楽天と村上ファンドがTBSの株式を大量保有したそうだ。ここでも「放送と通信の融合」というキーワードが出てきた。
このキーワードには、ずっと疑問を感じている。
放送=片方向への情報(コンテンツ)たれ流し
通信=双方向でのやりとり
が間違いないとしよう。そして、実際に放送を受け取る者と情報を受発信する者は、個人であるという認識に立ってみる。
すると、このように考えられないか。集中してテレビドラマを見ている個人は通信を行わないし、電話に夢中の個人はそばでテレビが映像と音声で関心をひこうとしても見向きもしないはず。
放送を見ながら通信するケースは、テレビショッピングや視聴者参加型のクイズ番組のようなものが想定できるかもしれない。また、かつて筒井康隆が朝日新聞に連載した『朝のガスパール』で試されたような手法のドラマも成立するかもしれない。
しかし、それが本当に面白くなるものなのか。朝のガスパールは筒井康隆らしい予言書としての価値もあり、今読んでも面白いのだが、楽屋落ちにパソコン通信参加者を含んでしまっている点で、非参加者にとっては面白さを理解できない部分も多い。
さて、放送と通信は果たして融合するのだろうか。
私は、単純に見ている。通信が放送的な役割を果たせるようになってくることで、既存の放送は魅力をなくしていく。つまり、これまでチャンネル数が限られた中でやってきたテレビ局というビジネスは、このままでは視聴者数を新規参入者に奪われることで広告収入を失い、滅びる。同様に、コンテンツ制作能力のない放送・通信プロバイダーは視聴者を獲得できないので滅びる。
新時代に勝利するのは、優良コンテンツの保有者だ。中でも、リアルタイム性が重要なスポーツを持っているプロバイダーは強いだろう。たとえば、F1ファンならわかるかもしれない。F1 Live.comで先に結果を知ってしまってからレースを見ても興醒めだ。競馬や競艇も、リアルタイムに馬券・舟券という参加料を払って楽しむから盛り上がるのである。個人的な意見で申し訳ないが、野球なら、福岡に行くことはできないものの、お金を払ってでもパリーグのプレーオフをリアルタイムに見たい。私は巨人ファンだが、いい試合(真剣勝負で盛り上がりそうな試合)は野球ファンとしてリアルタイム性に対価を払う価値のあるものなのだ。
もうひとつの大きな問題は、優良コンテンツが飽和状態にあることだ。一生かけて過去の名作映画を見続けたり、小説を読み続けることはすでに不可能である。
個人の趣味の多様化という現実がそれに輪をかける。
放送は多チャンネル化へと向かい、これまでテレビ局がやってきた総花的なやり方では儲からなくなる。そんなテレビ局を買収して放送と通信の融合とは、不思議な構図だ。
放送と通信は融合しない。個人の選択肢が増えるだけだ。どうせ買うのなら、テレビ局そのものではなく、スポーツを放送できる権利やコンテンツ保有会社、もしくは、ギャンブルにはなるが、コンテンツ制作能力のある制作会社の方がいい。
Special
- PR -mitto | 2005/10/14 05:18 |
iTunesがMediaCenterとしてある種の解になるのでは。 音楽業界は、プラットフォームとして利用し始めてます。 個人Podcastingに続いて、ラジオ放送局が乗り出し始めました。 テレビは、米国ABCがドラマ放送翌日には、CMなしで配信するとか。 iTunesのリスナー向けにアーティストのPVも配信開始してます。 |