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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2012年5月13日

2012年5月14日の投稿

2012年5月15日 »

クラウド分野におけるビジネスモデルを考えていく上において、最近議論されているのは、「クラウド・エコシステム」についてです。

では、クラウドエコシステムとは何なのか、少し整理をしてみたいと思います。

クラウド・エコシステムとは何か

エコシステムについて、Wikipediaには以下のことが書かれています。

エコシステムとは、本来は生態系を指す英語"Ecosystem"の日本訳の科学用語であるが、21世紀の日本においては動植物の食物連鎖や物質循環といった生物群の循環系という元の意味から転化されて、経済的な依存関係や協調関係、または強者を頂点とする新たな成長分野でのピラミッド型の産業構造といった、新規な産業体系を構成しつつある発展途上の分野での企業間の連携関係全体を指して用いられることが多い。

知恵蔵2011の解説では、エコシステムについて以下のとおりです。

経営・IT分野の新語。複数の企業が商品開発や事業活動などでパートナーシップを組み、互いの技術や資本を生かしながら、開発業者・代理店・販売店・宣伝媒体、さらには消費者や社会を巻き込み、業界の枠や国境を超えて広く共存共栄していく仕組み。

本来は、生物とその環境の構成要素を1つのシステムとしてとらえる「生態系」を意味する科学用語。(中略)自然界の「生態系」が異質な構成要素によって良好な環境を維持させているように、多様な構成員の相互協力および平等な収益の循環が、エコシステムを健全に機能させる条件と見られる。

小池良次氏の記事「米クラウド業界をふたたび探訪する(1)クラウド・エコシステムはアマゾンをつぶせるか」では、クラウド・エコシステムについて、触れられています。

ユーザーの選択肢を増やし、データの互換性を確保するために、様式のスタンダード化や標準推奨モデルを決めてゆこうとの動きが広がっている。これがクラウド・エコシステムだ。

これらをふまえ、クラウド・エコシステムには、複数の事業者や複数の産業の境界線が融合しあい、多種多用な事業者が協調と競争、そして共創を繰り返す事業環境の中で、共存共栄しあう関係性をベースにしたクラウド環境を構築することが重要であると考えられます。

クラウド環境上には、競争優位の源泉となる事業者同士のリソースを組み合わせ、イノベーション創出を生み出すとともに、事業領域が健全に運営されていることが持続性のある事業の発展にもつながることでしょう。

クラウド・エコシステムの健全性には、クラウド上で、持続的に新サービスを提供できる生産性、そして、エコシステムの中で価値創造が可能な環境であり、価値を共有することで、相互の信頼関係も維持することが、重要となります。また、急速な技術な革新や競合会社のサービス登場にも事業自体が混乱しない堅牢性の高い環境も構築しておくことも必要となるでしょう。さらに、事業者の多様性の存在が持続的なイノベーションの源泉になると考えられます。

オープンスタンダード化もしくはデファクトスタンダード化されたクラウド・エコシステムは、多くの関係事業者やグループを集約するプラットフォームとしての役割を担います。この場となるクラウド・プラットフォーム上に多くの関係事業者が集まることにより、外部ネットワークとの連携効果を創造し、新しい事業のクラウド・エコシステムを構築すること可能となります。

さらに、スケール・メリットを獲得できれば、市場へのプレゼンスが高まり、コストの優位性や、ユーザが自由かつ柔軟にサービスを選択できるユーザドリブンの環境が生まれ、さらなるクラウド市場の創出と発展にもつながることでしょう。

クラウド・エコシステムの潮流は、産業構造そのものを大きく変えていく力を持っていると考えられます。

 

 

※担当キュレーター「わんとぴ

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MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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