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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

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2010年8月27日の投稿

2010年8月28日 »

クラウドの導入が進んでいると、IT業界の構造の転換も求められますが、その中で、営業のあり方も再構築も重要となってくると考えています。

これまでは、例えば、5年ごとのシステム更改時期に更改提案をすれば良かったのですが、クラウド側でバージョンアップされてしまうために、そういった提案手法も今後なかなか通用しなくなる可能性が考えられます。

また、「クラウド時代の営業力」の中でもご紹介させていただきましたが、SI(システムインテグレーション)の案件と比べて1案件あたりの受注金額が低く、営業としては、なかなかモチベーションがあがらないでしょう。クラウドを中心とした営業になれば、これまでの以上に多くの案件数に対応していく必要があります。つまり、薄利多売の転換が求められます。営業の人員を配置していると、コスト高の構造になり、今までの営業スタイルであれば、今以上の営業担当者の人数は必要なくなるでしょう。

また、お客様の提案にあたっても、従来のシステム更改提案とは異なるため、どのような提案をしたら良いのか、そして、どこの部署をターゲットにすればいいのか、見極めが難しくなります。クラウドの導入に関心があるのは、情報システム部門よりもコスト削減や攻めの経営に関心の高い、経営陣と考えることができます。つまり、受注獲得のためのトップセールスなど、経営者に向けたアプローチが重要となります。また、クラウドの導入は情報システム部門ではなくても、総務・人事部や営業部門でも経費として導入することができます。そのため、情報システム部門への一辺倒の営業では、受注獲得が難しくなるのかもしれません。

また、クラウドの提案や商材は、これまでのSIソリューションと比べると実績も少なく、ノウハウが社内に蓄積されていないことも多々あります。ユーザ側としても導入実績を気にされることでしょう。また、クラウドのセキュリティやサービス品質などについてもユーザの不安を払拭させていくことも必要でしょう。何よりも、クラウドを導入することで、コストメリットを訴求できなければ、ユーザ側が導入に踏み切ることはなかなか難しいでしょう。

そして、一番心理的なハードルが高いと思われるのが、クラウドを提案し続けることによって、1件1件の受注金額が縮小し、営業の人員カットが始まり、将来の営業の仕事がなくなってしまうのではないかという不安です。特にSIを中心に営業をしていたITベンダは、そういった危機感を持っているのかもしれません。

一方、ユーザ側は、クラウドの動きに伴い、要望も変化してきています。NTTコミュニケーションズが、2010年5月に実施した「企業のクラウドサービス 導入意向アンケート調査結果」によると、「今後クラウドサービス利用において、どのようなサービスを充実してほしいと思いますか」という設問項目では、

  • クラウド導入の技術的な構築支援【40.7%】
  • クラウド導入コンサルティング(業務仕分け、ロードマップの策定等)【33.7%】
  • クラウドのプラットフォームにおけるセキュリティへの第3者評価【33.7%】
  • 低価格の低廉化【33.7%】
  • 既存システムも含めた全体システムに対するセキュリティサービス【32.6%】
  • ネットワークの最適化支援【27.9%】

が上位を占めています。

ユーザ側は、クラウド導入のための中長期的なロードマップやシステムの仕分け、そして、導入に向けての技術支援などが重要になってきているといえるでしょう。営業担当者としては、そういったユーザ側の要望を加味しながら、提案活動を進化させていく必要が出てきています。

クラウド導入の流れは、必ずしもIT業界にとっては、プラスに作用するとは限りません。むしろ、規模の経済が働き、業界での勝者と敗者の優劣がはっきりすることになるでしょう。新たなビジネスモデルの構築とアプローチが求められています。営業はこれらの環境の中で、どのような対応をしていくべきか、10年先なかなか見えない中で、真剣に営業のあり方を考えていく時期に来ているのかもしれません。

MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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