『ビジネス2.0』の視点:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 『ビジネス2.0』の視点

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2010年3月3日

2010年3月4日の投稿

2010年3月5日 »

日経ビジネス(2010.3.1)の特集は「環境後進国 ニッポン ~25%削減よりも恐ろしい現実」です。日本は太陽光発電や蓄電池などで世界をリードするであり、政府の経済成長戦略や経済産業省や総務省などは環境を重点分野として取り組みを強化しています。

では、何故、日本は環境後進国なのでしょうか? 日経ビジネスのポイントを少し整理してみたいと思います。

世界と比較すると日本はあまりにも市場規模が小さい

国連環境計画(JNEP)の2009年の数値によると、「クリーンテックへの地域別投資額」は、欧州(413億5000万ドル」、中国(308億1000万ドル)、米国(163億5000万ドル)、ブラジル(64億8000万ドル)、インド(23億9000万ドル)、中東・アフリカ(17億6000万ドル)、そして日本は(8億7000万ドル)となっています。日本は環境分野で世界と勝負していかなければ、市場の拡大は望めません。

日本企業の存在感

アブダビが約2兆円を投じる世界最大規模の環境都市「マスダールシティー」の建設では、日本の存在感はほとんどないようです。大規模太陽光発電所では京セラが敗れ、三井造船やコスモ石油などのチームにとどまっています。日本はコスト面で劣勢に立たされており、それ以上に深刻な問題として日本企業の腰の重さを指摘しています。中東に対して腰が引ける日本企業が大半であり、意思決定のスピード、金融スキル、語学力を含めたコミュニケーション能力を高めないと世界では勝ち抜けないという指摘がされています。

その他、台頭する米中企業が、世界での流通・販売網を続々買収するなど、開発から販売まで、バリューチェーンを見据えた事業モデルの構築に果敢に挑んでいるという事例が紹介されています。

日本は世界と比べてもものづくりの技術に優れていると言われていますが、日本が世界市場で存在感を出していくためには、「マスダールシティー」に代表される巨大プロジェクトのように、モノや技術を組み合わせて事業を育てる構想力とそれを実行する力が求められている点が指摘されています。

スマートグリッドの覇権

スマートグリッドについても少し触れられています。米国でスマートグリッド市場のキープレイヤーになろうとしているのが、米シリコンバレーのベンチャー企業SSN(シルバー・スプリング・ネットワークス)です。SSNはスマートメーターの基盤技術を持つ企業です。SSNのジョン・オファレス副社長のコメントは印象的です。

スマートグリッドは、いわばモノ版のインターネット。(送電システムを考案した)トーマス・エジソンでも理解できない、全く新しい世界がやってくる。

と述べています。シリコンバレーでは、リスクをとって参入する様々な企業と資金を投入する投資家により電力網のパラダイムシフトが起きているとしています。スマートグリッドの覇権を握るのは、インターネットに続き、米国なのでしょうか。それとも、日本を含めた他の地域が巻き返しをはかっていくのでしょうか。。

日本が飛躍するためには

最後に日本の飛躍への課題に対する提言として、

  1. 自己満足と思い込みからの脱却
  2. ビルと住宅を磨き上げる
  3. 電力会社の事業モデルを変える

の3つをあげています。

(1)では、太陽電池生産など国際競争力のある技術を持ちながら、それを阻む集中制御型の電力供給に依存している点を問題視しています。(2)は省略して(3)の電力会社の事業モデルでは、スマートグリッドの実現を妨げている要因は電力会社であり、公平に競争できる環境をつくらなければ、日本の競争力は低下すると指摘しています。日本の電力料金は世界と比べるとかなり割高です。電力料金の高さによって、特に外資系企業が日本にデータセンターを建設に踏み切れない大きな要因の一つであることが考えられます。

そして、最後に、日本には技術力や動員力があるが、政策とリーダーシップに欠けていると指摘しています。日本が、今後、環境先進国になるのか、それとも環境後進国になるのか、企業の技術力と同時に、今後の政策展開と世界に対してのリーダーシップが期待されるところです。

MASAYUKI HAYASHI

« 2010年3月3日

2010年3月4日の投稿

2010年3月5日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

詳しいプロフィール

Special

- PR -
最近のトラックバック
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
business20
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ