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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2012年3月20日

2012年3月21日の投稿

2012年3月22日 »

クラウドコンピューティングの市場成長に伴い、雇用創出が期待される一方、ビジネスモデルの転換や人材不足への対応など、対応を急ぐ動きが進んでいます。

■クラウドコンピューティングの市場の成長性

富士キメラ総研は2012年3月19日、「仮想化・クラウドコンピューティング環境に進化する国内ICT基盤市場の調査結果」を発表しました。

2015年度の市場予測は、

●クラウド基盤ソリューション市場 10年度比 2.2倍 6,650億円
●クラウド基盤サービス市場 10年度比 2.7倍 3,022億円
●ネットワークサービス市場 10年度比 9.4%増 1兆4,911億円

と、様々な調査会社と同様にクラウド市場の成長が見込まれています。

その中でもクラウド基盤サービス市場のIaaSとPaaSの分野で、2010年度比で、5.2倍の620億円に達すると予測しています。

PaaSとIaaS市場は10年度の120億円から、15年度には5.2倍の620億円に拡大すると予測する。従来型サービスに代わり、初期コストを抑えてIT資源を利用できるメリットからユーザー規模が急増しているほか、社内向け業務システムとして利用する企業も増加している。複数ユーザー向け共有型サービスは認知度が向上し、サービス信頼性も向上しており引き続き高い成長を予測する。

■クラウド視聴成長に伴う雇用創出への期待

クラウドの市場成長に伴い、雇用の創出も期待されています。

米マイクロソフトは2012年3月5日、調査会社の米IDCに委託したクラウド市場に関する調査白書「Cloud Computing to Create 14 Million New Jobs by 2015」を発表しました。

クラウドコンピューティングへの投資増大に伴い、雇用創出に大きな影響を与え、労働コストの低下やビジネスチャンスを創出し、年間1兆1000億ドルの売上増大が見込み、2011年~2015年に世界で約1400万人分の雇用を生み出し、特に、中国とインドがこれら雇用の約半分を占めると予測しています(関連記事)。

2015年の地域別の関連雇用数は、中国が約463万人で最も多く、次がインド(約212万人)、米国が約110万人で3位、そして、日本は約26万人となっています。

■IT業界で進む人員削減

一方で、クラウドビジネスの市場成長に伴い、IT業界でも人員削減を余儀なくされることも予想されます。「クラウドは“偽りの光”? ~クラウドで5年間に1380万人の雇用が生まれるとの調査」では、クラウド移行によって社内IT関連雇用が減少することを先述した米IDのCレポートが無視しているという点が指摘されています。

また、「人員維持と人員削減 富士通とNEC どちらの決断が正しいのか」にもあるように、必ずしもクラウドによる影響だけではありませんが、SI企業の一部では業績低迷に伴う人員削減の動きが進んでいます。

そして、「クラウドはSIを衰退産業に追込むのか」でも紹介されているように、クラウドはSIerにとっては利益相反であり、クラウドの普及はSIerからビジネスを奪い、衰退産業へと追い込む可能性と、クラウドAPIによるインテグレーションといったように、サービスインテグレーションにビジネスモデルをシフトしていく必要性を指摘しています。

■クラウド人材の不足感

SI業界で人員削減が顕著になりつるあるのに対して、クラウド業界における人材不足が顕著となっています。「米国、クラウドコンピューティング分野の求人が急増」によると、米国 Wanted Analytics が2012年3月13日に公表した調査によると、米国でのクラウド分野のオンライン求人広告数が前年同期比で92%、前々年同期比では実に400%の増加となっています。特にシリコンバレー近郊では人材の奪い合いとなっているようです。

過去4年間におけるクラウド関連の求人広告数動向(出典:Wanted Analytics)
米国、クラウドコンピューティング分野の求人が急増 より

EMCジャパン、“クラウド人材”を育成する教育プログラムを立ち上げ」にもありますが、EMCはクラウドのプロ育成を支援することを目的とした特定ベンダーに依存しない3つの新たなトレーニングプログラムの開始を発表しました。人材の不足感に伴い、EMCのようなクラウド人材を育成するプログラムの増加が期待されます。

■まとめ

クラウドコンピューティングの市場成長に伴い、オープンソースの台頭などによるクラウドのオープン化が進み、次第にコモディティ化が進んでいくと予想されます。そのため、テクノロジーによる差別化よりも、むしろ、エコシステム形成による規模の経済を生かしたサービスモデルモデルの創造が市場をリードしていくことが予想されます。

こいった状況の中、クラウド人材の育成を怠ることになれば、市場の成長に水をさすことにもなりかねません。クラウドの市場成長には、ビジネスモデルや雇用創出とともに、業界としての人材育成にも力をいれていくべき時期にきているのかもしれません。

 

image 「クラウド・ビジネス」入門 電子書籍版刊行

※担当キュレーター「わんとぴ

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MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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