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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

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2012年9月27日、年休をいただき、国際大学GLOCOM客員研究員兼ブロガーの立場として、IDCフロンティアのプライベートセミナーに参加してきました。自分が座る席は、PRESS席でした。会場には、総勢百数十名の、IDCフロンティアのサービスを利用しているユーザー様、パートナー様、そして、報道機関(メディア)が参加していました。 

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今回のセミナーの主なテーマは、 

2012年10月1日に福島県白河市に新設する「白河データセンター」と、分散型データベースとクラウド・ストレージ・ソフトウェアを提供するバショー・テクノロジーズ(Basho Technologies, Inc)の日本法人バショー・ジャパンの設立によるIDCフロンティアのBashoのソフトウェアを採用したサービス展開についての2つです。 

Bashoは、ヤフーとIDCフロンティアと2012年7月17日に戦略的提携を締結し、IDCフロンティアによるBashoへの戦略的資本提携をしており、今回の日本法人設立を機にサービス開発が本格的に展開されるようです。 

日本語のページも公開しています。 

image
http://basho.co.jp/ 

まずは、白河データセンターの話に触れてみたいと思います。IDCフロンティアでは、東京・首都圏・北九州と3つの拠点による「トライアングル・メガデータセンター構想」を展開しています。 

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今回、白河データセンターの新設によって、この構想を具現化しています。白河データセンターの大きな特徴は、外気空調を活用し、PUEが1.17を実現するとのことです。また、6棟以上のデータセンターの拡張が可能で、3,600ラック、144,000サーバ相当の設置が可能といいます。ソーラチムニーや超低流体抵抗構造を採用しているとのことです。 

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福島県は、震災や原発の影響などにより、人口減少による地域経済の地盤沈下が深刻な問題となっていますが、データセンター新設による地域経済への貢献も期待されます。 

白河データセンターは首都圏から若干離れていますが、クラウドに対応したAII光化で超高速のネットワーク環境を実現し、東京郊外並のレイテンシーが実現可能とのことです。 

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これらのメガデータセンター環境を実現することで、IDCフロンティアが次に強化をしているのが巨大分散型ストレージサービスとデータベースです。 

IDCフロンティアでは、これまで、IaaSレイヤを中心にサービスの拡充を図ってきましたが、Bashoとの提携により、ビルディングブロックはより上位レイヤ層までサポートすることになります。 

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次に、Bashoの最高経営責任者(CEO)であるドナルド J. リパート(Donald J. Rippert)氏からのプレゼンテーションです。 

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Bashoの製品はRiakという製品群です。Riakの製品群には、オープンソースのNoSQLの分散型データベースの「Riak」と商用の分散型データベースの「Riak EnterpriseDS(EDS)」、そして、分散型クラウド・ストレージの「Riak CS」で構成されています。 

オープンソースはgithubで公開されています。オープンソースと商用データベースの違いは、商用データベースでは、データセンターのアプリケーション機能がついており、監視と24時間のフルサポートがついています。 

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分散型データベースの「Riak EDS」と分散型ストレージの「Riak CS」との関係は以下の図でまとめられています。 

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1. 分散型ストレージの「Riak CS」は、RESTインターフェイス(Amazon S3 API)を提供
2. オブジェクトストレージを小さく分割して、分散型データベースの「Riak EDS」へ保存
3. 全てのオブジェクトは、分散型データベースの「Riak EDS」ノード(KVS)へ保存される。分割されたオブジェクトはノード間で最適配置が自動実行される 

となっています。 

BashoのRiakを採用しているユーザは、Citiをはじめとした金融機関やAT&Tなどの多くの大手企業に採用されるなど、実績も十分です。 

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採用事例の中で、興味深かったのは、医療機関での採用です。AT&Tでは、Riakを採用し、PHR(Personal Health Record)の実現において、医療カルテのデータを対象にアーカイブしています。HA(High Availability)の構成をとるなど安全性の高い構成をとり、医療分野におけるアップストア的な利用をしているとのことです。 

分散型ストレージが医療分野に採用され、患者データをセキュアに安全に保管できるようになれば、医療分野におけるクラウド採用の動きが加速していくことが期待されます。 

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最後に分散型ストレージの利用ケースについての紹介がありました。

ストレージはアップロードが遅く、I/O性能において懸念されるケースがあるとのことですが、Riakの製品では、S3と比べてもI/O性能において最大10倍程度の性能差があり、コンテンツ配信の利用などに適しており、さらにKVSとしての利用も可能とのことです。 

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AmazonのS3を意識した資料が続きます。Riakの製品は、情報公開をしていないS3と比べて技術仕様がオープンにされておりユーザ自身が技術仕様を理解した上で採用できるというメリットをあげています。また、プライベートクラウドや自社のオンプレミスとの連携なども可能とのことです。 

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最近では、Cloudianをはじめ、Amazon S3互換APIを具備したストレージサービス、ソリューションが提供されています。「Riak CS」においても同様にS3 APIに準拠しており、S3対応のライブラリやツールの利用が可能とのことで、開発資源の有効活用や、S3からの移行が実現できるとのことです。 

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IDCフロンティアの今後のサービスのロードマップの展開ですが、2012年10月30日にトライアル環境を無償で提供するとのことです。 

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そして、2012年12月3日にはβ環境を提供し、リリース環境の先行利用ができるとのことです。 

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Q&Aのセッションでは、今後のサービスの提供価格についての質問があり、社長の真藤豊氏からは「S3と比べても魅力的な価格で出していきたい」とコメントされるなど、S3に対抗できるサービスランナップと価格を提供する方針を示しています。 

今回のセミナーに参加しての全体の感想ですが、今回のBashoとの提携は、社長自らの積極的な発言や、百名を超える参加者、そして、社員総動員によるアテンド、会場の雰囲気(+食事)など、相当な意気込みを感じ取ることができました。 

今後、IaaSレイヤの市場は、仮想マシンから、ビッグデータの市場拡大などにより分散型ストレージ領域への市場が大きく拡大していくことが予想され、Riakに代表されるようにS3 API互換の分散型ストレージのサービスやソリューションが国内においても登場されることが予想されます。分散型ストレージの市場は、今後さらに注目される市場の一つになるでしょう。 

帰りには、ケーキやゴルフボール、BashoのTシャツやステッカーをいただきました。 

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それから、六本木ヒルズ51Fからの景色も最高でした。 

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MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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