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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2009年11月19日

2009年11月20日の投稿

2009年11月21日 »

第一回で外資のシンガポール集約の動き、第二回で海外政府の動き、そして第三回では総務省、第四回は経産省の動きを整理してきました。

今回は、日本におけるデータセンター誘致の取組みについて整理をしてみたいと思います。

データセンターの誘致をする地方公共団体


(北海道)

データセンターの誘致を積極的に展開しているのは、北海道と青森県です。北海道庁は2009年4月21日、「北海道のデータセンター立地環境について」 を公表しました。報告書の公表にあたって、産学官で構成する「北海道データセンター立地アセスメント委員会」を設置し、グリーンデータセンターの立地実現 に向けて、道内工業団地等の立地環境について調査・検証を行っています。詳細は報告書を見ていただければと思いますが、「石狩湾新港地域」が一番高い評価を受けています。

この委員会は、北海道GEDC(グリーンデータセンターエナジー)研究会のメンバーも参画しており、北海道GEDCでは、北海道にグリーンクラウドデータセンターを誘致するための各種検討活動を行っています。

石狩市においては、「グリーンデータセンター」の誘致に関する情報を石狩市のホームページで紹介しています。石狩市が立地アセスメント委員会で評価されているのは、主に以下のとおりとなっています。

    1.電力供給の安定性
    2.複数の電気通信事業者による通信ルートの確保
    3.データセンターが立地できる広大で安価な用地
    4.災害リスクの低減(自然災害は100年間以上未発生)
    5.積雪寒冷地であり雪の確保が容易
    6.首都圏・札幌市内からのアクセスが容易
    7.札幌圏のICT関連企業の集積の活用
    8.風力・太陽光発電等自然エネルギーの活用

石狩市は、2009年9月に「石狩市企業立地促進条例の改正および(仮)石狩市データセンター立地促進条例の制定について」を公表しており、主な制定内容は以下のとおり掲げています。

対象業種
    データセンター(道央中核地域基本計画の集積業種:4,情報関連)
対象要件
  # 土地・家屋・構築物の取得価額の合計が2億円以上
  # 雇用5人以上
課税免除
    5年間(固定資産税・都市計画税、土地を含む免除で償却資産の一部を除く)
助成制度
  # 限度額5,000万円(設備投資の限度額4,800万円、人材育成の限度額200万円)
  # 助成額及び交付時期は規則で定めるものとし、予算の範囲内において交付できるものとする。
制度期限
    平成24年度末まで


その他の石狩湾新港地域の優遇制度(対象業種:データセンター事業者)は以下のとおりです。

北海道庁
「投資額の8%(限度額3億円)」 ・・助成要件:投資額10億円以上かつ雇用者20人以上
「投資額の4%(限度額1億円) 雇用増1人あたり50万円」 ・・助成要件:土地を除く固定資産評価額5,000万円以上かつ雇用者5人以上

小樽市
固定資産税および都市計画税を2年間免除(土地を含む) ・・助成要件:土地を除く固定資産評価額5,000万円以上

※出所:「グリーンエナジーデータセンタ 石狩湾新港地域」 石狩湾新港地域開発連絡協議会

これらの内容を読むと、積極的なデータセンター誘致の税制優遇が、積極的に実施されています。

また、石狩グリーンデータセンターシンポジウム(2009.10.1)、北海道データセンター立地セミナー(2009.10.20)等、積極的にセミナーやシンポジウムも開催しています。私も石狩グリーンデータセンターシンポジウムに参加してきました。参加者は250名を超えて、関心の高さを肌で感じました。

(青森県)

青森県もデータセンター誘致に積極的です。青森県は2008年7月に「データセンターの誘致について」を公表しています。提言内容の一部を抜粋してみましょう。

青森県の自然環境は魅力的であり、青森市は東北新幹線の開業を控え、空港からのアクセスも良くインフラも整備された誘致に最適な環境だと考える。

昨今、各自治体の大きなテーマである環境に配慮した製品、サービスを実現しつつ、経済面では、安定した電力需要、新たな企業創出、そこに新たな雇用の創出が行なわれアジア諸国からのセンター移設含め関係者の往来も活発化すると考える。


青森県は2008年7月に「青森県EV・PHVタウン推進アクションプラン(PDF)」を公表しており、環境に優しい街づくりを目指しています。例としては、青森県の六ヶ所村に「六ヶ所村スマートグリッド実証モデル実施計画」を公表しており、風力発電等の自然エネルギーの活用、スマートハウス、EV(電気自動車)等、街全体での取組みを実施する予定です。

これらのことから、青森県はグリーンデータセンターの立地に適した箇所の一つと言えるのかもしれません。

日本を見渡してみると、その他にもデータセンター立地の最適地はあるでしょう。例えば、工場の跡地は、広大な土地と電力確保がしやすいため、有力な候補地 として考えられるでしょう。また、今後の太陽光発電を活用したグリーンデータセンターが建設されるということになれば、日照時間の長い九州なども候補となるかもしれません。また、原子力発電所やダム(水力発電)の近くに建設するという考え方もあるでしょう。


日本版コンテナ型データセンター

海外では、コンテナ型データセンターは一般的ですが、日本では国土交通省の法律の問題で屋外にコンテナ型のデータセンターを設置することが難しいとされています。そのため、大成建設では、以下のように建物内に収容する日本版コンテナ型データセンターの展開も始まっています。


最後に

北海道や青森県に代表されるように広大な土地を持ち、外気や雪氷の冷気を使ったデータセンターの検討、そして、税制優遇施策など、様々な検討を繰り返しながら、データセンターの誘致活動を実施しています。また、日本版コンテナ型データセンターの展開も始まっています。

これらの取組みが果たして、グーグルやマイクロソフト等の巨大なデータセンターを世界各地で建設する事業者にとって魅力的にうつっているのか、電力や通信インフラ、そして人件費や土地代などの諸々の条件がハードルとなっているのか。今後外資系が本格的に日本にデータセンターを立地できるのか、今後の動きが注目されるところです。

以上で5回にわたっての日本のデータセンターの国際競争力は終わりです。


※関連記事

日本のデータセンターの国際競争力(1) ~外資系のアジア進出 (2009.11.16)

日本のデータセンターの国際競争力(2) ~海外(主にシンガポール)政府のクラウド政策 (2009.11.17)

日本のデータセンターの国際競争力(3)~日本の政策(総務省編) (2009.11.18)

日本のデータセンターの国際競争力(4)~日本の政策(経産省編) (2009.11.19)

日本のデータセンターの国際競争力(5)~データセンターの誘致活動について (2009.11.20)

MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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