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根も葉もない噂からまともなニュースまでを取り上げます

2005年6月の投稿

2005年7月 »

 週刊新潮が、 6月30日号『迫り来る「日本の危機!」』で2007年問題を取り上げた。ITにおける2007年問題は、一般にも関心を持たれるテーマになってきたようだ。

 Googleで「2007年問題」検索すると、2003年に書かれたIT Proの記事、「西暦2007年問題」の解決策を募集しますと、その続報(2005年4月)、なぜ私は2007年問題をテレビで解説したかがトップに来る。

 筆者は日経BP社の谷島宣之さん。引用をご理解いただこうと連絡を取ってみた。すんなりとOKの返事。どうもありがとうございました。

 はじめて「2007年問題」という言葉を聞いた人は、上のリンクから記事を読めば、それが何なのかわかるだろう。また、Googleのトップには来ないが、同じく谷島さんによる経営の情識・今ここにある「ITの2007年問題」は、読者からのコメントが引用されていて興味深い。すんなりと読めるので、ぜひ読んでみてほしい。これらは、ITのユーザーである企業やそこに勤める人に対して暖かい視点で書かれている記事で、たいへん参考になった。

 論点を引用する。

-企業内でITにかかわるスタッフに、世代間の断層がある

 若手は入社するとすぐに情報システム部門に配属された人が多いため、業務に精通していない。しかも、システムの全体を把握できるような開発業務にタッチしたこともない。

-ベテランの作ったシステムの仕様書がない

 これは「悪いこと」だが、いまさら言っても仕方がない。

-単純に「新システムに移行する」わけにはいかない

 ITベンダーは売り込みにくるが、すべてを彼らに任せてしまうと必ず問題が起こる。

結論:「企業は真剣に2007年問題について考え、ITベンダーの甘言に惑わされることなく、自らの意志で新たなシステムを構築すべきである」

 記事で面白いのは、結論とそれに連なる議論の部分だ。旧来のシステムをそのまま維持・運用するという選択肢が省かれている。つまり、2007年が来れば(いまのシステムを構築した団塊の世代が去れば)、いまのシステムを維持できないという前提があって、谷島さんもツギハギだらけの現行システムを捨てなければならないときがくると見ている、ということだ。

 次回は私の意見を書いてみる。

いづもと

米オラクルが日本オラクルを買収・完全子会社化する。こう予想する人がいる。私を含めてたいていの人は、「そりゃないやろ」との感覚で一致するのだが、それは感覚にすぎないし、相手が重鎮なだけに無視できない。きちんと検証して本当にあるのかないのかを判断できれば、(そしてもしTOBがあれば)日本オラクル株の購入で儲けることができるかもしれない。

そこで、読者に以下の判断材料を提示することで、結論を導きたいと考える。もちろん、判断材料そのものが間違っているという指摘も歓迎する(仕事の合間にビールを飲みながら書いているので、相当間違いがありそうだ)。ぜひコメントしてほしい(こいつアホちゃうかとまで書いてくれるとありがたい)。

●材料

-日本オラクルのアプリケーション事業はうまく行っていない
 2005年5月期の第3四半期決算でデータベース・テクノロジーの254億9700万円に対し、ビジネス・アプリケーションは11億8100万円にすぎない。IR資料を見ても、中間期、第3四半期ともに見込み案件の増加がうたわれているだけ。いつ案件がクローズするのやら。

-旧PeopleSoft製品をいまでも新規販売
 米オラクルでは旧PeopleSoft製品群の新規販売をしない方針で意志決定されている。しかし、日本では日本ピープルソフトがいまだにPeopleSoft製品を新規顧客向けに販売している。

-日本ピープルソフトの利益は米オラクルに直接還元できる
 日本オラクルは上場会社であるため、米オラクルは70%を超える大株主であるとしても、そこから入ってくる収入は税引後利益から出す配当と、ソフトウェアのライセンス収入のみ。これに対して、日本ピープルソフトからの収入は、日本の税務当局の目を欺いて「ちょろまかす」ことができる。「日本ピープルソフトとの協力関係は未決定。製品統合など具体的な成果は07年5月期以降か」(東洋経済 会社四季報より)。米オラクルが直轄地を失いたくない意志が見て取れる。

-日本オラクル株は安いか?
 米オラクルの日本オラクル株保有分は9506万株。発行済み株式数1億2819万4662株の約74.15%に相当する。残りの3313万4662株を5000円で取得する場合、必要な資金は1656億7331万円。ピープルソフト買収に要した資金は103億米ドル、リテック買収では5億4000万米ドル。アプリケーション戦略を推進する上で、この金額は適切な投資なのかどうか。

●子会社化しない

-子会社化するための資金が不要
-現状でも米オラクルは、実質的に日本オラクルを支配している
-日本市場において、法人格を持ち、日本で上場していることによる“安心感”は強い
-現時点で日本ピープルソフトから得られる利益を受け取れる

●子会社化する

-いますぐにグローバルなアプリケーション戦略で統一歩調を取れる
-日本ピープルソフトとの統合で日本市場での利益を高めることに期待できる
-上場の廃止で、配当以上の金額を日本から引っ張って来ることができる
-マイクロソフトもSAPも法人格はあるが上場していない。上場メリットはそれほどないのでは?

 最後に現時点での考えを付記する。

 米オラクルがビジネスアプリケーション分野での存在感を拡大したいのは間違いない。また、グローバル企業として戦略を立てたいことも確かだろう。しかし現時点では、戦略の統一歩調が巨額な投資に見合うかどうかが問題になりそうだ。米国のIR資料を見ると、データベース・テクノロジー分野とビジネス・アプリケーション分野の比率は4~5対1程度。これに対して日本は20~30対1であり、大株主の米オラクルとしては大いに不満を感じていると考えられる。なお、アジア全体でもその比率は10対1程度。日本でのビジネスアプリケーション不調は相当に深刻だ。
 日本オラクルを日本ピープルソフトと統合させると、単純に数字を足すことで、一時的に売上と利益は水増しされるだろう。しかし、それは数字にすぎず、日本オラクルがビジネスアプリケーション分野で好調に転ずるわけではない。つまり、統合させてもリストラ効果があるくらいで、そのメリットはそれほど多くないはずだ。
 不満はあれど、介入するほどではない。現時点で子会社化はないと考えている。

#個人的には今の日本オラクル株は割安だと考えている。そのうち買うかも…。

いづもと

ここを見てくれた人が、メールを送ってくれる。

ご親切に写真を撮るときについてきてくれると申し出てくれた人から、「おとなしい。どうしたの?」と心配してくれた人まで。概して、期待と不満である。というのも、まわりは私に過激な論調を求めてくれているからだろう。事例紹介記事を書いたりレビューしたりするときには、心を込めて究極のチョウチン原稿を制作するようにはしているが、こういうところで書くときには本人らくしあった方がいい。

というわけで、記事部分のですます調をやめることにした。どうも調子が出ないのだ。であるだの方が言い切っているイメージがある。

さて・・・と続けたいところだが、今日はここまで。

いづもと

このブログに書こうとして会った人なので、ちょっと前(6月9日)の話を書いておきます。

BI大手、SASのアラン・ラッセルさんに会いました。海外で2回取材したことがあって、その縁で日本に来たから会いたいとのお誘いがあり、SAS Forumの講演が終わってから会食しました。カメラを忘れたので、写真はありません。ちなみに、昔の写真はここにあります。これ、私が撮ったものではないような気もしますね。記事は私です。今回は、このときより髪は伸びてました。彼は、ビジネスの言葉でITを語れる人なので、とにかく話が面白い。初めて取材したときに、すでにビールを飲んで顔が真っ赤だったのが印象に残っています。

さて、その取材。というか取材ではないのかな。一応広報の方に気をつかって、「今日はどんな話をしたらいいんですかね」と聞いてみたのですが、「いえいえ、今日はざっくばらんに旧交を温めて・・・」とのこと。で、旧交を温めるだけに終始しました。無料の英会話体験1時間半コース、といったところでしょうか。

JRAのテラ銭が高すぎるから海外のギャンブルサイトで日本のレースの馬券を買う人が多くて問題になった、という話から
、SASを使ってバスケットボールの試合のトーナメント予測ができるという有意義な話まで。日本で非合法に行われている高校野球賭博と同様に、おそらくバスケットボールなら賭けの対象になっているはず。本来ならこうした予測は期待値ベースで行ってはじめて価値が出てきます。このケースだと、純粋に結果だけを予測しているので、これが賭けなら予測結果をだれにも言わないという条件で大きく勝てる理論として期待できます。どんなアルゴリズムを使っているのかわかりませんが、日本の高校野球に応用してみれば面白いかもしれません。

日刊ゲンダイが「高校野球バクチファンのための~」というタイトルで勝敗予想をやった根性は賞賛に値します。でも、さすがにSASはやってくれないだろうなあ。ともあれ、純粋な予測としてやるのなら、広報効果は大きいはず。是非ご検討ください。

最後に、SASは最近、「Beyond BI」というメッセージを持ち出してきて、過去の結果を分析する機能を超えて、将来の予測を志向すると言っています。しかし、どうもピンと来ない。これはBIそのものです。BIの定義がきちんとしていないので、こうしたメッセージが出てくるのでしょうが、もしかしたら、BI分野でCPM(コーポレート・パフォーマンス・マネジメント。ほかにEPMやらBPMと言ったりもする)が幅を効かせてきているから、分析の本家としてBIの定義を元に戻したかったのかな、などと考えたりします。

いづもと

ごあいさつ 2005/06/13

このたび、この場でブログを始めることになりました井津元と申します。本名です。写真も本人です。見るたびに不細工だなあと思いますが、まあそれは実物が悪いから仕方がありません。ご容赦を。――と書いたのは、「そんなことないよ」と言ってほしいがためである、というひねくれた視点で書いていきたいです。毎回ではありませんが。

さて、当欄で何を書くかと申しますと、おそらくIT関連の記事がメーンになると考えられます。IT関連と言っても、ビジネス寄りです。テクノロジーそのものにはあまり興味がないので……。ということで、ビジネスアプリケーション関連が主になるでしょう。ERP、SCM、CRM、PLM、BIなどのあたりです。おもしろい人と会ったときなどにも、順次アップデートします。あと、買収ですね。買収が話題になって、何か言いたければ言うはずです。

本当は、競馬について書きたいのですが、あんまり書くなというお達しなので、GIのときくらいは趣味で書きます。これは完全に趣味なので、無視してください。そのほか、メディア全般や社会現象についても書きます。

更新は、週2回をめどにします。はじめから頑張ると、あとで失速するのが恐ろしいので、当初は頑張らないようにします。長続きさせるためには、それくらいの覚悟が必要なのです。

というわけで、これからよろしくお願いします。

いづもと

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プロフィール

井津元 由比古

井津元 由比古

1976年、神戸市生まれ。
京都大学経済学部経済学科卒業後、外資系SIに入社。
2000年、ZDNet Japan(現ITmedia)で主にビジネスアプリケーションを担当する記者に。
退職して2003年より月刊誌編集長。
2005年、有限会社ライトセブンを設立。

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