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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

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日本においても注目されている「オープンデータ」について、オープンデータの定義や歴史的背景、国内外の取り組み、今後の方向性などについて、何回かに分けて整理していきたいと思います。

オープンデータとは?

オープンデータとは、政府、自治体、公共機関などが保有する大量の情報(PSI:Public Sector Infomation)を公開し、インターネットを通じて誰もが無料でアクセスしてダウンロードして利用でき、自由に再利用・再配布することができるデータを指しています。オープンデータは、オープンガバメントにおける一つの枠組みという位置づけとなります。

公開されるデータはマシンリーダブルで変更可能な様々なフォーマットに対応する使いやすい方法で提供され、他のデータとの組み合わせも許可される形となります。データは原作者のクレジットを表示、もしくは、同じ条件で配布することを守れば、原則、改変や非営利目的や教育目的での利用に限ることなく、営利目的の二次利用も許可される形態となります。

オープンデータの提供を通じて、政府・行政の透明性の向上を図るとともに、市民の政治への参画を促し、さらには、オープンデータの活用による民間事業者の参入により、付加価値をつけたデータコンテンツが提供され経済の活性化につなげていくことが重要となります。さらには、市民生活の向上や行政の効率化にもつながることが期待されています。

オープンデータの対象となる行政情報

オープンデータの対象となるデータ(PSI:Public Sector Infomation)について整理をしてみたいと思います。

オープンデータは、行政区等の「地理情報」、海洋情報等の「気象・環境情報」、経済統計等の「経済・ビジネス情報」、人口や意識調査や労働等の「社会情報」、渋滞情報等の「交通情報」、観光統計等の「観光・レジャー情報」、農地利用や漁獲等の「農林・水産・林業情報」、地球物理等の「資源情報」、犯罪や特許や商用等の「法務情報」、大学研究等の「科学・研究情報」、学術論文等の「教育情報」、政府官報や白書等の「政治情報」、美術や図書館等の「文化情報」などが挙げられます。

これらのデータの二次利用し、変更可能なフォーマットで、収集・分析やデータのマッシュアップを行うためのアプリケーションを開発し、ユーザにとって使いやすいビジュアル化をすることで、市民生活や企業活動に有益な付加価値の高い情報として提供していくことが、経済の活性化や公共サービスの向上にもつながります。

オープンデータによる市場規模

Vickery Studyが2011年12月に発表したオープンデータの市場価値に係る調査報告「potential market value of PSI re-use in Europe」によると、欧州においてオープンデータを活用した市場規模を約270億ユーロ(約2.7兆円)から320億ユーロ(約3.2兆円)と算出しています。

このオープンデータを活用した市場規模には、オープンデータを活用しサービス提供に必要なシステムやアプリケーション開発市場「アプリ構築市場」と、民間分野で新たに創造される新サービス市場「データ提供サービス市場」を想定しています。

また、オープンデータを通じた個人や企業によるサービスを利用する市場「データ活用市場」が進むことで、効率化よる産業競争が促進され、政策形成の効率化も進むことによる経済効果も含めると毎年400億ユーロ(約4.0兆円)になると見込んでいます。さらに、新規サービス市場の創出や、産業の高度化などの産業連関による経済波及効果は約1400億ユーロ(約13.9兆円)で、GDP比で日本に置き換えると約5兆円と推定されており、オープンデータを通じて付加価値を提供していくことで、ビジネス創出と大規模な経済波及効果が期待されています。

オープンデータの提供によるアプリ構築やデータ提供から、多くのスタートアップ企業が創出されオープンデータによるエコシステムが形成されることで、イノベーションが生まれ、それに伴う雇用創出、税収の拡大につながっていくというサイクルが期待されています。

米国においても、オープンデータの活用から生まれる市場は、今後数十億ドル規模まで発展していくと見込まれています。

オープンデータによる市民生活の向上と行政の効率化

オープンデータによる経済効果が生まれる前提には、オープンデータを活用した公共サービスや民間事業者のサービスを利用することにより、たとえば医療福祉サービスの向上や、交通渋滞状況の確認など、市民生活の利便性向上につながることも期待されています。

また、行政の効率化にも期待が集まっています。総務省の情報通信白書2012のビッグデータ活用による市場分析になりますが、EUの公共セクターでは年間2500億ユーロの価値創出が期待(ギリシアのGDPを超える)されています。日本国内においても行政効率化で7200億円~1.2兆円、社会保障給付是正で2995.5億円~1.2兆円、租税増収で2133.9億円~8535.6億円などの発現効果が見込まれています。

image_thumb[6]
出所:情報通信審議会ICT戦略ボード「ビッグデータの活用に関するアドホックグループ資料」

行政が公開するデータの標準化や政策文書の統一化が進め、人が介在する時間と稼働を軽減する、運用の自動化やデータ統合による行政の効率化につながることが期待されます。

 

MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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