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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2011年7月11日

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2011年7月13日 »

経済産業省は2011年7月8日、「通商白書2011」を公表しました。今回のテーマは、「震災を越え、グローバルな経済的ネットワークの再生強化に向けて」とあるように、震災後のグローバル市場における日本経済のあり方が焦点となっています。

通商白書で記載されている内容のポインをを少しご紹介させていただきます。

新興国が世界経済をけん引する一方、日本を始めとした先進国は回復が遅れ、新興国の存在感が増しています。新興国のGDP構成比は、2010年31.2%→2011年34.0%まであがり、GDP成長率は、新興国平均は、先進国平均の2倍強となっています。その中でも特に中国経済は世界をけん引していますが、足下ではインフレが続いており、「物価安定」が経済運営面での最大の課題となっています。同時に、新興国では人件費高騰が成長課題となっています。

また、日本経済は、投資・貿易の両面で海外経済との結びつきを一層強めており、特に中間財の比率が高まっています。産業構造は、海外生産ネットワークとの結びつきを強めており、国内の生産活動や雇用を確保するためには、より一層の輸出が必要となっています。

特にアジアのインフラ投資ニーズは国内産業への波及効果も期待されています。2020年までに見込まれているアジアにおけるインフラニーズは約8兆ドルとなっており、インプラプロジェクトは巨大な市場であり、国内への生産や雇用への波及効果は高いと言えるでしょう。いかに、アジアの旺盛な需要を取り込むかが、今後日本の成長における大きなポイントとなります。

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震災直後は自動車などに代表されるように輸送機械に大きなダメージを与え、サプライチェーンの寸断が輸出業に大きなマイナス影響を与えました。ですが、調達不足も7月までに相当程度解消見込みとなっています。

そして懸念されるのが、外資系企業の国内退避です。これまで日本に立地する外資系企業は右肩上がりに推移していたものの、一時退避する例があとを絶たず、不安解消に向けた情報提供などの対応が急務となっています。

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震災直後から、日本の株価は主要国に比べ下げ幅が顕著で、低迷しています、このままいけばいけば、日本経済全体が縮小し、立地競争力の低下に繋がることが懸念されています。

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アジア新興国の経済が急成長を遂げている一方で、国内市場は相対的に縮小し、日本の国際的な事業活動拠点としての魅力が薄れつつあるのが現状です。

驚くことに、事業活動拠点としての魅力の現状は、2007では、統括拠点やR&D拠点として一位となっていたのですが、2009年には中国がすべて一位を占める状況となっており、日本は軒並み数値を落としています。

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経済産業省が実施した「東日本大震災後のサプライチェーンの復旧復興及び、空洞化実態緊急アンケート調査」によると、サプライチェーン全体又は一部の海外移転が加速する可能性がある」と答えている企業は69%にものぼっており、日本企業の海外移転が加速し、日本の空洞化が懸念されています。さらに、原子力発電の問題による電力不足が拍車を抱えることになるでしょう。

日本に今求められているのは、EPA/FTAへの取り組みなど経済連携です。

そして、「新成長戦略実現会議」において、「日本国内投資促進プログラム」、「アジア拠点化」、「グローバル人材の育成」、「パッケージ型インフラ海外展開」等の再検証。さらに、当面打つべき対応(サプライチェーン復旧・再構築、風評被害防止策等)に加え、立地競争力の強化、巨大リスクに備えた経済・産業構造の構築、未来を拓く戦略的・重点的イノベーションの推進等を検討する必要があるとしています。これらの中で、「空洞化防止・海外市場開拓戦略」を実施・検討していく必要があるとしています。

これらの資料を見る限り、日本は今、震災の影響による原発問題、経済低迷と産業空洞化の加速、そして、少子高齢化や、社会保障の問題、そして政治の混迷など、課題が山積しており、非常に危機的な状況に直面しています。正直、10年、20年先の日本の将来がどうなるのか、真剣に日本の経済、産業、地域の未来を考え、実行していかなければならない待ったなしの状況にきているのかもしれません。

 

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MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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