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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2012年5月22日

2012年5月23日の投稿

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第一回ではクラウド・エコシステムの概要、第二回では登場の背景、第三回では注目される6つの理由、第四回ではSIビジネスの今後、第五回ではコミュニティの存在、そして第六回ではクラウドを推進する団体について整理をしてきました。

今回は、オープンクラウドについて整理をしてみたいと思います。

2009年3月30日に「オープンクラウド・マニフェスト(The Open Cloud Manifesto)」がWebで公開され、顧客が持つ4つの目標と、クラウドプロバイダが順守すべき6つの原則が示され、発表後、数十企業が参加を支持しました。

顧客が持つ4つの目標

  1. 選択性 - 組織は、様々なベンダの中から自由に選択できることとする。
  2. 柔軟性 - 組織は、異なるクラウドを使用している場合でも協力が可能であることとする。
  3. スピードとアジリティ - 組織は、官民のクラウドを統合するソリューションを容易に作成できることとする。
  4. スキル - 組織は、その能力を特定のクラウドに依存しないユーザにアクセスできることとする。

クラウドプロバイダが順守すべき6つの基本原則

  1. サービスにあたってはオープンスタンダードに準拠する
  2. 市場での地位を利用し独自プラットフォームに縛り付けない
  3. 標準規格を使用する
  4. 新たな規格の作成や変更には注意を払う
  5. 顧客ニーズを重視する
  6. クラウドコンピューティング団体やコミュニティは協調を図る

クラウドコンピューティングの進展に伴い、「オープンクラウド」が注目され、導入が加速することが予想されます。オープンクラウドは、ユーザドリブンのオープンスタンダードなクラウド環境を指し、団体やコミュニティとも協調し、クラウドエコシステムを形成しています。

そして、オープンクラウドの進展には、オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアが大きくけん引しているといえます。

オープンクラウドを構成するソフトウェア/プロジェクト

オープンクラウドを実現する技術には、オープンソースのクラウド基盤となるIaaS基盤ソフトウェアがあります。OpenStackやCloudStackに代表されるように、サーバ、ネットワーク、ストレージなどを統合的に管理し、ユーザの要求に応じてオンデマンドで指定されたスペックの仮想マシン(VM)やストレージ領域を提供するなどのセルフポータルサービス機能を提供する。CMS(クラウドマネジメントシステム)とも呼ばれています。

PaaSレイヤではCloud Foundryに代表されるマルチ言語やマルチ開発フレームワークに対応するオープンソースのPaaS基盤があげられます。

ネットワークレイヤではネットワークの構成や機能の設定をソフトウェアによってプログラマブルに行える仕組みであるSDN(Software Defined Networking)を実現するOpen Flowなどがあげられます。

さらに、データセンターレイヤでもOpen Compute Projectに代表されるように、オープン化がの流れが加速しています。

オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアの採用とクラウド・エコシステム

クラウド業界においては、ITU-T、IEEEなどによるデジュール・フォーラム標準、DMTFやSNIAなどによるデファクト標準化などIaaSや管理系の標準化(インタフェースなど)の動きが進んでいます。

一方、Amazon Web ServiceやGoogleなどのクラウドネイティブ企業はこれらの活動には参加せず、独自APIを展開し、独自のクラウド・エコシステムを形成しています。

これらの中で一つの大きな流れになるのが、オープンソースのクラウド基盤ソフトウエアの採用によるオープンクラウドによる、オープンなクラウド・エコシステムになります。

オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアの採用には、利用者、サービス/SI事業者、開発者にとって、以下のとおりそれぞれのメリットが考えられます。

<利用ユーザ>
・1社に依存するリスク回避(クラウドロックインへの対応)
・高機能で拡張性・拡張性の高いクラウド環境を自社で構築(プライベートクラウド)

<サービス/SI事業者>
・自社開発のみでは競争困難
・ガラパゴス化のリスク回避 (オープンスタンダードへの対応)
・事業者間やコミュニティとの協調によるクラウドエコシステムの形成

<開発者>
・開発コミュニティの充実(CloudStackユーザ会など)
・開発者の相互連携によるサービス創出

オープンクラウドの展開は、OpenStackプロジェクトなど、オープンソースのコミュニティに支えられ、商用サービスとして採用する事業者が加速すると予想されます。

オープンクラウド関連のプロジェクトには、IT業界を代表する企業も多数参加しています。クラウド・エコシステムではAWSが市場をリードしていますが、オープンクラウドによる巨大なクラウド・エコシステムを形成する可能性が考えられ、一つのメインストリームとなるのではと考えています。

 

※担当キュレーター「わんとぴ

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MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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