き手が耳を傾けてくれる魅力があるか。
子供に語るべき親の「物語」があるか。
その物語には、聞き手が耳を傾けてくれる魅力があるか。
「耳を傾けて貰える国」というところで、最近読んだ本を思い出しました。
イギリスという国を見てください。世界中の国が、イギリスの言うことには耳を傾けます。しかし、イギリスが現在そんなに凄い国かといえば、それほどではない。イギリス経済は二十世紀を通して、ほとんど斜陽でした。最近は少し調子がいいのですが、日本のGDPの半分くらいの規模に過ぎません。日本の言うことには誰も耳を傾けないのに、なぜ経済的にも軍事的にも大したことのないイギリスの言うことに世界は耳を傾けるのでしょうか。(太字は引用者による)
― 藤原正彦、『国家の品格』 p131
大げさな物言いではあります(この本は講演がベースだからかな?)。
ただ、イギリスは(ハードな意味での)国力に比べて存在感を維持しているという印象はありますね。著者はその理由をこう推察しています。
イギリスの生んできた「普遍的価値」というものに対する敬意があるからと思います。
― 同上
ここでいう普遍的価値とは、アカデミックな分野での発明・発見、経済理論、文学、国家の制度などを指しています。イギリスは、そういった時の試練に耐え得る普遍的価値のあるものを数多く産んできた国だから、その発言は耳を傾けるに値すると見なされているということ。
「物語」の魅力の源泉は1つではない。
今後とも、いい物語を見つけたら、なぜ魅力を感じたのかを考えてみよう。
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