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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2010年6月23日

2010年6月24日の投稿

2010年6月25日 »

高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部は、6月22日、「新たな情報通信技術戦略 工程表(案)」を公表しました。

工程表作成の目的は、5月11日に公表した「新たな情報通信技術戦略」の実現に向けて、期限を区切って、施策担当府省の具体的取組を明記し、各府省連携が必要な施策においては、個々の役割分担と達成すべき事項を明確化するためです。

工程表作成にあたっては、「新たな情報通信技術戦略」に記載された具体的取組(参考)ごとに、30の工程表を作成しています。工程表は、重点施策の実現に向けて各府省の具体的取組を年度展開として示し、各府省連携の在り方が記述されています。また、各府省の役割を明確化するため、工程表には、短期(2010 年、2011年)、中期(2012 年、2013 年)、長期(2014 年以降)ごとに求められる各府省の具体的な取組を記載した資料(「各府省の取組」)が添付されています。

いろいろとりあげてみたい工程表があるのですが、まず、「クラウドコンピューティグサービスの競争力確保等」の工程表を少し整理してみたいと思います。工程表は、以下のように「データ利活用による新産業創出」、「データセンターの国内立地の推進」、そして、「関連技術の標準化等」の3つに分類されています。

image 

短期(2010 年、2011 年)の目標設定としては、   
クラウドコンピューティングサービスの拡大及びデータセンターの国内立地を推進するための環境整備を実施するとしています。省庁別では、

総務省

  • 新サービスの実証実験を実施(経済産業省及び関係府省と連携)
  • クラウドコンピューティングサービスの利用に当たっての政府・自治体のクラウド調達基準等を策定、安心・安全な利用環境を実現し責任関係・品質等を明らかにするガイドライン・SLA 等の整備(経済産業省及び関係府省と連携)
  • データセンターの国内立地を推進する特区制度の創設・規制緩和等の環境整備(経済産業省と連携)
  • 次世代クラウドコンピューティングを実現する技術開発(ネットワーク関連技術等)と標準化の推進(経済産業省と連携)

経済産業省

  • 新サービスの実証実験を実施(総務省及び関係府省と連携)
  • グローバルコンソーシアム等における社会インフラの海外展開にクラウドコンピューティングの活用を推進(関係府省と連携)
  • 安心・安全な利用環境を実現し責任関係・品質等を明らかにするガイドライン・SLA 等の整備(総務省と連携)
  • 中小企業のクラウドコンピューティングサービスを拡大する中小企業への投資・インセンティブ付与等の制度整備
  • データセンターの国内立地を推進する特区制度の創設・規制緩和等の環境整備(総務省と連携)
  • 次世代クラウドコンピューティングを実現する技術開発(データセンター関連技術等)と標準化の推進(総務省と連携)
  • システム信頼性評価指標の開発(総務省と連携)

関係府省 :

  • データ利活用を促進するための制度見直しの検討

新サービスの実証実験やガイドライン・SAL等の整備、そして、データセンターの国内立地を推進する特区制度の創設・規制緩和等の環境整備などについては、総務省と経済産業省などとの連携施策となります。

工程表の中では、情報通信技術の利活用が遅れている分野、大容量データを扱う分野、社会インフラ分野なででクラウドコンピューティングサービスの普及を目指した実証実験をするとしています。例としてあげられているのが、政府・自治体、医療、健康、教育、農業、金融、流通、中小企業、新しい公共、スマートグリッド、次世代ITS、センサーネットワーク、生産管理、道路等の施設管理があげられています。これらの方向性については、「スマート・クラウド研究会報告書」などで、霞が関クラウドや自治体クラウド、教育クラウドのあり方などについて記述されています。

また、「政府・自治体のクラウド調達基準等の検討」とあるように、政府共通のプラットフォームなどを構築することによって、効率的な調達によるコスト低減が期待されます。同じく「スマート・クラウド研究会報告書」では、「クラウドサービス調達のための指針」について記載されています。

そして、重要な位置づけとなるのが、「データ利活用を促進するための制度見直しの検討」です。「情報通信技術利活用促進一括化法(仮称)」の策定が検討されており、これからの法制度が整備され、規制か緩和されることになれば、データセンターの立地も含めた、クラウドコンピューティングの普及を後押しするかもしれません。

中期(2012 年、2013 年)の目標設定としては、   
次世代クラウドコンピューティングサービスの提供、アジア市場の取り込みを実現するための実証実験・海外展開・制度整備・標準化活動等を実施するとしています。省庁別では、

総務省 :

  • 新サービスの実証実験を実施(継続)、技術開発と標準化の推進(継続)

経済産業省:

  • 新サービスの実証実験を実施(継続)、グローバルコンソーシアム等における社会インフラの海外展開にクラウドコンピューティングの活用を推進(継続)、技術開発と標準化の推進(継続)

と、総務省と経済産業省ともに、実証実験や技術開発と標準化の推進は継続的に実施されるようです。

以上です。

MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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