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2010年6月17日の投稿

2010年6月18日 »

6月16日~18日まで「スマートグリッド展2010」が開催され、多くのセミナーが満席となるなど、スマートグリッドが俄然注目を浴びています。

経済産業省は6月15日、「スマートコミュニティフォーラムにおける論点と提案」をとりまとめ公表をしました。本とりまとめでは、スマートメーター、家庭内情報の利活用、デマンドレスポンス、インフラバッテリー、国際展開戦略、国際標準化等の10の論点が整理されています。

とりまとめを行った「スマートコミュニティ関連システムフォーラム」(事務局:経済産業省)では、スマートグリッドやスマートコミュニティに関連する企業が集まり、民間主導で議論を進めています。

本フォーラムの狙いとしては、

  • 低炭素社会の実現に向けた「需要サイド」からの対策による可能性の追求
  • スマートコミュニティのあるべきビジョンの共有
  • システムのアーキテクチャーと各要素のあり方の明確化
  • システムとして海外展開するためのアライアンス形成と戦略づくり

の4つをあげています。

フォーラムのこれまでの成果と今後の展開では、

  1. 「スマートコミュニティ・アライアンス」の設立
  2. 業種を超えたビジョンや課題の共有
  3. プレイヤー毎のスタンスの共通点・違いを明確化
  4. スマートコミュニティの国際展開の推進
  5. その他の動き(国際標準化の動き、国内実証4地域確定、次世代自動車戦略策定など)

をあげています。

本資料の中では、「スマートコミュニティ」の可能性について、以下のとおり様々な観点から可能性を分析しています。

情報の観点からは、

これまでパソコンや携帯電話に閉じていた情報ネットワークの世界が、家庭内の各家電、エネルギー機器、自動車などがつながるホームネットワークにまで拡がり、いわゆる「モノのインターネット    
(Internet of Things)」の世界が誕生

家電のデマンドレスポンス、太陽光発電の出力抑制、電気自動車の充電タイムシフトなどが遠隔操作で行われ、電力会社の情報制御ネットワークが各家庭(スマートハウス)までつながり、情報ネットワークとエネルギー機器の融合化が起こる。

新しい情報ネットワーク(第2のインターネット)である      
・モノとモノ、モノとヒトをつなぐ新しい情報ネットワーク      
・エネルギー機器と情報ネットワークが融合化したシステム

エネルギーの観点からは、

低炭素社会の実現に向けて大量導入が必要となる太陽光発電、風力発電などの自然エネルギーを最適に利用するための新しいエネルギーシステム

供給側での制御だけでなく、蓄電池やデマンドレスポンスの活用によって需要側と供給側の連係プレーで最適制御するシステム(分散型ネットワーク事業者がコミュニティ内の統合制御を実施し、大規模集中型ネットワークとの相互制御で調整するシステム)

家電、家庭用蓄電池、電気自動車、燃料電池などがエネルギーシステムの構成要素となりうる世界

新しいエネルギーシステムである      
・集中電源、分散電源、蓄電池を統合化したエネルギーシステム      
・太陽光発電の大量導入を支えるエネルギーシステム      
・エネルギー運用に需要家も参加可能なシステム

交通システムの観点からは、

電気自動車やプラグインハイブリッド自動車が単なる交通手段だけではなく、「動く蓄電池(インフラバッテリー)」としてエネルギーシステムと融合し、エネルギーと交通の融合化が起きる

最適なエネルギーマネジメントと交通管理を同時に行うため、エネルギーシステムとITSが融合化するとともに、自動車1台1台がセンサーとしても活用される「動き・つながる家電」と化する

蓄電池技術、センサー技術、制御技術の進化で、電池交換式の電気バス、駅ごとに充電して走行する架線レスLRTなど新しい交通システムが誕生する

新しい交通システムである      
・蓄電技術をコアにエネルギーと交通が融合化したシステム      
・自動車がセンサーとしてネットワーク化されたシステム      
・利便性が高く、環境に優しい交通システムも誕生

街づくりの観点からは、

緑地、農地、河川、湖などの自然を活かした新しい街づくりを行うことによって、自然のサイクルを無視した生活から、自然のサイクルを重視した生活へシフト

自然風、太陽熱、自然光などを有効利用できるように設計された街づくりや建築物により、快適性向上と省エネを両立した生活空間を実現

自然との共生、人間同士のつながりを重視した新しいコミュニティの構築      
・快適性向上と省エネを両立した新しい街づくりである      
・自然との一体感を感じられる街並み      
・快適性向上と省エネを両立した生活空間

と各々分析しています。

以上の観点から、スマートコミュニティとは、新しい社会インフラであり、新しい街づくりのコンセプト   
とし、以下の4つでまとめています。

  • 新しい情報ネットワーク
  • 新しいエネルギーシステム
  • 新しい交通システム
  • 快適性向上と省エネを両立した新しい街づくり

スマートコミュニティのイメージ図として、「インフラ」と「街づくり」の視点で掲載されています。

新しいインフラとしてのスマートコミュニティのイメージ

image

新しい街づくりとしてのスマートコミュニティのイメージ

image


これらの膨大なテーマを整理していくために、以下のように議論の論点があげられています。   

(1)情報システムの論点      
‒ 論点① スマートメーター/ホームサーバー及びホームネットワーク    
(情報システムアーキテクチャー)      
‒ 論点② ホームネットワークへの接続(情報システムアーキテクチャー)      
‒ 論点③ 家庭内情報を活用した新サービス創出      
‒ 論点④ 家庭内情報の収集・管理・利活用のルール      
(2)エネルギーシステムの論点
      
‒ 論点⑤ 需要側対策の可能性      
‒ 論点⑥ デマンドレスポンスの可能性      
‒ 論点⑦ 太陽光発電の出力抑制/蓄電      
(3)交通システムとの融合に関する論点
      
‒ 論点⑧ インフラバッテリーの可能性      
(4)国際展開戦略に関する論点
      
‒ 論点⑨ 社会システムの国際展開戦略      
(5)ビジネスモデル戦略に関する論点      
‒ 論点⑩ 国際標準戦略(オープン/ブラックボックス)

そして、今後の対応ですが、

  1. スマートコミュニティのビジョン共有
  2. 官民で連携した戦略構築
  3. スマートコミュニティの実現に向けた地域実証の開始
  4. スマートコミュニティのアーキテクチャ・システム構築、国際標準展開
  5. スマートコミュニティ・システムの海外展開

をあげています。

スマートコミュニティはいろんな観点から見て、非常に大きな可能性をもっており、環境分野を中心とした市場成長を大きく牽引するテーマだと思います。議論すべき論点も多く、多くのプレイヤーがうまく連携しながら、海外市場とも競争をしていく必要もあるでしょう。スマートコミュニティが描いているように実現できるのか、中長期ビジョンでの対応がどの程度まで実現に結びつくのか、今後の動きが注目されます。

MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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