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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

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総務省は、2月10日、「スマート・クラウド研究会中間取りまとめ(案)」を公表しました。本研究会の報告は、総務省でのクラウド関連の検討会や研究会などの取組みの方針をとりまとめ、6月に最終報告書を提示し、「グローバル時代のICT政策に関するタスクフォース」に一定の方向性を示すこととなっています。

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(出所:スマート・クラウド研究会 スマート・クラウド研究会(第4回)配付資料 2009.12.16)

「スマート・クラウド戦略」の中間報告書では、大まかに、公共分野や中小企業におけるクラウドの利活用、次世代クラウド技術、クラウド技術の標準化、法制度に分けられるかと思います。これから何回かに分けて「スマート・クラウド研究会中間取りまとめ(案)」の内容を少し整理をしてみたいと思います。

第一回目は、第3章の「クラウドサービスを通じたICT利活用の徹底」です。報告書の第2章では、「先ずは多用なクラウドサービスの利活用を促進する」と、クラウドサービスに対する利用者のリテラシーの向上を図ることを政策目的の最優先順位におくことが適当であるとしています。そしてICT利活用の視点で以下の5点があげられています。

1.電子行政クラウドの実現   
2.医療、教育、農林水産業等におけるICT利活用の徹底   
3.スマート・クラウド基盤構築による社会インフラの高度化   
4.中小企業・ベンチャー企業等のICT利活用の促進   
5.クラウドと消費者の権利保障

1.電子行政クラウドでは、行政の見える化やオープンガバメントの推進、そして行政刷新の視点で、政府の電子行政クラウド「霞が関クラウド」、地方自治体の電子行政クラウド「自治体クラウド」を推進することが必要であるとしています。

「霞が関クラウド」の構築にあたっては、各府省のBPRや政府CIOの設置、そして、構築を進めるための体制整備が必要であるとしています。また、税・社会保障の共通番号の導入や企業コードの連携・共通化など、ワンストップ行政に向けた取組みを加速化すべきであるという点も書かれています。

「霞が関クラウド」でポイントとなるののは政府共通プラットフォームの構築です。政府共通プラットフォームについては、「政府情報システムの整備の在り方に関する研究会」で詳細な議論が進められており、最終報告書にて政府共通プラットフォームの方向性を決め、BPRや要件定義などを進めていくこととなります。一方、汎用ソフトなどについては、民間事業者が提供するクラウドサービスの調達も積極的に推進していく必要があるとしており、これからの取組みは、米国における連邦政府(フェデラル)クラウドのApp.Gov等の海外のオープンガバメントクラウドの取組みも参考にしているのではないかと考えられます。

米国における電子政府クラウドの取組みについて(2)のブログで紹介させていただきましたが、各行政機関の予算調整を行う行政管理予算局のOMB(Office of Management and Budget)と連邦政府のサービス調達の窓口となる連邦調達庁のGSA(General Service Administration)の二つが電子政府の所轄機関が連携をしながら対応を進めています。日本においても、これらの事例を参考にしつつクラウドサービス調達のための指針について検討をするべきであるとしており、実現するためには政府CIOの設置やBPRの推進など、政府横断的に情報システムの状況を把握し、マネジメントするための体制整備や組織設計が重要となってくると考えられます。

次に「自治体クラウド」の推進です。総務省は8月20日に「自治体クラウド開発実証事業の委託に関する開発実証団体の決定」を公表し、北海道、京都、佐賀などが採択されています。全国で数百の自治体が個別にシステムを運用しているよりも、共通化し電子行政を進めていくことが、自治体のコスト圧縮や効率性から見ても有効となってきます。自治体クラウドでポイントとなるのは「自治体クラウドの連携基盤」となります。各地で開発実証が始まっており、今後の仕様化やどのように他の自治体へ展開していくのか、取組みが注目されるところです。

コンシューマやビジネス分野においては既にクラウドの活用が始まっていますが、公共分野においてのクラウド活用は必ずしも進んでいるといえません。「霞が関クラウド」や「自治体クラウド」のように、政府や自治体が自らがクラウドを活用し、コスト削減や業務効率化を進めることになれば、その恩恵を国民が受けることができるでしょう。

海外では先ほど紹介した米国における連邦政府クラウド、そして英国では「G-Cloud」、そしてアジアでは韓国やシンガポールにおいても積極的にガバメントクラウドやガバメント2.0などのオープンガバメントクラウドの政策を展開しています。そういった状況も踏まえ、「スマート・クラウド戦略」の中では、「霞が関クラウド」や「自治体クラウド」そしてそれに伴う体制整備や調達のあり方が重要なポイントを占めてくるのではないかと考えられます。

MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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