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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2009年6月30日

2009年7月1日の投稿

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IT戦略本部は、6月30日、「第9回 IT戦略の今後の在り方に関する専門調査会」を開催し、「i-Japan戦略2015 ~国民主役のデジタル安心・活力社会の実現を目指して~(案)(PDF)」の最終案を公表しました。これまでデジタル時代の新戦略という文言で議論がなされていましたが、今回「i-Japan戦略2015」という正式名が公表されています。   

気になる「i-Japan」の「i」についてですが、「Towards Digital inclusion & innovation」を指し、国民主役の「デジタル安心・活力社会」の実現を目指すとしてます。   

本戦略の視点でとして人間中心(Human Centric)のデジタル技術が国民に受け入れられるデジタル社会を目指すこと、そして世界共通の利用技術を新興国も含めて幅広く展開していくことの重要性が提言されています。また、空気や水のように使いやすいデジタル技術や制度、慣行、組織等の徹底的な見直しを実施し、国民本位の国際競争力のある社会を目指していくとしています。   

本戦略のスコープとしては、三大重点分野である①電子政府・電子自治体分野 ②医療・健康分野 ③教育人財分野、そして産業・地域の活性化及び新産業の育成、デジタル基盤の整備が入っています。   

電子政府・電子自治体分野
中でも注目されるのは、国民電子私書箱構想で、本戦略の中において2013年までの整備を目指すと明記されています。電子私書箱とは、「希望する国民・企業に提供される、電子空間上で安心して年金記録等を入手し、管理できる口座であり、社会保障分野のみならず幅広い分野でワンストップの行政サービスをするものである」と定義しています。電子私書箱が施策どおりに実現するとすれば、国民の生活の利便性は飛躍的に向上することが期待されます。   

電子政府・電子自治体の分野で私自身が注目しているのは、電子政府・電子自治体クラウドの構築等による行政情報システムの共同利用や統合・集約を進めるという点です。政府が積極的にクラウドを推進することにより、コスト削減と効率ががなされるということが期待されます。   

医療・健康分野
医療健康分野で注目されるのは、日本版EHR(Electric Health Record)です。本戦略では、日本版EHRとは、①個人が医療機関等により電子的に健康情報を入手し、本人及び医療従事者等が活用すること ②匿名化された健康情報を疫学的に活用すること と位置づけています。日本においては少子高齢化の問題が深刻化しており、医療サービスのIT面でも整備も期待されています。レセプト(診療報酬明細書)オンラインも、まだまだ遅れをとっているため、整備が期待されます。   

教育・人財分野
これまで「スクール・ニューディール」等のブログでも紹介させていただきましたが、今回教育が三大重点分野に位置づけられており、子どもたちの学習意欲や学力向上を支援するICTの活用の充実が期待されます。特に初等中においては、「教員のデジタル活用指導力の向上」、「教員のデジタル活用をサポートする体制の整備」、「電子黒板や教育コンテンツ等を利用した双方向の授業の実現」、「情報教育内容の充実」等が明記されています。   

産業・地域の活性化及び新産業の育成
2015年までにデジタル技術による新市場の創出などが提言され、特に中小企業等の事業基盤整備(ASP・SaaS普及促進)等の方策が記載されています。まだまだ議論が必要とされているのは、「デジタルグローバルビジョン(仮称)」についてです。アジア圏内におけるブロードバンド基盤の整備、デジタルコンテンツの流通の加速化、セキュリティの確保、グリーン化の促進、人材育成等アジアワイドでシームレスな知識経済圏の構築に戦略的に取り組むとしています。   

そして、戦略的に一層の検討を行うべき事項として『規制・制度・慣行等の「重点点検」』をあげ、IT戦略本部の下に「デジタル利活用のための重点点検専門調査会(仮称)」を設置するとしています。「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等」(PDF)のリストも公開されており、国民電子私書箱や日本版EHR等、国民情報を扱い機会が増えることになり、特に「3)匿名化された個人情報の活用」や「4)全国規模での健康情報の分析・活用」の制度面の整備が必要となってくるのではないでしょうか。   

本戦略のパブリックコメントも終わり、今回の会議がi-Japan戦略策定の最終会となり、そして7月上旬にIT戦略本部の中で正式に決定がされる予定です。「三か年緊急プラン」と一体のものとして包含しているようですが、2015年までの重要な戦略に位置づけられます。最終報告書が出たときに、また改めて読み込んでみたいと考えています。               

MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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