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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2012年5月24日

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第一回はクラウド・エコシステムの概要、第二回は登場の背景、第三回は注目される6つの理由、第四回はSIビジネスの今後、第五回はコミュニティの存在、第六回はクラウドを推進する団体、第七回はオープンクラウド、そして、第八回ではクラウド・エコノミクスについて整理をしてきました。

今回は、クラウド・エコシステムにおけるソーシャル・キャピタルの役割について整理をしてみたいと思います。

クラウドの今後の成長が期待されていますが、IT業界全体でみると、まだクラウド関連の売上比率は低く、クラウド関連の案件に関与する人材は必ずしも多いとは言えない状況です。

クラウド市場成長に伴う業界全体の底上げによる持続的なクラウド・エコシステムを

今後のクラウドコンピューティングの市場成長を踏まえ、クラウドビジネスやテクノロジーに対応した人材育成や、技術の成熟など、そして、普及推進活動など、業界全体の底上げをしていく必要があると考えられます。

クラウドビジネスを推進していくにあたっては、自社の目先の利益だけはなく、パートナ企業との中長期的なWin-Win関係を築ける環境が重要となります。サービスの展開にあたっては、サービス連携などの技術検証なども必要となります。クラウド関連の技術は、まだ成熟していない技術なども多く、検証機会を増やしていく必要もあるでしょう。

先日、オープンクラウド実証実験タスクフォースセミナーでアンケートを開催し、アンケートを実施しました。アンケートには、オープンクラウドの普及に向けて、業界全体の底上げやサービス連携の必要性、人材育成、普及推進活動、利用事例の拡大、クラウド関連技術の公開資料の充実などの意見が多くみられました。参加者の多くは、取り組みの重要性を感じつつも、解決していくべき多くのテーマが山積しているという意識を持たれています。

これらの課題は、一社のみでは課題を解決することは難しく、クラウド業界全体が、クラウド業界発展のための共通の目的意識を持ち、競争と共創をしながら、業界への貢献する機会を増やし、クラウド業界の底上げを図り、持続性のあるクラウド・エコシステムを形成していくことが必要となるでしょう。

ソーシャル・キャピタルとクラウド・エコシステム

米国の政治学者ロバート・パトナムは、人々の相互信頼と協調行動が、社会の効率化を生み出す要因になるとし、これをソーシャル・キャピタル(社会関係資本)と呼んでいます。ソーシャル・キャピタルは、「社会的信頼」「互換性の規範」「社会ネットワーク」などから成り立っています。

ソーシャル・キャピタルは、政府よって作られた制度や規範ではなく、それぞれが、自発的に営む社会関係であり、コミュニティ全体を豊かにする社会資本を確立することがポイントとなります。クラウド・エコシステムにおいては、各パートナ企業の参加会員のソーシャル・キャピタルが高くなると、各企業における人との絆が深まり、エコシステム全体が自発的な活動しやすい環境になると考えられます。

ソーシャル・キャピタルの高いクラウド・エコシステムの環境を構築するためには、各々の人材が業界の底上げや発展に向けて一緒に汗をかき(よくお酒を飲み)、クラウドの各々の課題を協力して解決に導き、成果を共有するといった共通体験を積み重ねる協働の活動基盤となるクラウド・エコシステムを作ることが大切となるでしょう。

クラウド・エコシステムは、これまでの業界の動きと比較すると、「人」とのつながりが大切であり、ソーシャル・キャピタルを高めていくことが、クラウド業界の持続的な成長を支える原動力となるのかもしれません。

 

※担当キュレーター「わんとぴ

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MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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