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日々の「ハッ、そうなのか!」を書き留める職遊渾然blog

人間はものごとをありのままに見ることができず、なにがしかの判断を加えてしまう。そのことをバートランド・ラッセルはこう語っているそうです。

確実なものを求めるのは、それが人間にとって自然な欲求だからだ。しかし、それにもかかわらず、この欲求は頭に悪い。雲行きが怪しい日に、子どもたちをピクニックに連れて行こうとすると、子どもは晴れるか降るか、独断的な答えをほしがる。こちらが確かなことを言えないと、露骨にがっかりする。
しかし、証拠がないときに判断を差し控えても、訓練(太字は引用者)を積んでいないと、自信たっぷりの予言者にひっかかってしまう… (中略)…どんな美徳を学ぶにも適切な学問というものがある。そして、判断を差し控えるのを学ぶのに一番いい学問は、哲学だ。

― ナシーム・ニコラス・タレブ 『ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質』(ダイヤモンド社、2009年)

※ (「太字は~」は、引用元では「傍点」です。傍点は表現しづらいので太字に換えました)

著者のタレブ氏は最後の一文に反論するためにこの引用を行っているのですが、それ以外の部分については賛成し、自動的に「判断」を差し挟んでしまうわれわれの性向についてこう述べています。

判断を差し控えるなんて人に教えることはできない。人間はものを見れば必ず判断がついて回るようにできている。私は「木」を見ない。私が見るのは美しい木や醜い木だ。私たちがものに貼りつける、ちょっとした価値判断を引っぺがすのは気が遠くなるほど大変である。同じように、私たちはなんの偏りもない頭を持てない。私たちのいとしい人間らしさのせいで、私たちは何かを信じずにはいられないのだ。

― 同上

この「気が遠くなるほど大変」な「私たちがものに貼りつける、ちょっとした価値判断を引っぺがす」方法が2500年ほど前にブッダによって完成されているらしい、というのが、このエントリで書きたかったこと。

下に引用するのは初期仏教の瞑想法(ヴィパッサナー瞑想)の解説書です。ロープを認知し、蛇と誤認する過程が細かく定義し分けられています。実際にはこの後「怖い」という感情が起きるわけですから、タレブ氏の文章との対比で言えば、「木」と「美しい木」ではなく、その前の「目に入ってきた棒状の物体」を「木」を認識するフェーズに対応しています。

夕暮れ時の山道で、古いロープを眼にした瞬間「蛇だ!」と錯覚し、恐怖に震えた人がいます。対象と眼門と眼識がリンクしただけでは、何を見たのかまだ蛇ともロープとも分かりません。次の「受」の段階でも情報の内容は知られません。ただ「見た」とサティを入れ、眼に対象が触れた事実が確認されるだけです。情報の歪みが生じることはありません。
問題は「想」が機能する一瞬です。蛇とロープを誤認するという、間違った情報の読み出しが提示されてしまったのです。

― 地橋 秀雄 『ブッダの瞑想法―ヴィパッサナー瞑想の理論と実践』(春秋社、2006年)

用語の説明は省きますが、意味は取れると思います。この瞑想に習熟しているひとは、タレブ氏が「気が遠くなるほど大変」という、価値判断の引っぺがしができるようです。実は、ここのところ練習中。ちゃんと習いたいな。

koji

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堀内 浩二

堀内 浩二

(株)アーキット代表。
「個が立つ社会」をキャッチフレーズに、起業・転職支援やビジネスリテラシー研修などを提供しています。 個人向けにはチャレンジ応援サイト「起-動線(きどうせん)」を運営。

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