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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2011年3月17日

2011年3月18日の投稿

2011年3月19日 »

東北関東大震災の影響で様々な混乱が生じていますが、クラウドの活用や環境のあり方についても様々な議論と検討が進められていくと考えています。今回は、地震(災害)と計画停電の状況をふまえ、自分なりに少し整理をしてみたいと思います。

災害時などにおけるアクセス集中への対応【サービス提供事業者】

被災に関連する情報サイトにはアクセスが集中し、一時期サイトがダウンする事象も見られました。一部のクラウド事業者がクラウドサービスの無償提供を表明し、バックアップサイトやキャッシュサーバを用意する取組みも見られます。

災害時など、不測の事態でアクセスが集中する場合があり、アクセス数の増減にあわせて、リソースを柔軟に配分するサービスとしてIaaSを中心としたクラウドサービスを選択するという考え方は十分に考えられます。今後、こういった状況に対処するためのクラウドサービスや関連ソリューションやコンサルなどが、注目されていくことが予想されます。

災害関連情報を提供しようとする自治体や団体、企業に対しクラウド環境提供リスト」を見ると、クラウドサービスを利用し、東京電力や日本赤十字などミラーサイトが立ち上がっています。

計画停電時のデータセンター運用【サービス提供事業者】

首都圏(東京都内の一部のぞく)では周知のとおり、計画停電が実施され、様々な混乱が生じることが予想されます。クラウドサービスを提供する事業者の場合、特に懸念されるのは、計画停電が実施される地域でのデータセンターの稼動です。

データセンターでは、通常自家発電の設備を備えており、3時間程度の停電であれば問題なく運用されると想定されます。ただ、中さんが「石油燃料が入手できず、計画停電(輪番停電)でサービス停止するデータセンターに要注意」で指摘されているように、計画停電が長期化すれば輪番対象エリアでのサービス運用など何らかの対処が必要となる可能性が考えられます。今回、主な23区内(荒川区のぞく)ではデータセンターは計画停電もなく、首都圏データセンターと最近注目されている郊外型データセンターのあり方についても、今後議論と検討がされていくと考えられます。

【震災関連情報】震災、計画停電、ITベンダー各社、対応やバックアップ体制を急ぐ」の記事では、さくらインターネットやGMOなどの事業者は計画停電でのサービスには問題ないとしています。また「計画停電:主要SIer、データセンターに影響なし」や「計画停電のデータセンターへの影響なし、「自家発電の燃料確保に動く」の記事でも、富士通、NEC、日本IBM、NTTコミュニケーションズなど大手ベンダや通信キャリアのデータセンターの運用にも影響がないとしています。

企業ユーザのBCP(事業継続)への対応【利用ユーザ】

今回の地震及び計画停電において、企業のBCP(事業継続)への対応も議論検討されていくことになると考えています。BCPへの対応は様々な対応が考えられますが、対応策の一つとして通常利用やバックアップとしてクラウドサービスの選択も視野に入ってくると考えられます。特に計画停電が予定されている地域においては、オンプレミスの情報システムがある場合は、運用管理が大変になり、クラウド側にバックアップもしくは移行も視野にいれることも検討してみる必要があるでしょう。また、紙媒体で保存している場合、今回のような震災にあった場合を想定し、文書管理用にクラウドストレージのサービスを利用することも賢明なのかもしれません。

当面は、「法人のシステム復旧に向け、国産ベンダー各社が対応」の記事にもあるように、計画停電時における適切な手順によるシステム停止の対応や、復旧に向けた対応が中心っていくと考えられます。

また、仮にクラウドを利用できたとしても、パソコンの場合では数時間程度は電源がなくても大丈夫かと思いますが、固定のインターネット通信が利用できなくなるのを想定し、モバイル通信をバックアップとして準備しておくことが重要となるでしょう。

そして、今回のように鉄道の運航も制限されている場合は、自宅で業務ができるようなテレワーク業務の制度面とシステム面での対応がさらに重要となってくるのではないでしょうか。

政策の対応

クラウドの潮流により、海外発のトラフィックは増加傾向にあり、データが海外に蓄積されるといったように、情報の空洞化が懸念されています。しかしながら、今回のような事態では、できるだけ対象エリアのデータセンターの稼動や情報システムの稼動を最小限に押さえ、電力量を確保することが重要となります。政府としても、今回のような大規模災害を想定し、海外でのデータ保管のあり方を制度面などからも議論していく必要があるのかもしれません。

一方、「海底ケーブルに一部損傷-アジア通信各社、影響阻止に全力」の記事にもあるように、一部海底ケーブルの損傷が確認されており、海外にデータのあるクラウドサービスにアクセスする場合、状況によってはこれまでよりも遅延などを感じることが想定されます。

現在、企業ユーザで利用しているサーバーなどは通常時において、数割程度しか利用していないと言われており、クラウド側にリソースを集中させ、効率的に電力を使うといったことを政策面からも支援する必要があるかもしれません。

まとめ

非常に大まかな流れでの解説となりますが、いずれにしても、今回の大規模災害と計画停電などを想定したクラウド活用や環境のあり方が、議論検討されていくと考えています。クラウドにもメリットデメリットがあり、定義も曖昧で必ずしも万能ではありませんが、今回改めて、クラウドの今とこれからについて、提供ユーザ、利用ユーザ、そして、政府それぞれの立場で考えていく契機となったのかもしれません。

 

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MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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