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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

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超少子高齢化、そして、晩婚化・未婚化が進むことで単独世帯が増加し「無縁社会」と呼ばれるように、地縁・血縁型の地域共同体が失われつつある中、家族や地域の絆の再生も大きな課題となっています。

ソーシャル・キャピタルとは?

総務省が発行した「平成22年版情報通信白書」によると、NPOなどのボランティアに参加していない人が9割弱で、今後は参加したい人は5割を超えていますが、参加するきっかけや情報がないことが一つの制約となっています。

米国の政治学者ロバート・パトナムは、人々の相互信頼と協調行動が、社会の効率化を生み出す要因になるとし、これをソーシャル・キャピタル(社会関係資本)と呼んでいます。ソーシャル・キャピタルは、「社会的信頼」「互換性の規範」「社会ネットワーク」などから成り立っています。

ソーシャル・キャピタルは、政府よって作られた制度や規範ではなく、住民それぞれが、自発的に営む社会関係であり、コミュニティ全体を豊かにする社会資本を確立することがポイントとなります。地域においてソーシャル・キャピタルが高くなると、地域の絆が深まり、地域全体が住みやすい環境になると考えられます。

ソーシャル・キャピタルとソーシャルメディアによる感謝貨幣の流通

こういったソーシャル・キャピタルが高い地域をつくるためには、一緒に汗をかき、地域の課題を協力して解決し、成果を共有するといった共通体験を積み重ねる協働の活動基盤をつくることが大切になります。そのきっかけをつくることができるツールの一つに、ソーシャルメディアがあげられるでしょう。

ソーシャルメディアには、「お金」よりはるかに価値のある「通貨」であり、与えることや貢献することによって増え、貯まっていく『感謝貨幣』という考え方があります。『感謝貨幣』は、ソーシャルメディア上で流通することによって、その価値が高まり、人と人とがつながり、ギフト経済圏が形成されます。『感謝貨幣』は、信頼、評判、尊敬、影響力、人脈、好意などの積み重ねから生まれるものと考えられます。

今回の震災では、世界から日本人の秩序のある行動が高く評価をされています。震災直後のソーシャルメディアからもそのような言動が随所に見られました。その背景には、日本人特有の「徳」が存在しているからだと考えられます。二宮尊徳の「報徳思想」や横井小楠の「富国有徳」は経済と道徳の調和であり、日本人は『感謝貨幣』に比較的馴染みやすい歴史的背景をもっていると考えられます。ソーシャルメディアで徳を積めば、『感謝貨幣』の流通はさらに進むことになるのではないでしょうか。

超高齢化が進む中、高齢者のソーシャルメディアの活用も徐々に始まっています。「平成22年版情報通信白書」によると、65歳以上の高齢者のインターネット利用率は、36.9%と全体平均78%と比べると約2分の1と低い数値で、年齢が高くなるほどソーシャルメディアの利用率は低い傾向となっています。一方、年齢が高くなるほど、ソーシャルメディアが、「家族・親戚の絆」「地域住民の絆」「世代間の絆」を深める効果が高いという結果が出ています。高齢者を中心にインターネットやソーシャルメディアの活用の支援をすることが世代を超えた地域の『感謝貨幣』の流通に寄与できると考えられます。

地域において、ソーシャルメディアを通じて、『感謝貨幣』を増やしていけば、人々の協調行動が活発化し、ソーシャル・キャピタルの高いコミュニティを形成する。地域の問題を自律的に解決するとともに、新たな付加価値を生み出し、地方から新たな革命が起こすための土壌づくりができるのかもしれません。

 

 

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MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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