『ビジネス2.0』の視点:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 『ビジネス2.0』の視点

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2010年3月16日

2010年3月17日の投稿

2010年3月18日 »

週刊エコノミスト(2010.3.23)に慶応大学の國領二郎先生の「ネットコミュニティが変える政策決定過程」という記事があり、大変興味深く読ませていただきました。

國領先生はこれまで、政府の様々な有識者会議で委員をされているだけに、政策決定プロセスにおいてソーシャルメディアの存在感を大きくとりあげているところは、大変注目されます。

印象に残った内容を少しご紹介したいと思います。

情報が権力だとすると、情報の拡散は権力の拡散を意味する。この影響をもろに受けたのが「霞が関」(中央省庁)であると言っていいだろう。かつては圧倒的な情報優位を背景に、主導権を掌握し、集めた優秀な人材で情報処理をすることで、この国の舵取りをしてきた。

そして、ツイッターに代表されるソーシャルメディアの台頭によって、   

これまでなら、役所が審議会などで集約して政治家にあげていた意見を、役所を経由せずに直接政治家に届ける流れをつくっている。共感を集めた意見に反応した大臣がトップダウンで指示を出すようなこともありうる。このような流れをネットコミュニティによる政策立案への参加という表現でとらえることができるだろう。

実際に原口総務大臣は、ツイッター で積極的にメッセージを発信し、ユーザからの声に耳を傾けています。おそらく、政策にも一部反映されているのかもしれません。先日のブログでもご紹介させていただいましたが、私自身も一度原口大臣と情報通信政策についてやりとりをさせていただきました。私自身政治家がとても身近に感じた瞬間でした。鳩山首相もツイッターを今年の正月から始めており、フォロワー数は40万を越えています。

各省庁でも国民からの意見を広く募集する施策を展開しています。

経済産業省は、「アイデアボックス」を2010年2月23日から3月15日までの期間開設し、IT政策に関する意見を国民から募集しました。3月15日時点で、登録ユーザ数は3799、アイデア数は936、そしてコメント数は5974となっています。ツイッターでは、ハッシュタグ #openmeti を使い、引き続き政策に関する意見がつぶやかれています。

総務省は、「総務省のクラウド研究会、ツイッターで“パブコメ”募集」をしているという記事が紹介されています。ハッシュタグ #scloud を使っています。記事には、

総務省のスマート・クラウド研究会が、初の試みとしてミニブログ「Twitter(ツイッター)」を使い“パブリックコメント”を収集している。2月10日に日本のクラウドコンピューティング戦略についての中間とりまとめ案を公開し、3月9日までメールや郵送などでパブリックコメントを受け付けているが、これとは別のルートとしてTwitterを活用する。

と書かれています。公式にパブリックコメントを募集しているわけではありませんが、研究会の報告にて一部紹介される模様です。私自身も、スマート・クラウド戦略に関するブログを8回に分けて書かせていただき、#scloud にもつぶやいてみました(関連記事)。

総務省が、2月10日に発表した「スマート・クラウド戦略」の中間報告では、『国民に開かれた「オープンガバメント」の推進』という文言も書かれており、ソーシャルメディアを活用して国民の声を募集するという流れはさらに広がりを見せることになるでしょう。

参考に米国の事例を紹介しましょう。オバマ政権は開かれた政府(オープンガバメント)を目指し、国民の意見を積極的に取り入れていくことを目標とし、2009年5月21日には、「オーブンガバメントイニシアティブ(Federal Cloud Computhing Initiative)」を発表しています。米国のオープンガバメントには以下の3原則があります。

  • Transparancy(透明性 ・・政府は、国民に対する責任を果たすために、情報をオープンにし、提供しなければならない
  • Participation(国民参加・・政府は、知見を広く国民に求め国民の対話を行い、利害関係者グループ外の人々に政策立案過程への参加を促さなければならない
  • Collaboration(官民連携 ・・組織の枠を超えて政府間および官民連携し、イノベーションを促進しなければならない

國領先生の記事でタイトル「ネットコミュニティが変える政策決定過程」を補足する文言に、

ネットによる政策決定過程への参加の広がりは、情報と権力が「霞が関」から個人に拡散し始めたことを意味している。

と書かれています。

ツイッターに代表されるソーシャルメディアによるネットコミュニティがこの先、そこまで政策決定過程に反映されるのか、これからの政府の政策の動向が注目されるところです。

MASAYUKI HAYASHI

« 2010年3月16日

2010年3月17日の投稿

2010年3月18日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

詳しいプロフィール

Special

- PR -
最近のトラックバック
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
business20
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ