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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2012年5月28日

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第一回はクラウド・エコシステムの概要、第二回は登場の背景、第三回は注目される6つの理由、第四回はSIビジネスの今後、第五回はコミュニティの存在、第六回はクラウドを推進する団体、第七回はオープンクラウド、第八回はクラウド・エコノミクス、第九回はソーシャルキャピタル、そして第十回ではグローバル市場について整理をしてきました。

今回は、全体最適化を志向した「組み合わせ型」モデルについて、整理をしていきたいと思います。

かつて、イギリスでは18世紀後半に産業革命が始まり、「工場制手工業」から「工場制機会工業」への技術革新が進み、やがて世界中に広がり、産業の変革とそれに伴う社会構造の変革をもたらしました。地球規模での「分業」による大変革が起こり、ここから、資本主義社会、工業化社会が誕生しました。そして、「工場制機械工業」で大量生産された工業製品を輸出していくために、植民地の獲得競争が起こったのです。

クラウドの登場は、この産業革命に匹敵する社会構造の変革をもたらし、自社での「保有」から、サービスとして「利用」するモデルへと進化し、世界各地の巨大なデータセンターで大量生産されたコンピュータリソースをユーザに配分するための、地球規模でのマーケットの獲得競争と「世界分業」が進み、世界規模でイノベーションを生みやすい環境を作っているのです。クラウド・エコシステムの潮流は、いわゆる産業のサービス化における「世界分業」を加速化させていいるといえるでしょう。

全体最適化志向の「組み合わせ型モデル」へ

産業革命のような動きは、世界をリードする複数のIT企業によって、市場の覇権争いが繰り広げられ、ものづくり、サービス、コンテンツのレイヤーを超え、クラウドと融合し、レイヤー構造化、そして全体最適化されたクラウド・エコシステムなどによる新たな産業と社会構造の変革が起きています。

つまり、あらゆるモノがネットワークにつながる以前の「部分最適」からネットワークにつながった後の「全体最適」化に、競争優位の源泉がシフトしているといえます。

クラウド・エコシステムには、全体最適化を「全体最適」を志向した上で、グローバル市場における利用ユーザの根本的ニーズを見据え、グローバル市場を俯瞰し、自社のコアとなる領域を設定し、最適な事業アーキテクチャーを自ら設計することが不可欠となっています。

image

出所:産業構造審議会情報経済分科会中間とりまとめ 2011.8.11

中でも、日本企業特有の調整しながら作りこむ「すり合わせ型」のモデルだけでなく、必要な要素(標準)技術やコンテンツ等を使った「組み合わせモデル型」による自社・他社領域の最適な設計を行い、顧客価値を創り出すことが、市場での優位性を高めていく上で重要となっています。

クラウド・エコシステムにおいて競争力の源泉となるのは、自社による組み合わせ型モデルによる最適化されたプラットフォームです。それらの設計を担い、インテグレータ機能を押さえ、さらには、競争優位を確保するグローバルアライアンスを形成していくことが、持続的なエコシステムを形成していく上でも重要な戦略となるでしょう。

 

※担当キュレーター「わんとぴ

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MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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