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【英語をたくさん読み聞きすること】
まずは、最初の「英語をたくさん読み聞きすること」という壁だが、あたりまえ、と思うかもしれない。これを強調したいのは、周りの多くの日本人が英語で作文したり発話したりして失敗している例をみると、英語で表現するときに、
内容を思いつく ⇒ 英語の単語に訳す ⇒ 文法を使って組み立てる
とやっている風に見える。これは最後に出てきた文章を見ると「あぁ、これは伝わらないだろうな」というものになる。へたをすると、裏の日本語がすけてわかったりする。そうではなくて、伝わる英語で表現する手順は、
内容を思いつく ⇒ 過去に聞いた同じような文を思い出す ⇒ それを一部変えて文を組み立てる
となる。
つまり、「過去に聞いた同じような文を思い出す」のが肝で、これはたくさんの英語に触れることが絶対的に必要な根拠だ。ぼく自身も、初めて使う動詞や初めて使う文章パターンは、まず伝わる確率が50%だと思って使ってみることにしている。辞書があれば、「用例」をまずあたってみる。そして、相手の顔色で伝わっていなさそうなら、別の言い方で補強する、などなど、一回も使ったことの無い言葉の利用は本当に慎重になっている。日本人の伝わらない言い方のほとんどは、ぼくからみても「そんな言い方聞いたことない」というものだ。逆に言うと、「聞いたことのある」言い方しか伝わらないと思わないといけない。そのためには、「聞いたことのある」言い方を増やすことしかなく、これには大量の英語を読み聞きする必要がどうしてもある、ということになる。
例えば、用例ではじめて覚えた文章パターンの1つに、「仮定法過去完了」がある。なんとも大げさな文法名だが、ぼくはこのすぐにこのエピソードを思い出す。どこの空港だったか、出張で行った空港で見知らぬ同年代の青年と話が弾み、一緒にトランジットで空港内を移動した。目的のゲートに向かうのに、バスに乗ろうか、歩いていこうか、迷った。ちょっと待ってバスが来たのでそれにのった。そして、そのバスは10分以上かけて反対側のウィングのゲートに移動したのだ。歩いていたとしたら、とっても大変だったろう。その時に彼が、
Would have been a long walk!
と言った。どういう意味か?意味はもちろん分かると思う。日本の学校的に言うと、
If we had not taken this bus and walked, it would have been a long walk.
の略で、「もし歩いていたならば、それは長い歩きになったであろう」(実際は歩かなかったので、長い歩きを回避した)ということだ(ああ、なんと懐かしい日本語の解説だろうか)。
しかし、これは明らかにこのコンテキストで、もしこうだったら大変なことになっていただろうね!という気分を的確に表現するパターンだ。これを「仮定法過去完了」などと名づけるから難しいのだが、基本的に、人間の生活の中での基本的な感情である。この瞬間が、ぼくがはっきりと、Would have been … というパターンでもって「やんなくて良かったね」という感情を表現できるようになった瞬間である。この感情に出会ったら、この表現が、頭の中に引き当てられるようになった。
ということで、まとめると、英語で表現する3ステップは、
内容を思いつく ⇒ 過去に聞いた同じような文を思い出す ⇒ それを一部変えて文を組み立てる
であり、そのためには文脈を伴った体験、体感と一緒になった文章例の蓄積が必要なのだ。
さて、現代のお勧めの勉強方の1つはDVD。映画やテレビドラマのもの。これを、日本語字幕でなくて、英語字幕でとことん見るとよい。「へー、こんな言い方するんだ。」という言い方の例をたくさんみる。DVDのいいところは、場面があって、ビジュアルやストーリからも記憶できること。もしレベルが高すぎると思ったら、NHKの英会話番組をお勧めする。必ず場面と英語の解説があって、文脈を確かめられる。いまやっている犬の迷子のお話など、とてもお勧めだ。
それともう1つ。とっておきは、twitter で有名人をフォローする。ぼくは、ケントベック、アンクルボブマーチン、アリスタコバーンなど、アジャイル界の友人たち数十人をフォローしている。Twitter は、一文が短く、かまえて読む必要がない。さらに、自分に関係したことや興味のあることが書かれることが多いため、読むモチベーションが継続する。現在進んでいるカンバン開発についての議論も、twitterを見ておいてそこに紹介されたURL記事を(気が向いたときに)読む、というような使い方をしている。そこで気の利いた言い方に触れるようにしている。これは、ぼくが仕事上、移動が多いことにも関係しているかもしれない。電車の中にいる時間が、週の20%を占めている。携帯で英語のつぶやきを追うことで、文例を頭の中に増やしているのだ。
あと、特にソフトウェア技術者であれば、InfoQなどに上がっている動画でセミナーを見ること。WebinarというWebを使った動画配信セミナーが多くある。多くの場合、動画とテキスト(これがうれしい)が対になっている。これを利用しない手はない。
どんどん体感としての文例、単語、言い方を増やしていこう。
(つづく)
(写真は本文と直接関係がありません、http://www.flickr.com/photos/vm2827/2282707219/)
(※ 5/31 追記)
なかなかたくさん経験を詰めない、時間が取れない、という方には、もう1つハックをお教えしよう。これは、話すときには使えないが、文章を書くときには時間が取れるから使える(ぼくもよく使う)。
内容を思いつく ⇒ 過去に聞いた同じような文を思い出す ⇒ それを一部変えて文を組み立てる
と書いたが、ここで難しいのは「過去に聞いた同じような文を思い出す」パート。これは、コンテクスト(文脈)と呼ばれるものの蓄積で、大量のデータが必要になる。これが頭の中に無い場合、どうするかというと、「Google さんに聴く」、という手がある。すなわち、
内容を思いつく ⇒ キーとなる英語単語を見つける ⇒ Googleで例文を探す ⇒ それを一部変えて文を組み立てる
となる。パターンとコンテクストは、Google の持っている検索テーブルそのものを使え、というハックだ。また、英和・和英辞書にはとにかく例文が多いものを使う。オンラインでは、「アルク」の「英辞郎」がお勧め。この和英と英和の両方を使って単語の組み合わせのあたりをつけ、例文をみながら、利用例を見つけるのがよい。
例えば、「長旅で疲れた?」という文章を英語にしてみる。
まず、「疲れた?」については、
"Are you tired ?"
という普通の中学生英語でOKだ。このレベルはみんな大丈夫。では長旅ってどういう?こういう組み合わせ単語は、和英辞書に載っていないことが多い。「形容詞+名詞」、「動詞+名詞」には相性があり、そのまま日本語で組み合わせても「聞いたことがない」組み合わせになる場合がある。これでは伝わらない。
長旅の場合は「英辞郎」できくと、long trip, long journey が例文つきで出きた!よしよし。そこで、Google で、「tired long-trip」 と、「tired long-journey」 を検索すると(Google の "-" 付き検索は2つの単語が並んでいることを示す、必須の検索 tipsだ)、「tired after a long journey」 や 「tired from a long trip」が見つかる。これであたりがついた。そして、後者の方が、検索で引っかかる数が圧倒的に多いので、long trip の方がより使われる、つまり日常的だ、ということになる。そして、その検索ページを見ていると、「この長旅」、というために、such という言葉も頻繁に一緒に登場している。今回のいいたいことにぴったりだ。そして最終的に、
"Are you tired from such a long trip?"
という文が出来上がるのだ。
ここで、例文を見ないと(ここでは英辞郎とGoogle 検索を使った)、after/from や a という冠詞が日本人の感覚では見つからないことが多いことに注意。これが、「伝わる英語」の重要な部分なんである。
ちなみに、米国でカンファレンスに参加すると、非常に発音の効きにくい中国や中近東、アジアの人がいる。日本人には聴きにくく感じるが、英語を話す国の人は彼らの英語がよく分かるように見える。これを不思議に感じたことはない?
これは、ある文脈から想定される文章のパターンをちゃんと使っているからで、少々の発音の悪さよりも、その文脈の想定から、「よく聴くパターンの文章」をちゃんと使っているからなのだ。
良く聞くパターン、単語の並び、想定される文型、それを蓄えよう。
【ソフトウェア技術者のための英語】
こんなタイトルのエッセイ連載をはじめてみようかと思う。きっかけは、ぼくが昨年、Agile2008において Gordon Pask Award という賞を頂いたことだ。これはとても嬉しい1つの出来事だったが、今振り返ってみると、これまでに人生の中で人に何か認められたとか、貢献した、と思えること、そして現在の仕事やビジネス活動にいたるまで、ほとんどの仕事が自分の英語能力と関連していることに気付いた。「英語重要」だとあらためて気付いたのだ。現在の何か「知の創造活動」に参加しようと思ったら、英語で表現できる能力が必須となる。
例えば、現在ぼくが関わるAgileというムーブメントにおいて、多くの人がその知識体系(Body of Knowledge)を数年かけて試行錯誤で作ろうとしている。その議論は、ブログで、メーリングリストで、カンファンレンスで、twitter で、facebookで起こっているが、そこに参加し、自分の痕跡を残していくためには英語で表現できることが必須だといえる。いかにいい内容を日本語で書いても、それが読まれなければ、知の創発に参加できない。これは、ソフトウェア知識の中で英語の占める割合の多さ、そして英語⇒日本語、日本語⇒英語というその知識流量の圧倒的な非対称性と、インターネットによるコミュニケーションの即時性が掛けあわさった結果だ。twitterで書いた一行が、名だたるコンサルタントたちの間を一日に数往復して一つの新しい知識を形成するような、「集合知ダイナミクス」に参加するための言語は、今、英語に限るのだ。
ということで、ぼくの英語勉強法をいくつか指南したい。特に、英語で表現するためには、という方向で行きたい。また、いくつか現代的な(twitterなどを使った)英語勉強 Tips なども含めようと思う。
実はこのエッセーにはもう一つ理由がある。43歳になったこともあって、もうそろそろ僕自身の経験から何か20代、30代の若いエンジニアに対して役に立つ、教訓めいたことを言ってもよいだろうと思ったこと。「なにえらそうなこと言っているんだ」と言われそうな態度をとるのはとても苦手なのだが、たとえそう言わても、日本のぼくよりも若くて可能性のある人たちに、なにか経験から伝えたいと思った。だから、ちょっと上から目線の書き方になる部分や自慢めいて聞こえる部分がある点はご容赦いただきたい、と免罪符を切ってはじめよう。
このエッセーに興味のある出版社の方、新書にしていただける可能性があったら、ご連絡ください(笑)。
【日本人が英語で表現するために乗り越えなければならない5つの壁】
さて、まず、「日本人が英語で表現する」ということを考えたとき、超えなければならない4つの壁がある。それは、
- 英語をたくさん読み聞きすること
- 英語で考えること
- 英語のボキャブラリ(語彙)を持つこと
- 文法を腑に落とすこと
だ。そして、表現する中でも、「話す」という場面ではさらに、
- 英語として聞こえる発音をすること
という難関がもう1つ加わる。この順に、壁、と、その克服法を説明したい。
図は、会話・文章という軸と、伝える・理解するという軸で、「読む」「書く」「聞く」「話す」を位置づけてみた。日本人は、圧倒的に「読む」側が得意で、そこから離れると苦手になる。特に、「話す」のが苦手な人が多い。この連載では、どちらかというと「表現すること」(右下)に向かって話しを進めたい。そして、そのためには「読む」「聞く」といった左側の活動の蓄積が重要だ、ということもおいおい書いていく。
。。。。(つづく)
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