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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2012年11月15日

2012年11月16日の投稿

2012年11月17日 »

成長するクラウド市場と、縮小傾向にあるSIビジネスの中において、SI事業者は、既存のSIビジネスの収益機会を確保しつつ、クラウド市場環境下での自社における事業ドメインの再構築が求められています。また、IT業界の各事業者はクラウド・エコシステムが進む中で、どのようなポジショニングをとっていくのか大きな鍵となっています。

以下、5つの事業ドメインで整理をしてみます。

①クラウドサービス事業者

IaaS やPaaSを提供するクラウドサービス事業者がクラウド・エコシステムの中心的な存在となります。クラウドサービス事業者の多くはAPIを公開し、パートナー事業者が自社のサービスと連携しやすい環境を提供することで、エンドユーザーのニーズに応じた付加価値の高いサービスを提供することがポイントとなります。

クラウド事業者は、AWSやセールスフォース・ドットコムなど、クラウド事業からビジネスを開始したクラウドネイティブ事業者、ホスティングサービスやサーバー構築運用のノウハウのあるISPや通信事業者やデータセンター事業者などが主な事業者となります。

クラウドサービスの提供にあたっては、規模の経済を生かした大規模な投資が必要となり、中長期的に収益を回収できる投資余力のある事業者に限られています。

グーグルやアマゾン、マイクロソフトなどのクラウド事業者は、世界各地で巨大なデータセンターを建設し、ユーザのクラウド需要への対応を急いでいます。これにより、規模の経済による大幅コスト削減と、高性能でかつ柔軟性の高いサービスの提供が可能となります。

②サービスパートナー事業者

サービスパートナー事業者は、クラウドサービス事業者が公開するAPIと連携することでクラウドサービス事業者のエンドユーザに対してサービスを提供できるようになります。サービスパートナーは、クラウド事業者のエコシステムにつながるサービスを拡大させていくことが可能となります。サービスパートナー事業者は、SaaS事業者や独立系ソフトウェア会社のISV(Independent Software Vendor)などがあげられます。

③クラウドアダプター事業者

クラウドサービス事業者が提供するサービスに、ユーザニーズや課題に対処するための認証やセキュリティ、運用保守や請求などサービスを補完するサービスを提供する事業者です。

④クラウドブローカー(クラウドインテグレーター)事業者

ユーザの要求に応じて異なるクラウドサービスやソリューションを組み合わせ、導入サポートを支援するクラウドブローカー(クラウドインテグレータ)の存在が注目されています。SI事業者の多くは、このクラウドブローカーやクラウドサービスのインテグレーションビジネスに収益機会を獲得しようとしています。

⑤スタートアップ事業者

スタートアップ企業が成長する段階においては、市場をリードするクラウド・エコシステムのサービスの一部に組み込まれることにより、そのエコシステムが持つマジョリティーユーザに対してサービスを提供することで安定した持続的な成長を見込むことができるでしょう。大手のクラウド事業者は、自前主義ですべての提供するケースは少なく、ベンチャー企業にとっては連携することで、販売チャネルを提供してくれる有力なパートナー先となるでしょう。

クラウド事業者にとっては、スタートアップ企業の独自のコア技術の採用や、収益性の高い新たなサービスをエコシステムに取り込むことによって、生態系の新たな新陳代謝を生み出すことができるようになります。スタートアップ企業の支援を行うことで、将来の優良顧客を取り込み、自社のクラウド・エコシステムに取り込んでいくことが、クラウドビジネスの持続的な成長を支える上で、益々重要な取組みとして位置付けられていくでしょう。

 


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MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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